山陰島根の旅01 鳥取県岩美郡岩美町網代港 後編

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 天下に鳴り響いているので、今更説明するのも可笑しいがズワイガニのオスを山陰では「松葉がに」と呼ぶ。
 岩美町はその「松葉がに」の水揚げ量では日本一なのだという。
 それが証拠に、ここ岩美町網代港、目の前には大量の「松葉がに」が置かれている。

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 水槽には関東ではあまり見ることの出来ない最上級、大型のもの。それからやや小振りのものはブルーシートの上に小山になって置かれていて、そこにはキズや指とれなどと書かれた札がある。
「大きさで10段階、汚れ、指とれ、赤、脱皮したての“若松葉”とかで状態で7通りに分かれます」
 気に掛かるのは「赤」というもの。
 これに関しては十九百さんの言葉を補足するように、通りがかりの方が、
「紅(ベニズワイ)との合いの子じゃな。ここ(ハサミを持って)が小さいだろ」
「味はどうなんですかね」
「そうじゃな。松葉よりは落ちるけど紅(ベニズワイ)よりも上じゃな」

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左下がベニズワイとズワイガニのハイブリット。

「後ね“ももちゃん”というのがこれ、ハサミが細いでしょ。まだ『松葉がに』になっとらんのよ」

「松葉がに(ズワイガニ)」の隣にはホタルイカ。まだ身は赤味を帯びていて透明感がある。
「ここにホタルイカに似ているヤツでホタルイカモドキというのがいませんか」
 十九百さんが「おるよ、探してみましょうか」といってホタルイカの発泡からすぐに一匹見つけてくれる。
「ホタルイカのなかには必ずこれがおるな」
 昔漁師さんだったという人が話しかけてくる。
「味はどうですか」
「ホタルイカの方がええね。こっち(ホタルイカモドキ)にはワタがない」

 網代港の競り場は港に向かって東西に細長く、西に向かって見て歩いている。
 そこにあったのが「本もさ(クロザコエビ)」と「がらもさ(トゲクロザコエビ)」、そして「赤えび(ホッコクアカエビ)」。

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 ホッコクアカエビは直に氷に当てない方がいいのではないだろうか? 網代港のやり方が北海道西岸と比べて雑に思える。
「“もさ”はどっちが高いんですか?」
「『本もさ』の方が値がええですね」

 大きな「白ばい(エッチュウバイ)」があって、
「これは主に関西から金沢に行きますね」
 隣に「赤ばい(チヂミエゾボラとエゾボラモドキ)」がある。
 立派なチヂミエゾボラがゴロンと置かれているのだけど、この辺りでは安いものらしい。新潟での高値からすると不思議だ。

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左が「赤ばい(チヂミエゾボラとエゾボラモドキ)」、右が「白ばい(エッチュウバイ)」。

 テナガダコにボウズイカ。ボウズイカは「びんだこ」もしくは「耳だこ」と呼ばれ、
「ほんまはイカなんじゃろ」
 荷を運ぶオバサンが呟く。

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見た目はタコだけど、イカですよー

 十九百さんは8時を過ぎて、「松葉がに」の入札のために水槽の方に消えていく。

 アカガレイが多いのだが卵巣は目立たない。

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「沖いわし(ニギス)」、マダラ、「えてがれい(ソウハチガレイ)」、「べらんす(ヒレグロ)」。
 タナカゲンゲがあって、「なまず」と箱にある。岩美では「ちょうせんなまず」、「ばばあ」とも呼ぶらしい。これは本来、漁師さんのおかずや、練り製品などに使われていたもの。

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ズワイガニ漁などに混ざってとれるもの。鍋物にして美味。

 競り場の中程に発泡の山が出来ていて、これが総て「白はた(ハタハタ)」であった。そこまで来たときに役場の川上寿郎さんがやって来た。

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 この方が「ばば」、もしくは「ばばあ」と呼ばれていたタナカゲンゲに「ちゃん」をつけて、鍋物にして売り出した張本人だ。
 初対面の挨拶もそこそこに、
「『白はた』はこの辺では刺身でも食べるんですよ」
「そうなんですか。関東では酢締めにはしますけど」
「これ(指さして)ハタハタって図鑑にはあるけど、『白はた』とハタハタは別の魚ですね。色が違うでしょ」

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鮮度抜群の「白はた(ハタハタ)」。

 関東では北海道ものも山陰ものも、東北日本海側のも総て揃った状態で見るのだけど。違いはあまりわからない。
 ここからは川上さんと競り場を見て回る。
 それにしても凄い量の「白はた」である。

 競りは「松葉がに」から始められる。一匹が1万円を超すカニの競りであるから、熱気を帯びている。それから西に西に競られていき、最後が「白はた」。

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 6時半前に到着して、実際に競りとなるまでが非常に早く。競り後の荷の片づけも速やかだ。
 ここで活躍するのがやけに肌がすべすべとしたお婆さんたち。このきれいな肌は岩美の魚貝類をたっぷり食べているためだろう。
 競りが終わって十九百さんが戻ってくる。
 川上さんに「浜勝に行きましょう」と声をかけて、十九百さんとクルマで網代港を後にする。

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鳥取市岩美町浜勝商店
http://www.hamakatu.co.jp/
鳥取県岩美郡岩美町
http://www.iwami.gr.jp/


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コメント(1)

市場は楽しいですね

好きなカニが一杯嬉しいですね

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このページは、管理人が2008年2月24日 10:28に書いたブログ記事です。

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