島根県浜田の干物は逸品揃い

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 関東で暮らしていて「うまい干物が食いたいな」と考えるとき、静岡県や神奈川県、千葉県と干物業がさかんな地域に囲まれているせいで、なかなか西日本に目がいかない。「干物の島根県」というのはもっと浮かばないだろう。また残念ながら、昨今の干物業全般が包装紙や、パッケージに様々な工夫をしているとき、山陰の干物はどこか泥臭く感じる。

 このように関東の消費者としては島根県の干物は、どうにも「沼津・小田原」ほどにはピンとこない。
 でも島根県に着いてみると、そこにあるのは大量の干物だった。その最たる地が浜田なのであり、当然干物好きとしては喜び勇んで大量買いすることになる。さて、いざ買い込む場所は『浜田市公設水産物仲買売場』である。

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市場で、こんな光景が見られるのがいい

 この『浜田市公設水産物仲買売場』の魚貝類はまことに素晴らしいの一語に尽きる。ただしこの市場には致命的な問題点があって、それは、ここがあくまでプロ相手なので、わかりやすい名前がないということ。だいたい一般の人や観光客が『浜田市公設水産物仲買売場』なんてわけのわからん名前を覚えられるはずがない。このあたりを改善して(建物はそのままでいい。照明など増やす)くれると一般客や観光客も入りやすくなる。
●注/ここは一般客も買い物ができる。ただし、注意するべきは原則的にはプロ相手なので、やや遅めの8時とか9時に行く配慮をすべきだ。売っているものは総て、いいものばかりだ。

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浜田の干物はお取り寄せできる

 そこで見つけたのが、「金太郎」、「温泉ガレイ」、「大穴子」の干物。
「金太郎」と「温泉ガレイ」は『浜崎乾魚店』、「大穴子」は『松下鮮魚店』。方や干物の専門店であり、方や鮮魚を売るかたわら、店の前で簡便に作る呈のもの。まあ魚好きが、この両店の干物を見て黙って通り過ぎることができるだろうか? 否だろうね。

「金太郎」は島根県、山口県でのヒメジの呼び名、「温泉ガレイ」というのは島根県にたくさんある温泉地の朝食用に小振りのカレイを開きにしたものであるようだ。このふたつは「のどくろ(アカムツ)」、「甘鯛(アカアマダイ)」、「きつねがれい(ソウハチガレイ)」、「あじ(マアジ)」とともに島根県の干物の代表的なものだ。
「温泉ガレイ」の味わいは平凡だが、小型のカレイ類を開きにするというのは他に類を見ない。それだけでも賞賛に値する。

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温泉ガレイというのは通称だろう? ようするにソウハチガレイ、アカガレイの小さなものを丁寧に開いたもの。子供にも、お年寄りでも食べやすい。

 対するに「金太郎」が素晴らしかった。塩加減は適度なものだし、脂がのっている。その上、なんといってもヒメジの持つ甘味を伴う風味が絶品としかいいようがない。その上、その上、その上の上、今回、大発見があって、丸干しのヒメジのワタが旨味が強くコクがあるということ。このようにワタの旨さを生臭みなく感じられるというのは原料がよほど新鮮なのだろう。

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「金太郎」は標準和名のヒメジ。焼くと脂がジュウジュウしたたり落ちる。

「大穴子」は『松下鮮魚店』の店頭に干してあった。その大きさに圧倒されるとともに値段が1本1000円というのに、また安くてビックリする。この豪快な干物に海辺ならではのよさを感じる。ちなみに『松下鮮魚店』の鮮魚が干物以上に素晴らしいものであることもつけ加える。
 この肉厚の穴子の身を香ばしく焼き上げたら、これも食べ口は上品なのに、旨味があり、みりん干しであるからつけ加えられている甘味もほどよい。これなど多彩な漁が行われる浜田に来ないと食べられないものかも知れない。

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開いて、干物にして1本1キロ近くになる。このドデカイ干物がなんと1本1000円なのだ。

 ボクも五十路になって、思ったことは、「地方(東京も含めて)は行ってみなければわからないことばかりだ」ということ。これほど島根県の干物がうまいものであるとは、思ってもみなかった。それで改めて、過去のデータを紐解くと、島根の干物に関するものは少なくなく、どれも味わいは上のものばかり。こんは「水産県島根」のイメージが薄かったためだと考えている。その内、関東でも「水産物加工がさかんな島根」というのも認識されるに違いない。

 最後に、肝心要の島根の水産加工品感を書く。日常感じるに今現在でも急速に和食文化が衰退しているように思える。そして「この国のほとんど8割方が食に無関心である」と思っているのだけど大げさだろうか? ボクには大げさどころか、「食育をさけぶやから(この多くが低級かつ愚か)の、その多くを再教育しないといけないように思う」ことからも「2割の真に食に感心あり」の比率も危ういと思っている。
 とするとボクが大好きな「泥臭さ」「懐かしさ」はある程度残しながら、今現在の食品流通に迎合していかないとダメだと思う。すなわち、「家族バラバラの食事」、また「外食でも取り扱いやすさが売りやすさに繋がっている」、スーパーで「売りやすいか(並べやすいか)」。
 これが島根県の水産加工の課題だろう。


島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/


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コメント(4)

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関西(奈良)のスーパーでは島根、特に浜田の干物は普通に売っていますよ。関東での流通量が少ないだけじゃないですかね?

和歌山の湯浅の干物なんかも普通にありますし、逆に関東から来ている干物の方が馴染みが薄い感じがあります。
売っていないわけではないですが。

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通りすがりさん、ボクが書くのは関東人としての視点です。
あたり前ですけど、関東に長年住んでいますので。
その内、関西でもスーパー巡りもやってみたいと思ってます。

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ぼうずコンニャクさん、関東の人の視点というのは百も承知です。

あんまり島根の干物が洗練されて有名になったら、関西を通り越して関東に行ってしまうので(笑)

東日本の有名なものは関東で止まり、西日本の有名なものは関西(大阪)を越えていく。大政奉還以来,一地方に成り下がった関西人としては,せめて西日本の美味しいものくらいは残して欲しいかなと(笑)

冗談はさておき、日本の和食文化(魚食文化と言った方がいいんですかね?)の衰退は危惧すべきことだと思います。
私の引っかかった点は「この国のほとんど8割方が食に無関心である」というくだりです。これは、「東京のほとんど8割方が食に無関心である」なんだと思いますよ。

色々な地方を回っているぼうずコンニャクさんならご存知かと思いますが、東京都心部(埼玉、千葉、神奈川の一部も含むと思いますが・・・)の方々ほど、食に対する誇りに欠ける人たちはいないですよ。マスコミが美味しいというものは美味しいと・・・
私自身4年ほど東京に住んでいて感じました。
人口の大半が関東に集中する現在は仕方ないのかもしれないですけどね。

まぁ、結局何が言いたいかというと
-今現在の食品流通に迎合していかないとダメだと思う。すなわち、「家族バラバラの食事」、また「外食でも取り扱いやすさが売りやすさに繋がっている」、スーパーで「売りやすいか(並べやすいか)」-
関西まで流通してたら十分いいじゃないですか?

長文、長々と失礼しました。

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通りすがりさん、水産業自体が老齢化してきています。
出来ましたら、水産物がもっと売れて、後継者が育たないといけないんです。
島根県だけではなく、全国の水産業がもっと豊かになるべきです。

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このページは、管理人が2008年2月20日 11:03に書いたブログ記事です。

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