島根県を東西に横断するというのは大変だ。その昔、出雲の国と石見の国と分かれていて言葉も習慣すらも違っていた。その両国をながながとクルマで走る。
その石見の国の江戸時代においての一大産物「銀」と「銅」を積み出していたのが大田市の港港なのだ。
出雲から岩見に向かう行程は大変であった。地元を知悉するヤマトシジミさんは押し気味の時間を稼ぐため、それこそ道なき道を山越えに次ぐ山越えで大田を目差す。
その車中での会話。
トーボさんが
「和江には漁協蒲鉾という名物があるんですよ」
「ええ、漁協蒲鉾は商品名なんですか? それへんでしょー。もっとよく考えてつけて欲しいな」
「でもうまいんですよ」
こんなときのとトーボさんの表情がどこか不可思議で印象的である。「わかってないなー」という思いが顔に出るのかもしれない。
さて、この会話が後々になってヤマトシジミさん、トーボさんの失笑を買うことになる。
幾山越えて着いた和江の港は雪と大波寄せくる荒れ模様だった。これがボクのせいかのかトーボさん、もしくはヤマトシジミさんのせいなのかはおくとして。
水揚げもなく、いろんな人とお話ばかりで寂しいな、と思っていたときに思い出したのが「漁協蒲鉾」のこと。
お願いすると漁協の竹下佳伸さんが工場に案内してくれた。
この方が漁協蒲鉾を積極的に開発され、販売促進に回られた方だった。ステンレスのテーブルに蒲鉾をとりだしてからの竹下さんの手つきが鮮やかだった。
和江名物の「漁協蒲鉾」は練り製品の区分では「す巻きかまぼこ」と呼ばれるもの。愛媛県八幡浜や山口県萩などでも盛んに作られている。その昔は麦わらを蒲鉾型に成型したすり身をぐるっと巻き上げて蒸す。これが現代ではプラスティックに取って代わっている。蒲鉾のプラステックのストローは輪ゴムで止めているのだけど、竹下さんはそれをを外して、両手でゴムをひっぱり、そのまま蒲鉾に押しつけてきれいに切ってくれる。
あまりにも手つきが鮮やかなので見ほれてしまう。後々聞いたことからすると、こうやって全国に販売促進に回っていたのだと思われる。
実はこの蒲鉾が思いもかけぬ名品であった。島根県大田というと、東京からするとかなり鄙の地である。きっと泥臭いものだろうと考えていたのが、愚かであった。
目の前にあるのは非常に洗練された、質の高い練り製品なのである。なによりも適度に足(弾力)があるのがいい。しかも旨味が感じられて、甘味が程良い。
なぜにこれほどうまいのかというと、基本的にスケトウダラのすり身を加えてはいるが、地元産の小魚。例えばクラカケトラギス、マエソ、季節によっては「れんこ(キダイ)」を使っている。今回のものはトラギスだが、「れんこ」の蒲鉾はどんな味がするのだろう。想像するだけで唾がわいてくる。
そしてそしてこの名品がなんと300円だというのに驚愕する。関東の市場、惣菜仲卸に並ぶ、どの蒲鉾よりも味がよく、小田原の特級品とも互角以上の味わい。「それが300円なのかーーー」。
しかもしかもここで終わったわけではない、なんと今回のは並製品であり、地魚だけを使った特上品787円というのもあるという。この特上品は地魚がまとまって上がったときにだけ作られると言うが、なんとしてでも手に入れてみたい。
蒲鉾とともに試食した「燻製蒲鉾」も素晴らしかった。
お土産に一本頂いた上に、地元のバシさんが「これもどうぞ」と言ってもう一本。ありがとう、バシさん。
帰宅して、さっそく我が家の蒲鉾評論家である姫に食べてもらう。姫はただ無言のまま、ほとんど2本を独り占めにしたのだ。
蛇足の蛇足だが、大田和江を浜田に向かう車中。トーボさんが
「漁業蒲鉾ってダサイんですよねー」
この言い方いやだなー。この人、本当は子供の頃はいじめっ子だったのではないか。
「ごめんなさい。漁協蒲鉾もあり、ですね」
漁港蒲鉾も「あり」、「あり」なんてものじゃないよ、これは。毎日でも食べたい「漁協蒲鉾」じゃないかね。
「早合点はうまいものを逃す」とは、ぼうずコンニャク五十路の悟りである。
島根県大田市和江漁協
http://www2.pref.shimane.jp/suisan/tokusan/3k-1.html
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
ぼうずコンニャクさんに「トーボ」と呼ばれている者です。大田市(オオダ)の和江(ワエ)の漁協蒲鉾のコメント有り難うございました。大田をオオダ、和江をワエとは初めての方は分からないだろうなと思っていましたが、案の定。ぼうずコンニャクさんがカズエと読んだので吹き出しました。何の根拠もありませんが、和江の女性は大変な働き者で、家庭の中でも存在感があるようです。さすが、カズエと読むにふさわしい地名なのかなとつい思ってしまいます。「漁協蒲鉾」褒めていただいて嬉しいです。季節毎に練り込む魚種や割合が変わりますが、年配の方には、昔食べた蒲鉾の味がすると良く聞きます。単価も利益を付けて販売していませんので、一度食べていただきたい一品です。
先程送ったコメントの最後に「利益を付けて販売していない」と記述してしまいましたが、「大きな利益」はつけていないという意味です。小心な私なりにしまったと思い付け加えさせていただきます。チェックのいい加減なのは親譲りです。
トーボさん、ボク、「かずえ」といいましたっけ? 初恋の人が「かずこ」なので間違えたのかな?
大失敗だな。
さて、この蒲鉾も原料の少ない時期は注文生産。といっても少ない量でも作ってくれるそうです。
これも「市場魚貝類図鑑のお取り寄せ会」でやりましょうか?
この蒲鉾ほしいですね。
にほんばし島根館で入手できるようになるとうれしいですね。
川さん、近い内に、できれば地魚100パーセントのものを込みでセットにして送ってもらいましょ。
7、8人集まれば送料も気にならないでしょう。
昨日、責任者の竹下さんに伺ったら「なんぼでも送ってあげるよ!」だそうです。場所はどこでも良いそうなので注文して上げて下さい。「しまね館」には当初置いていたのですが、消費期限が7日と短かいため、現在では出していないそうです。
竹下さんに、このブログも「見て下さいね!」と紹介し、何とか開いて確認してもらいました。
トーボさん、ありがとうございます。
近く、みなと話し合いまして、注文します。