関東の市場を回っていて不思議でならないのがエゾバイ科エゾバイ属の巻き貝の利用法だ。
エゾバイ属にはエゾバイ、ツバイ、クシロエゾバイなどの大きく育たない種もあるが、エチュウバイ、オオエッチュウバイ、アニワバイ、カガバイなどの大きくなる種もあるのだ。小振りなものを分類の世界ではエゾバイグループ、大きくなるものをアニワバイグループと分けている。ボクなど食べる側からするとグループよりも上の属に格上げした方がいいのではないかと思うくらいに両グループは形態が違う。
この大型のアニワバイグループ、せっかく大きく育つのに関東での評価が低すぎる。驚くべきはときに大きくなるほど評価が下がることだ。すなわち関東の市場人、料理人、一般人はエゾバイ属は総て「煮つぶ」としてしか利用せず、刺身には出来ないものと思いこんでいるのではないか? だから市場などで立派なエッチュウバイが売れ残ってしまって「あんこ椿は恋の花」なんて仲買の店員が歌ってしまっている。その意味は「三日遅れの(三日間店ざらし)」ということ。
このエッチュウバイ(アニワバイグループ)の刺身がいかにうまいものかは、食べてみればわかるはず。これを珍重する新潟県や日本海側の人たちには、関東人の硬直した嗜好が愚かしく思えるのではないだろうか?
そんな関東人の代表選手であったのが『市場寿司 たか』の渡辺隆之さん、初めてエッチュウバイを店に持ち込んだときには「これ生で食べられるの」なんて驚いていた。それがどうだろう、今や大型のエッチュウバイやアニワバイを見るとすぐに仕入れるほどにファンと化している。そして今回の『和江の浜づくり エチュウバイむき身』、これに一番惹かれたのもたかさんその人である。
その『市場寿司 たか』に二袋持ち込み、まず刺身として食べて、その甘味、美味さに驚く。当然、たかさん、寿司ネタとしても最上級の賛辞をくれた。持っていったボクも、ちょっとうれしい気分になるほどに解凍後も「剥き立て」に近い。
このエッチュウバイが関東で刺身にならない理由はその身の柔らかさにある。サザエ、エゾボラ(真つぶ)のコリコリっとした食感を巻き貝の刺身に求めるが故に、貝自体の旨味を楽しむことが出来ないでいる。まったくこれほど優れた刺身素材なのにもったいない。
巻き貝の刺身を作るのは生臭みをとるために滑りを揉み出したり、よく水洗いするなどいろいろ面倒である。それが簡便な冷凍パックで楽しめるのだから便利極まりない。エッチュウバイの刺身を食べてみたいなら、最初は『和江の浜づくり エチュウバイむき身』を買ってみたらどうだろう。きっとエッチュウバイの刺身に夢中になるはずだ。ボクはその確率100パーセントだと確信する。
●注/島根県産のエチュウバイとあるが、カガバイである可能性もある。この2種は非常に紛らわしい。
島根県大田市和江漁協協同組合 海の特産加工センター
http://www2.ocn.ne.jp/~waefu/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、エチュウバイ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/aniwabai/ettyubai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
2007年10月7日の改訂記 後の記事 »
これは名品だ! 豪海他人丼“サンマ、目光、野沢菜”
ご無沙汰してます。
気に入って頂き幸いです。
白バイの刺身は美味しいんですが、剥いて塩もみするのが面倒なのが難点です。
その点、この商品は非常に使い勝手がよいのでおすすめです。冷凍しても味は落ちませんし。
ちなみに隠岐でも同様の商品が作られています。
なお、カガバイでは?とのご指摘ですが、以前見た殻付きの状態を思い出す限り、おそらくエッチュウバイで間違いないと思います。
ただ、この2種は同定が難しいのではっきりとしたことは言えません。言われてみると茶色っぽいのもいたような気もしますし・・・
神在月さん、お久しぶりです。その内、島根県の食用海藻ユナのことでお教え願いたくご連絡させていただくと思います。
さて、エッチュウバイとカガバイの見分け方は難しいですね。でも確かに山陰、北陸の「白ばい」はエッチュウバイかも知れません。そしてカガバイの存在が消えていきます。カガバイは『原色日本貝類図鑑』にあり、学研の『貝』にはない。また我が家にあるその他の図鑑でも掲載されていたりなかったり。特に日本海産貝類図鑑では日本海でとれると漠然とした表現がなされています。近々専門家と話し合ってみます。
私はカガバイって地方名だと思っていました。
ネットで調べるとエッチュウバイと同種であるとか亜種であるという記載も見られます。
また、エッチュウバイも小さいうちは殻が茶色く、大きくなるにつれて表面に傷が付くためか白っぽくなるような気もします。
富山の方ではカガバイが獲れるようですし、生息域で一概に分けられないようで難しいですね。
ちなみにユナはこちらでソゾと呼ばれているものだと思います。湯通しして酢の物にしたりするようですが、実家(松江)では食べた記憶がありません。一度隠岐で食べました。連絡頂けたら分かる範囲でお答えします。
神在月さん、「そぞ」のことではその内ご連絡さていただきます。板わかめのそうですが、島根は県独自の食べ物がたくさんありそうで楽しみです。