松江魚市場には海産物が溢れかえっていた。特に隠岐からの「松葉がに(ズワイガニ)」、近隣漁港からのアマダイなど国内最高峰のものが、ずらりと並ぶ。まさに壮観としかいいようがない。魚好きには、まことにワクワクする感動的な光景がそこにはある。
ただ、それをしても松江魚市場をもっとも特徴づけているのは宍道湖、中海の魚貝類だろう。
シジミ、コイ、ウナギ、「もろげえび(ヨシエビ)」、スズキ、シラウオ、「あまさぎ(ワカサギ)」、これを宍道湖七珍と呼ぶ。今回の松江魚市場では、その七珍のいくつかが見られるだろう、と期待していた。
当然、スズキはすぐに見つかり、またすぐ場内の中程で、透明パックに入ったシラウオが並んでいるのを発見する。
「こんな大きいのは初めて見た」
いつい声に出るほど、宍道湖のシラウオは大きく、また産地であるからこそずば抜けた鮮度。この薄暗い場内で透明で表面がキラキラして見える。このまま江戸前握りにしたら東京でどれくらいの値段がつくのだろう。ボクなど庶民にはとても手が届かない代物に見える。
昔、大阪中央市場に飾ってあって見事であるのが記憶にあるが、宍道湖のシラウオは関東ではあまり馴染みがない。
シラウオの隣でバタバタはねているのが30センチを超えていそうな大型のフナだ。体形色合いからするとオオキンブナではないだろうか? ギンブナとオオキンブナの区別はボクには難しく、この画像を見て多くの方達に判断していただきたい。
競りに参加していた魚屋の本川さんにお聞きすると、
「なかなか高いで、買えないな」
いくら位するのだろう? 聞きそびれてしまった。この時期の大フナは「子まぶり(子つけ)」になる。これは刺身をひも状に切り、塩湯でしてバラケさせた卵をまぶしつける。観光パンフレットなどではコイの写真が載っているが、フナの方がうまいように思う。
宍道湖で「地鮒」と呼ばれていたものにはキンブナとオオキンブナ、ギンブナなどが挙げられる模様。松江では、このようにフナを食べる習慣もまだまだ健在。それなのに地物は少なく、高いために、足りない分を岡山県などから陸送されてくるもので補っているように思える。
当然、シジミがあって、ふと市場の窓の外を見ると、なんと大橋川の岸辺で船からシジミかきをしている。護岸には葦、ネコヤナギだろうか、まだ裸木である。まだ岸辺の家々は目を覚ましていない。
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曇り空 寒しじみかく 岸辺の葦の孤独さよ 問答坊主
場内の慌ただしく、喧噪なのと比べて、なんと静かな情景なのだろう。もしもまた松江市で時間ができたら宍道湖、大橋川、中海でのシジミ漁をじっくり見てみたい。
今回は「あまさぎ(ワカサギ)」もウナギも、「もろげえび(ヨシエビ)」もコイもウナギも見られなかった。
宍道湖七珍にあるなかでいちばん印象が弱いのはヨシエビだろう。大阪では「きえび」なんて呼ばれるがありふれたものだ。これを七珍のひとつに数えなくてはならないのにはワケがありそうだ。例えば島根県の一番東にある美保関には小型底引きの船がある。ここでその昔豊富に揚がっていたのが、クルマエビなのだ。
また宍道湖が大きく取り上げられているが、中海の魚貝類が忘れ去られている。例えば松江では宍道湖産よりも中海産のシジミの方が値が高いようだ。
その上、市場に高く積まれているのが岡山県産のサルボウ。島根県ではこれを「赤がい」と呼ぶのだけど、地元にはなくてはならない食材の一つ。その昔、大産地であり、岡山県などに出荷していた中海のサルボウがとれなくなって久しい。今では逆に、岡山県産サルボウが市場に積まれている。
県の水産試験場でも中海のサルボウをなんとか増やせないかと研究が進んでいるようだ。中海は、一時計画されて、今では凍結されている干拓事情での水質の汚濁や、水域の締切などを改善する方向にある。すでに干拓された農作地にも放置され、排水ポンプの音だけが空しく響く場所が安来側では多々見受ける。そのような現状からも中海をなんとか元の状態にもどすべき。この県水産試験場の取り組みに関しても市民、また全国から、もっと注目を浴びて欲しいものだ。
松江市周辺の淡水魚、汽水域の魚貝類を食べる習慣は、食文化を高める上でも重要な役割を演じてきた。観光という観点からみても、価値は高いし、需要は高いままで持続しそうだ。この地ならではの食文化を宍道湖、中海だけでまかなえるようになると、理想的だ。
●松江魚市場見学はまだまだ続く。
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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「きんき」は小さくても、どえりゃーうめー!
