2007年12月10日アーカイブ

 広島県倉橋島の日美丸さんからキキョウニシをはじめ、いろんな魚貝類が送られてきた。そこに飛びきりの「はまち」と小振りのクロアナゴがはいっていた。
 瀬戸内海で「はまち」というのは決して養殖ものという意味ではなく、出世魚ブリの40センチから60センチほどのをさす言葉だ。
 この「はまち」、日美丸さんのメールでは「いなだ」とあった。「いなだ」は主に神奈川県相模湾で30〜40センチ上くらいまでの若魚をさす言葉。広島県倉橋島では関東での「わらさ(ブリの50〜60センチほどのもの)」クラスを軽い気持ちで「はまち」と呼ぶらしい。

 この持ち重りのする丸々と太った「はまち」を水洗いして、三枚に卸し、当然のごとく刺身にする。

 そのとき、遠く20年前の初めての「わらさ釣り」のことを思い出す。場所は千葉県館山市相浜。ハリス5号の一本バリ片天秤のコマセ釣り。船中初っぱなから「わらさ」がかかる。これはどう見ても50センチ上の見事なものばかりで、ドキドキしながら「次はボクかな?」なんて、待っても待っても「わらさは来ない」。やっと来たのがホウボウ、そして小マダイ、イサキにイスズミ。船中では「わらさ」、カツオまできて、次々にグイーンと釣り竿が曲がっている。豪快だ。うらやましい。
 どうやら上がりの時間となり、唯一「わらさ」に見放されたのがボクだけらしいということで船頭が気にしてときどきタナを見に来る。そしてやっとやっと来たのが「いなだ」なのである。そのサイズからしてとても「わらさ」と呼べず、よく言っても「いなだの大きいヤツ」なのに、船中みんなで「よかったなー。わらさが来て」なんてなぐさめてくれたのだ。
 この悲しい釣行を思い出したのは日美丸さんが釣り船だからだ。そのホームページを見ると「わらさ級」を2本も3本も釣り上げた人がいる。「ああ、こんなに釣りのうまい人もいるんだな」と悲しい、そして惨めな気持ちになる。そしてボクも立派な「わらさ」、倉橋島での「はまち」が釣りたいなー、と切望。その内、日美丸さんにお願いして「はまち釣り」したいなー、とも考えるのだ。

 閑話休題。
 三枚に卸していると包丁にべっとりと脂がついてくる。確かに日本海のブリほどではないが、まことに「うまそうだ」。これを平作りにして冷蔵庫に一時保存。
 アラを出刃でとんとんとバラしていく。これをボウルにとり、大量の塩をまぶし、待つこと暫し。アラの切り身が汗をかいてきたら、湯通し。冷水に取り、汚れ、ウロコなどをきれいに洗い流して、下ゆでした大根とともに鍋に放り込む。たっぷりの水に酒と砂糖少々。火をつけてコトコト沸いてきたら丁寧にアク取り、しょうゆを加える。
 このままひと晩煮る。

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 夕食の「はまちの刺身」がうまい。それはまさにうまい刺身であって、「脂がうまい」のではない。魚本来の味がいいのだ。

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 ちょっといい気分になって、翌朝のこと。「はまち」のアラは骨まで軟らかくなり、大根は色づいてメノウのように見える。大鉢に盛り、食卓に出すや大根の争奪戦が始まる。これは不思議なことではないだろうか? 料理としては「ブリ大根」なのだから主役は魚の方であって、大根ではない。でも大根があっという間になくなって、「はまち」を食べているのは大人だけとなる。その内、妻までが大根のとりこになってアラはボクが食べる係になってしまったようだ。実際アラだってうまいのだけど、「はまち」の旨味を吸い込んだ大根はもっともっとうまいらしい。

