島根県浜田市『江木蒲鉾店』の「赤てん」

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 徳島県人が島根県浜田市の「赤てん」を食べて、「懐かしいな」と思った。そんなバカなと思われるかもわからないけど、本当なのだ。
 話は逸れに、逸れるが、ボクが育ったのが徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)という山奥の町。山間部なのでなかなか新鮮な魚は手に入らなかった。また当時は片田舎なので洋食、トンカツなんてものは知らなかったのだ。実はこの手の洋食で唯一知っていたのがコロッケ、そして「かつ」。この「かつ」がトンカツでもなく当然ビーフカツでもない。現在では「フィッシュカツ」と呼ばれている、ようするに魚のすり身にカレーや香辛料で風味をつけフライにしたものなのだ。
 この「かつ」に似たものは他には山口、大分などでの「ギョロッケ」が有名だが、島根県にもあったのだと驚いて、しかも似通った味わいから、しみじみ懐かしさがこみ上げてきた。

 外見はまったく違う。だいたい土台となる練り物が紅色で、それがパン粉を通して赤く見える。
 特徴はその柔らかい土台(練り製品)の部分にある。味つけはしっかりしたもので、唐辛子のピリ辛に、塩と甘味がしっかりついている。特に魚肉というような風味はほとんど感じられない。
 味わいは素朴だけど、今時のマック(マクド)やケンタッキーを好む世代にも受け入れやすいものとなっている。ボクもこのような、わかりやすい、その地ならではの惣菜が大好きである。

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一袋2枚入りというのがとてもいい。日本橋「しまね館」でもできたら、この形で置いて欲しいものだ

 さて、『江木蒲鉾』に「赤てん」の歴史を問い合わせると、「赤てん」は戦後(たぶん1950年代)、魚肉ソーセージが本格的に生産されるようになって、練り製品の売上が落ちたときに、それに対抗すべく浜田市内の蒲鉾屋が試行錯誤の上で作り出したものだとのこと。ソーセージという西洋的なものに「フライ(揚げる)」で対抗したというのも面白い。
 初めは単に「フライ」、もしくは「ぴりから天」と呼ばれていたのだという。そして、元祖「赤てん」というか最初にこれを作り出したメーカーは今では判然としない模様だ。
 現在では浜田市内の数社、また同様のものを市外のメーカーも作っている。ただ、やはり「赤てん」の本場は浜田市であり、また「赤てん」は浜田市の隠れた名物ともいえそうだ。

 ちょっとここで時代考証。
 魚肉ソーセージの研究は大正時代から始まっていたようだ。それが第二次世界大戦などで中断。戦後、クジラやマグロ、スケトウダラなどで研究が再開。徐々に生産量が増えてくる。そして1950年代始めにはマルハなどが本格的な生産を開始した。ボクは1956年生まれなのだが、子供の頃、魚肉ソーセージは缶詰などと比べて、なんだか安っぽいように感じていた。また同時に徳島特有の「かつ」も存在していて、小学校低学年の頃から好物だった。魚肉ソーセージも、浜田市の「赤てん」も、徳島県阿南市の「かつ」も、練り製品の西洋化(洋食化)という流れの中で同じように生まれたものに違いない。

『江木蒲鉾店』によると、大量生産が難しい「赤てん」は県外向けに大々的に売り出すことはできないらしい。とするとやはり浜田市や島根県内で手に入れるしかない。関東では都内日本橋の「しまね館」にも置いてある。
 これを買い求めて、子供のお弁当に入れてやるとか、慌ただしい朝の食卓にあると、とても便利である。
 きっと浜田市で生まれ育った人たちにとって「赤てん」は、懐かしい記憶の中にたびたび登場してくるのではないだろうか。
 浜田市での「赤てん」の思い出や、『江木蒲鉾』以外にもありそうな“うまい赤てん”の情報を求む。

赤てん本舗 江木蒲鉾店
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このページは、管理人が2008年3月 4日 09:05に書いたブログ記事です。

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