はじめまして
写真のフナですが尺を超えていると
いうことと鱗のかんじから判断すると
ゲンゴロウブナ(へらぶな)とマブナ類(ギンブナ/キンブナ含む)の掛け合わせでできる「ハンベラ/アイベラ」ではないかとおもいます。
フナも地域によってへんてこなのがいろいろいます。信州野尻湖には口がなまずのように大きいキンタロウという鮒がいます。
それにしてもシラウオがおいしそうです。
僕の記憶では七珍に入るコイ科淡水魚はフナではなかったでしょうか。
写真のものはみんなゲンゴロウブナを除くフナ類でしょうね。体高の高いこのようなものは湖沼ではちょくちょくみられます。体高や大きさではゲンゴロウブナや、あいベラといった曖昧なものに片づけられません。ちなみに言っておくとアイベラが生まれる確率ってかなり低いでしょうね。僕も生まれてこの方正確に交雑個体と呼べるものは一度しか採ったことがありません。
すべてギンブナ又はオオキンブナと考えられます。またどうも岡山産とは違う気がするのは気のせいかな。地元産と見受けます。
しかし山陰でしたら怪しいフナのわんさかいる地域でしょうね。大きいものは今挙げた二種のどちらか(分類は混沌としているが)でしょうけど、小さいものだとキンブナまで考えないといけません。
うなたろうさん はじめまして!
NICといいます。うなたろうさんの書き込みを拝見していて、教えていただきたいことが
でてきましたので書き込みます!
フナ系の魚の正確な種類の同定方法というのは結局のところサイハの数を数えるしかないと承知しておりましたが、それ以外に外見等で見分ける方法等ありましたら是非お教えいただきたいです!どうかよろしくお願いたします。
画像は、少ないけど水揚げされていた宍道湖のフナです。
岡山県産はスーパーなどで見受けました。
安いのは岡山県産、高いのは宍道湖産のようです。
nicさん、うなたろう君の見解は記録に残しておきます。
残念ながら来週は隠岐なので淡水系は見られません。
その内、宍道湖をじっくり見たいと思います。
NICさん
これはなんとも言えない判断方法なのですが、長い事フナを見続けていると、「これはヘラ(ゲンゴロウブナ)」だな、とフィーリングで見分けてしまいます。ではどうやって見分けているかと言われると困ってしまうのですが、体高はあまり当てにならず、顔つきが決め手になっていると考えられます。やはり口と、目、でしょうね。ゲンゴロウブナは目が若干下の位置にあります。そして口がほんの少し受け口気味。ただし大きい口のものと小さい口のものがいるような気もします。この写真を見ていて、背の盛り上がり方の差異も判断材料にしているのではと内心思いましたがそこまで重要なものではないかと。
関東地方のキンブナは簡単です。圧倒的に背鰭分岐軟条数が11〜14と少ないのです。13や14はギンブナとも被るようですが、明らかに背鰭基底長が短いように思います(僕は10個体も見ていませんけど)。他はサイハでの判断、ということになるでしょう。オオキンブナやナガブナはどうなることやら・・・
ぼうずコンニャクさん
そのうち山陰の淡水文化をめぐる旅がしたいと思っています(石がまの湖山池、宍道湖、ほか)。またご一緒しましょう。
書き忘れました。
やはり写真のものは宍道湖産だったんですね。あってて良かった(笑)
岡山ブナは産地でも見、流通現場でも見ているのでなんとなく分かるようになってきました。
うなたろうさん こんにちわ!
親切に教えていただきましてまことにありがとうございました!やはり口元が判断の基準になりますよね!岡山産ということは児島湖付近の小河川で網入れが激しいと聞きましたのでそこらへんなのでしょうか。甲信越では河口湖、山中湖あたりはへらぶなの洗いが比較的ポピュラーのようです。ハイブリッド系の鮒は自分たちへら師でも釣りあげたときはヘラだと思っても後で写真をよく確認したらうーんということが多いです。
へら@河口湖
http://www.himajin.net/diary/p.php3?5807/49#667573
ふな@秋神ダム(岐阜)
http://www.himajin.net/diary/p.php3?5807/255#639402
>僕の記憶では七珍に入るコイ科淡水魚はフナではなかったでしょうか。
宍道湖七珍は「相撲足腰(すもうあしこし)」
スズキ
もろげえび(ヨシエビ)
ウナギ
あまさぎ(ワカサギ)
シジミ
コイ
シラウオ
このうち、もろげえびはもともと中海原産の誤認ではないか?(宍道湖はテナガエビの方が多い。)と言われています。
ワカサギは近年ほとんど取れておりません。外来魚影響説、温暖化影響説もあります。スズキが湧いており、影響があるかもしれません。ゴズ(マハゼ)の漁獲高も激減しており、色々心配な状況です。