広島県倉橋島の日美丸さんからキキョウニシをはじめ、いろんな魚貝類が送られてきた。そこに飛びきりの「はまち」と小振りのクロアナゴがはいっていた。
瀬戸内海で「はまち」というのは決して養殖ものという意味ではなく、出世魚ブリの40センチから60センチほどのをさす言葉だ。
この「はまち」、日美丸さんのメールでは「いなだ」とあった。「いなだ」は主に神奈川県相模湾で30〜40センチ上くらいまでの若魚をさす言葉。広島県倉橋島では関東での「わらさ(ブリの50〜60センチほどのもの)」クラスを軽い気持ちで「はまち」と呼ぶらしい。
この持ち重りのする丸々と太った「はまち」を水洗いして、三枚に卸し、当然のごとく刺身にする。
そのとき、遠く20年前の初めての「わらさ釣り」のことを思い出す。場所は千葉県館山市相浜。ハリス5号の一本バリ片天秤のコマセ釣り。船中初っぱなから「わらさ」がかかる。これはどう見ても50センチ上の見事なものばかりで、ドキドキしながら「次はボクかな?」なんて、待っても待っても「わらさは来ない」。やっと来たのがホウボウ、そして小マダイ、イサキにイスズミ。船中では「わらさ」、カツオまできて、次々にグイーンと釣り竿が曲がっている。豪快だ。うらやましい。
どうやら上がりの時間となり、唯一「わらさ」に見放されたのがボクだけらしいということで船頭が気にしてときどきタナを見に来る。そしてやっとやっと来たのが「いなだ」なのである。そのサイズからしてとても「わらさ」と呼べず、よく言っても「いなだの大きいヤツ」なのに、船中みんなで「よかったなー。わらさが来て」なんてなぐさめてくれたのだ。
この悲しい釣行を思い出したのは日美丸さんが釣り船だからだ。そのホームページを見ると「わらさ級」を2本も3本も釣り上げた人がいる。「ああ、こんなに釣りのうまい人もいるんだな」と悲しい、そして惨めな気持ちになる。そしてボクも立派な「わらさ」、倉橋島での「はまち」が釣りたいなー、と切望。その内、日美丸さんにお願いして「はまち釣り」したいなー、とも考えるのだ。
閑話休題。
三枚に卸していると包丁にべっとりと脂がついてくる。確かに日本海のブリほどではないが、まことに「うまそうだ」。これを平作りにして冷蔵庫に一時保存。
アラを出刃でとんとんとバラしていく。これをボウルにとり、大量の塩をまぶし、待つこと暫し。アラの切り身が汗をかいてきたら、湯通し。冷水に取り、汚れ、ウロコなどをきれいに洗い流して、下ゆでした大根とともに鍋に放り込む。たっぷりの水に酒と砂糖少々。火をつけてコトコト沸いてきたら丁寧にアク取り、しょうゆを加える。
このままひと晩煮る。
夕食の「はまちの刺身」がうまい。それはまさにうまい刺身であって、「脂がうまい」のではない。魚本来の味がいいのだ。
ちょっといい気分になって、翌朝のこと。「はまち」のアラは骨まで軟らかくなり、大根は色づいてメノウのように見える。大鉢に盛り、食卓に出すや大根の争奪戦が始まる。これは不思議なことではないだろうか? 料理としては「ブリ大根」なのだから主役は魚の方であって、大根ではない。でも大根があっという間になくなって、「はまち」を食べているのは大人だけとなる。その内、妻までが大根のとりこになってアラはボクが食べる係になってしまったようだ。実際アラだってうまいのだけど、「はまち」の旨味を吸い込んだ大根はもっともっとうまいらしい。
日美丸さん、ありがとうございました。
広島県倉橋島 日美丸
http://ww5.enjoy.ne.jp/~kogera0401/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ブリへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/buri/buri.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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2007年12月8日の築地土曜会02 後の記事 »
メカジキ切り落としのメンチカツ風
今年はほとんどこのサイズなので、身に脂がまわるように「ゴンアジ」を真似て、釣り上げてから数日間活かせて(断食させて)みました。
その効果がでたのか、それとももとからあったのか写真を見るとわりと脂がまわっているみたいですね?
自宅近くのチェーンの大型鮮魚店で、最近「ブリ」の半身(頭付き、1.5〜2kgくらい)を売っていて、何度か買ってますが、それより見事な魚ですね。素人目でも写真から状態の良さがわかる感じです。
川さん、まことに今回の日美丸さんの「わらさ」はすごい。
ということで改めて日美丸さんに感謝。
たぶん日美丸さんほど魚を丁寧に扱う方も少ないと思います。その内、土曜会で日美丸さんの魚を食べる会をしたいですね。