最近では時期になって初めてホタルイカを見かけるのが冬となっている。そして産地は兵庫県浜坂もしくは鳥取県岩美町網代港である。なかでも目立つのが『浜勝商店』のもので、これはデザイン性が高いだけでなく、品質も高いからではないかと思っている。ということでボクの場合ももっとも初期にホタルイカを買い求めるとしたら『浜坂商店』のものである可能性が高い。
長閑な朝で、さて、『浜勝商店』にもどると、ぜひとも見たいと思っていたのが、ホタルイカの塩ゆでである。山陰のホタルイカは富山のものとともに大量に関東の市場で見かける。その多くがゆでたホタルイカで市場では三連のケースに収まっている。
「ホタルイカの塩ゆでを拝見させてください」
『浜勝商店』の浜田社長にお願いする。
加工場に入ると、なかではハタハタの干物などを作っていた。
工場内はちりひとつなく、床もきれいに磨き上げられている。働いているオバチャンたちも楽しそうだ。
そのいちばん隅にホタルイカをゆでる四角いお風呂ほどの釜がある。工場の方がコックを持って、じっと待っているのは、ホタルイカをゆでるに最適な温度になるのを待っているようだ。
かたわらには大きな四角いバスケットに入ったホタルイカ。
十九百さんが、
「まだ少ないけんね。こうやって人がゆでるんですわ、最盛期になると機械に変わります」
ゆでるタイミングを待っている方がゆで汁をなめてみろと差し出す。
塩分濃度は思ったよりも低く、飲んで塩辛いというほどでもない。むしろゆで汁から出来上がりのゆでホタルイカの味が想像できる。
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ゆでたホタルイカはできるだけ早く冷やす
沸騰してきた釜にホタルイカを入れる。時計を見ながら、ホタルイカをゆで汁に沈めて、たぶん数分で、こんどは氷水にとる。
これをザルに上げて出来上がりなのだけど、ここからホタルイカモドキなどを選別してケースにのせる。
ホタルイカをゆでるときには塩だけではなくアミノ酸など調味料を使っているのではないか、勝手にそう思っていたが、使っているのは塩のみ。添加物無しの加工品であるのがわかる。
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茹でたてのホタルイカ。ぷっくり膨らんでいる。
ゆで上げたばかりのホタルイカモドキとホタルイカを食べてみる。ともに茹でたてで非常にうまいのだが、ホタルイカにあって、ホタルイカモドキにないものは唯一旨味の濃厚なワタである。けっしてホタルイカモドキがまずいわけではないが、十九百さんは「これがないとダメなんです」と言う。
ホタルイカをゆでる工程は単純極まりないもの。しかし塩加減、ゆで加減は非常に熟練をようするものだと思える。また2月のホタルイカは最盛期の2倍以上する高級品。でも漁獲量が少ない分、手仕事で仕上げられているという付加価値もある。
事務所では奥さん(浜田末子さん)が「ばばちゃん(タナカゲンゲ)」の卵料理を作ってくれて待っている。口の中に残っているホタルイカの旨味を感じながら工場を出る。
鳥取市岩美町浜勝商店
http://www.hamakatu.co.jp/
鳥取県岩美郡岩美町
http://www.iwami.gr.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
名前でバカにしてはいけません。名品中の名品、和江の「漁協蒲鉾」 後の記事 »
2008年2月27日の改訂記