ムロアジの仲間の味の特徴は“干物にしてうまい”ということ。特に冬になってオアカムロに脂がのってきて、その干物も旬を迎えているわけで、市場で見つけてはせっせと干物作りに励む。
我が家ではアジ科の魚は総て背開きにする。今回の三重県産は背開きした切り口からして白濁して、頭をなし割にする包丁に脂がべっとりと着いている。
さてどうして背開きかというと、初めて作った干物を背開きにしただけの理由で、深い意味合いはない。よく干物の開き方の説明で腹側、背側の利点をアレコレ書いているが、どうも説明に説得力がない。きっと産地でも昔からのやり方だからという「あまり深く考えないで」やっているだけだと思えてならない。
これに振り塩をして、もう一度開いたものをとじてラップで密封してひと晩寝かす。家庭で作る干物は当然あまりたくさん作るわけではなく、ボクなど1匹でも2匹でもかまわずに干物にしてしまう。というわけで例えば干してから「えん蒸(干物を束ねて密閉してねかす)」できるわけでもなく、また立て塩にして塩水をもなんども使うわけでもない。すなわちアミノ酸発酵(熟成)させる余地がないのだ。振り塩にするのは立て塩は塩加減、つける時間が難しく、「いつもの塩焼き」のように味つけするほうがわかりやすい。
要するに塩加減は塩焼きと同じ、熟成は干す前に寝かせることで補うのが我が家風。
これを初冬の素晴らしく晴れ上がった日に、8時間ほど干し上げる。この日は適度に風があり、吊した干物がゆらゆらと揺れている。絶好の干物日和だ。
これを翌日、お昼ご飯のおかずにする。大きすぎるので半身にして、焼きながら、ワクワクするような香りが立ち。「早く焼けないかな」とそわそわする。
残りご飯を温めて、みそ汁はインスタント(八王子総合卸売センター『総一商事部』で買ったもの。最近のものはよくできている)だけど、なかなか主菜が出来上がらないのだ。
やっと焼き上がって干物をむしり始めると食卓に走りのぼってきた野生むき出しの動物がいる。これがまるで獲物を見つけたチータのような姿勢をしている。ということは、やっぱり干物に突進してきた。
あとは猫との戦いとなった。仕方なく尾の方も焼き、仲良く食べる。この猫にもわかる味の良さというのは本物かもしれない。まず香りがいいし、旨味が強く、身質も素晴らしい。
猫を追い払いながら食べても、あまりじっくり味わえるということにはならないようだ。うまいことはうまいが、満足そうに手をなんどもなめなめ、顔をぬぐう猫ほどにはオアカムロの味を楽しめなかった。
次回は猫の寝ている間に食べることにするのだ。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、オアカムロへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/muroaji/oakamuro.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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2007年12月8日の築地土曜会03 地獄の一丁目、二次会は『多け乃』
美味しそうですね〜
脂の乗ったオアカムロは本当に美味しいですよね。猫ちゃんも分かってらっしゃる。僕の知り合いの真鯛釣り師の飼ってる犬は釣った真鯛しか食べないのには笑いました。
僕も「刺身で美味しい物は焼いて美味しい、焼いて美味しい物は干してもっと美味しい」と独り言を言いながらよく干物を作ります。
もっとも、オアカムロなどは身が残らないので、干物はいつもアラだけになって「アラだけでこんなに美味しいんだから、刺身で全部食べずちゃんと1匹干物にすればよかった」と、毎回言っていますが…。
軽く酢で〆た物も大好きです。でかいの1匹釣ればいろんな味が楽しめる魚ですね。
かんなぎさん、マダイを干物にするんですか? うまそうですね。ボクもときに小振りのマダイ半身を干して、一部を釜飯にして、後は焼いて食べますけど、できるだけ小さいヤツしか使いません。