缶詰の最高峰「隠岐さざえ」

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 長い島根の旅を益田(県の最西端)で終えようとするときに、同行してくれたヤマトシジミさんから、この缶詰をいただいた。
 初めて、「隠岐さざえ」を見たのは境港のJFしまねの支所。ここに飾られてあって、見た目の素朴さになんとなく好感をもった。地方の産物はこれくらいデザイン性が低くて、素朴度が高い方がいい。そして持ち上げて、あれっと驚いたのだ。缶の大きさから想像していた重さからすると、意外なほど軽い。大型の缶を見て、持ってみたら、だまされたような、不思議な気分になる。
 値段は1400円とかなり高い。ただし例えば缶詰の高級品というとニチロのベニザケ缶詰がスーパーなどでは1000円台、タラバガニの缶詰が4000円くらいだから、「サザエという珍しさ」から値段は良識的だ。
「来月は隠岐」というとき、島の土産として買うべきか? と考えると「持ったときの不自然な感覚」から止めてしまうかも知れない。そんな思いでいたときに手渡されて、実を言うと大いに期待をした。期待を抱かせたのはヤマトシジミさんからいただいたため。この人の食への探求心は本物である(ちょっとご本人に注意をしたいことがあって、ここに書く、まだ若いのだから、うまいもんと日本酒に溺れないように)。

 遠路帰宅して、また毎日の市場がよいが始まったのだけど、八王子の市場にめぼしい魚がない。手ぶらで帰った夕食に、さっそく「隠岐さざえ」を開けてみる。
 開けると、缶の半分よりやや大目の偏った醤油色の煮こごりがある。そこにゴロゴロしているのがサザエの身だけど10個以上までは数えられた。とすると貝殻つきのサザエにすると1キロ以上入っていることになる。

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 当日、サザエの価格がキロ当たり1200円だから。中身の値段だけでも卸値で1200円以上することになる。商品なのだから普通は、これに加工費、利潤が乗る。産地とはいえ採算は大丈夫なのだろうか? 心配になる。

 まずは煮こごりごと身を5個ほどすくい取り湯煎にかける。これを武内立爾さんの六角皿にとる。辰砂に醤油の濁りのない汁が美しい。魚貝類を煮つけるときにいちばん気をつけたいのが、「濁らせないこと」なのでこれはまことに見事だ。

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 味の方も見た目の美しさに、勝るほどいい。醤油と砂糖だけで煮たとあるが、汁に出ているサザエの風味、旨味が濃厚である。そして軟らかな身。これは缶詰の王様かも知れないと食べながら思う。
 さて、たった5個の身で酒のつまみとし、我慢に我慢をして後は残す。なぜかと言うに、缶詰の横にこんなことが書かれているのだ。
「酒のつまみに、また汁を使って炊き込みご飯(一缶でお米三合分)にしてもおいしくいただけます」
 そう、朝ご飯に「隠岐さざえ」の炊き込みご飯を作ることに決めたのだ。

 翌朝、用意したのは二合半のお米、そこに煮汁を入れて、ゴボウ、ニンジン、竹の子を加えて炊く。我が家は小型の羽釜で炊くので、強火で釜が吹いてチリチリ吹いてきたら、弱火で八分。ここでサザエの身を適宜に切り加えて、強火で30秒数える。後は15分ほど蒸らすのみ。

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 早朝の柔らかな日差しの中、炊き込みご飯の湯気がのぼるのだけれど、それがなんとも香ばしく甘い。その上、この味をどう表現すべきか迷うほど、この炊き込みご飯はうまい。調味料は砂糖と醤油だけとのことだけど、本当なのだろうか? もっと複雑に、より濃厚に旨味を感じるのはサザエ自体の味ってこと? あまりの味のよさに我が家だけで食べてしまうのが惜しいので、『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんにも試食してもらう。

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「これ本当に缶詰なの。いい味だね。サザエの身もうまい」

 さて、この絶品缶詰を作った隠岐浦郷の方達に感謝したい思いとなる。当然、島根最強の食の冒険家であるヤマトシジミさんにも感謝感激。
 最後に、どうして缶詰の中に空洞の部分が必要なのだろう。缶詰の大きさと、重さがアンバランスなので、買う側に躊躇させる要素となる。例えばタラバガニの缶詰が小振りなのに、なかから圧縮された思った以上のカニの身が出てくるように出来ないのだろうか? 「隠岐さざえ」のファンになってしまったので、ちょっと残念。
 
JFしまね浦郷支所
http://fish.miracle.ne.jp/okiurago/
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/


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コメント(2)

サザエの缶詰という文字を見た瞬間、缶詰に殻ごとサザエの煮た物が
入っているのを想像して頭の中でカラカラいわせてしまいました。
カラカラは私の頭だったようです。

大分にもサザエの味付け缶詰があるようですがこちらも
かなり内容量に比べて大振りの缶になっています。

理由ははっきり分からないのですが
仮説1.お土産品コーナーにおいた時に目立つように
仮説2.缶原価が安い
仮説3.果物系の缶詰製缶機の流用
といったところでしょうか。

イシダイの生まれ変わりといわれる私としてはなんとか入手して
食べてみたいものです。

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あ2さん、情報ありがとうございます。
確かになんらかの理由がありそうですね。
とにかく一度食べてみると、病みつきになります。
特に我が家では、炊き込みご飯が大歓迎でした。
その内、お取り寄せ大会を開きたいと思います。

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このページは、管理人が2008年2月23日 16:28に書いたブログ記事です。

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