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これではどこにいるのかわからない。鳥取駅前にて
予め銘記したいのは、今回の旅の目的は「島根県の漁業を見て歩く」というもの。そこで必要なのは、「山陰」とひとくくりにされている地域をできるだけ広く探ることだ。
そのためにはやっと作った時間を、できるだけ有効に使いたい。いろいろ考えた結果である遠路深夜バスに乗って鳥取を目差す。これは経験しないとわからないことだろうが、バスで東京→鳥取というのは凄まじく大変なのだ。肥満気味のボクには、座席がすっぽり身動きできない幅しかなく、走行中はカーテンが引かれて暗い、車内環境は最悪である。9時間近くかかって鳥取駅前にたどり着いたときには体中が痛くて、しかも睡眠不足のせいか頭がクラクラする。
鳥取には、かれこれ20年ほど前に来たことがある。駅前は雑然としていて、北に商店街が続き、賑やかな市場がふたつあった。とそんなこと考えていても、現在時刻は6時50分。バスから降りる人以外に人影はなく、思ったほど寒くはないけれど、なんだか街が整然と硬質な感じに冷たく様変わりしている。このような地方都市の区画整理が、本当は街を寂れさせる一大原因であることが、なぜそこにいる人たち、お役人さんたちに理解できないのか、激しく著しく理解不能である。
ここで『浜勝商店』の十九百(つづお)さんにケータイをいれる。
「10分くらいで行きます」
ということで、大慌てで駅構内に入り、腹ごしらえできる店を探す。なにしろ昨夕の食事が、お握り一個とワンカップという寂しいもので、お腹がグウウーグウーなっている。
駅に走り込んで見つけたのが「砂丘そば」という店。ここで天ぷらうどんを食べる。残念ながら鳥取砂丘にちなんだ店名にしては味がよろしくないな、とがっかり。
食べ終わったとき、十九百(つづお)さんから「どこにいます」というケータイ。大慌てでバス停付近まで走る。止まっていたのは4DWワンボックス。初対面の挨拶もそこそこに、なぜか鳥取砂丘を目差す。
「せっかく鳥取まできたんなら、見て置いた方がええでしょ」
ボクにはときどき初対面なのに古くからの友人のごとく思える人がいて、十九百さんはまさにそんな人であった。ちょっと残念なのはボクよりも痩せている。ケータイで話していたときの想像では、かなりのメタボリックだと思ったのだけどなー。
市内から北に商店の並ぶ通りを抜けて行く。肝心の駅前市場を探すが、見あたらない。地下にあった「太平市場」の入り口には居酒屋チェーンの看板しかない。大丈夫か? あの懐かしい市場たちよ! この鳥取駅前の市場の現状は後ほど書く。
駅から砂丘までは、あっという間の時間だった。
砂丘というとサンドカラー(グレイ)だと思っていたらサンドベージュで黄色みを帯びている。
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鳥取砂丘は今回の旅で唯一の観光。たった数分だったけど。
十九百さん、砂丘の向こうを指さして、
「先に海が見えるでしょう。ここはほんまにきれいなとこなんです」
薄雲の上に青空が見える。風はなく、穏やかであるが、身が引き締まるほど冷たい。
遠く海の向こうに岬のような場所があり、漁港らしきものが見える。あれが賀露港ではないだろうか? 賀露も鳥取を代表する漁港だ。
鳥取の真東にある岩美町網代港までは砂丘から10分ほどもかからない距離にあった。
まずは『浜勝商店』の方に挨拶して、網代港の競り場に。
網代港は思ったよりも小さな港である。大阪中央市場、築地などでも「鳥取 網代港」のパッチをよく見かけるので、水産に興味があると誰でも知っている港だろう。それがこんなに静かで風光明媚であるとは思ってもみなかった。
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穏やかな網代港。ここで今回の旅の天候は間違いなく最高だ! と確信したのは大間違いだった
競り場に入って、真っ先に目に飛びこんで来たのが「松葉がに(ズワイガニのオス)」である。水槽に、また床に直においてあるもの、箱に入ったもの、そのどれもがゆっくり脚を動かしている。
そこに様々な札が置かれていて、「若松葉」は脱皮したてのもの。「指折れ」は脚のないもので、「1本」「2本」とこれも細かく分かれている。
この「松葉がに」の区分がまことに細かく、その上、大きさも10段階に選別されるのだという。
床を這っていたカニビルを手のひらにのせて遊んでいると、十九百(つづお)教授の「松葉がに」講義が始まる。
「指のとれたのに1本2本なんてあるでしょ。最後には『だるま』というのもある」
網代港の競り場はそんなに広くはない。しかし、これを総て見て歩くのはたっぷり時間が必要だろう。
十九百さんの「松葉がに講義」を含めて、お後は次回に。
鳥取市岩美町浜勝商店
http://www.hamakatu.co.jp/
鳥取県岩美郡岩美町
http://www.iwami.gr.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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