 日美丸さん、ありがとうございました。

広島県倉橋島 日美丸
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ブリへ
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 大急ぎで場外に抜けて、長崎県漁連直売所そばの休息所に。着いたのが7時24分で、いきなり鮟鱇さんから「遅い」と言われる。集まった人を見回すと、やはり今回も“多過ぎ”である。「責任者出てこい!」、「それはボクだった」、トホホホ……。
 皆さんに挨拶していたら、中に変な人が混ざっていて、よく見ると、つきじろうさんだった。カップ入りの旨そうな、温かそうなものを持っていて、
「朝ご飯のデザートです」
 そんなことを言いながらデザートのカレー丼を食べている。この方、定食(単に定食だけではなく、いろいろオプションつきらしい)を食べて、デザートにラーメンかカレーなんかを食べて、しかも甘いものも好きだと言うことで、うらやましいような、恐いような。そう言えば一日5食食べているという噂もある。

 正門から入ろうと思ったら、鮟鱇さん「海幸橋からにしましょ」と軽く無視される。まあ責任者は鮟鱇さんなんだからいいんですけどね。

 海幸橋を渡り、左に折れて、場内の建物に辿り着く。築地場内は扇の地紙の形になっていて、海幸橋に近い方が要、遠い方が広がっている。このアール状の形態は昔鉄道が全国から魚貝類を運び込んできた名残である。場内のそこここで見上げると、鉄骨が湾曲して屋根を形成していて美しい。場内には横方向にいくつも通路が通っていて、要に近い方が短く狭い。そのためいつも築地場内案内をするときには2列を省いて3列めから外側に歩く。それでも歩く距離は長く、歩ききった後は疲労困憊する。

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 今回の参加者で常連さんは、まささん(子連れ。娘さんお父さんに似ていない。可愛い)、ヒモマキバイさん、鮟鱇さん、つきじろうさんだけ。ちょっと心配なのがharseeさんとjasminさんという強力な「買い上手」がいないこと。しかも初参加者には築地場内を見たいという方が多い。これではいかほど魚を購入していいのかわからない。

 場内歩きも淡々と終わるのかなと思っていたら、予想外というか、若いんだから当たり前かも知れないけど、賑やかさと、華やかさを添えてくれたのが古草さんとekoさん。冷凍マグロがゴロンゴロンと並んでいるのを見て、「うわー」と言い。マグロ用の長い包丁見て、これでチャンバラをして二、三人斬り殺してみたいと言い。ズワイや生きているマハゼに驚き。養殖マダイをその場で血みどろにして締めているのを見て感激している。しかもこのふたり、「お魚さん、死んでしまって可愛そう」なんて思ってはいないらしい。恐るべし!

 長太郎さん、ノンちゃん、他、ボクは人の名前が憶えられないので、ひとりひとりの当日の行動は見ていないのだけど、やはり場内が別世界であることには感動してくれたようだ。

 さて、一通り歩いて見て、やはり、今回は「買い」の土曜会ではなく「見学」が主となったようだ。ひとりがんばっていたのがヒモマキバイさんで旬のホウボウ、せいこがに(ズワイガニのメス)、つぶ(エゾバイ科の巻き貝)、ながらみ(ダンベイキサゴ)、活けシャコ、ボクとヒモマキバイさんとで八角(トクビレ)などで、あまり買い物らしい買い物をしていない。

 場内歩きで恐いのが、魚の値段の幅である。それこそ同じ種類の魚で1キロ1本1000円前後から、数万円までの開きがあって、プロにとっては納得いく値段でも一般人には理解できないもの。だから場内は難しい。そんな危惧がまったく不必要なほどに「買い気」のない会であった。やはり、今回しみじみ感じたのがharseeさん、jasminさんの偉大さである。次回から主催者になってもらおう。

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 10時前には大都魚類第二会議室に入り、反省会と買い物を分ける会を催す。ここでもヒモマキバイさんの慎重さには驚嘆するが、ボクのようないい加減をもっとうとする生物には面倒くさくて見ていられない。でもこの慎重さゆえに買い物分けッ子会は無事終了。しかもなんと大都魚類の尻高鰤さんからお土産までいただきました。ありがとう尻高鰤さん。

 さて、それでは二次会に参りますかね、つきじろうさん。


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