隠岐の旅序章 隠岐で見つけた膨大な食と未来への「隠し金山」

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 さて、丸々1週間の旅を終えて、大きな疲労の波が押し寄せてきている。それでも帰りの新幹線などで旅の途中、また帰り着いてから浮かんできた隠岐への感想をここで綴ることとしたい。
 前回2月の島根本土の旅は大変だった。横殴りの雪と、大波に、海を見に行くのではなく、人に会いに行く、という旅となってしまった。そして3月となり、辿り着いた島根は春を迎えて、穏やかな気候となっており、まさに隠岐への船出日和だったのだ。

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隠岐美人三人。知夫里島にて

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西ノ島で出会った可愛い子馬

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海士町でみた月は寂しかったなー

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これはなんでしょうね?


 隠岐諸島は知夫里(ちぶり 知夫村)、西ノ島(西ノ島町)、中ノ島(海士町)の『島前三島』と『島後(どうご 隠岐の島町)』の島からなっている。その島々総てを、三泊四日で回る。
 そこで見つけたのが多種多様な美味である。磯回りではサザエ、アワビ、マダコ、そして「岩のり」、ワカメ、「神葉草(ホンダワラ)」、「はなたれ(アカモク)」。隠岐周辺の深場では「松葉がに(ズワイガニ)」、「紅かに(ベニズワイガニ)」、「白ばい(エチュウバイ)」、オオエッチュウバイ、「赤ばい(チヂミエゾボラもしくはエゾボラモドキ)」、「赤めばる(ウスメバル)」、メバル、ヤリイカにケンサキイカ。挙げたらキリがない。
 天然物もあればマサバやブリ、イワガキ、ヒオウギガイなどの養殖も盛んである。
 この美味であることは筆舌に尽くしがたい。
 素材もそうだが、隠岐独特の料理法も素晴らしい。例えば「れんこのみそ焼き(キダイ)」、岩のりをあぶる、ワカメの加工品である「板わかめ(めのは)」、「べこ(アメフラシ)料理」。とれたばかりのヤリイカの塩焼きは絶品だった。「鬼えび(イバラモエビ)」は生もよかったが、塩焼きの旨さにビックリ仰天した。そう言えば、島で水産物に従事する人たちも、聞いてみると単純な料理法を好まれているようだった。
 意外に新鮮だったのが「白ばい(エッチュウバイ)」のフライ。スルメイカで作る「焼きいかの麹漬け」なんてまさに酒を盗む佳肴だ。
 水産物が主役ではないが「隠岐そば」には感動した。そば粉十割にサバ、アジなどのやや甘めの汁をかけて岩のり、ネギをちらしただけのもの。これは我が、そば食い人生の中でも出色の出来事になった。
 隠岐で忘れてはならないのが、こじょうゆみそや、麹を使った食品。また海産物を麹などで漬け込んだ加工品もある。それに加うるに、うまい日本酒があるのも素晴らしいことではないか!

 それこそ無数にある隠岐の美味だが、これがなんと多くが観光客、また島民以外の人間には手に入らないように隠されてしまっているのだ。これを「隠岐・食の埋蔵金」、「隠岐・食の隠れ金山」と呼びたい。不思議なことに今回の旅での感動的食の出合いは、すべて一般家庭の作り出したものや、伝統的な料理法にのっとったもの、はたまた伝統的な加工品ばかり。そして対するに、水産物の多彩であるにも関わらず、よそ者が食べられるのは定型化したブリやサバ、せいぜいがズワイガニ、キダイなど既知の魚貝類ばかりとなっている。
 港では素晴らしい雑魚が揚がっている。また養殖の「めじろ(ブリの若魚)」もいいだろうが、天然ものの立派なスズキ、「くろや(メジナ)」が揚がっている。高級な「白いか(ケンサキイカ)」だけではなくスルメイカ、「もんごう(カミナリイカ)」も見られた。これら多種多様な魚は誰が食べているのか? 「これを旅人にも食わしてくれよ」なんて定置網の水揚げを見ながら思ったものだ。
「岩のり」、「板わかめ(めのは)」も地元の方が食べているものが、お土産屋で手に入るものよりも味わいとしては上であろう。

 島々を巡り、この隠し財産を島外、観光客にもなんとか売ろうという取り組みを見た。これがなかなか始まったばかりで、課題が多い。「松葉がに(ズワイガニ)」、イワガキなど徐々に知名度を上げてきている「売れ筋商品」だけではなく隠岐の産物の多様性を全国に知らしめていくには何が必要なのか? どのような方法をとるべきなのか?

 ここで提案なのだけど、「隠岐は隠岐らしく、島根の多彩な産物を網羅して、隠岐の人がうまいと思うものを、隠岐の料理法で、隠岐に来た人に食べてもらう、隠岐以外にも売る」これが今、隠岐にいちばん必要なことだと思う。既製の板前料理などできるだけ早く、片隅に追いやるべきだ。もしくは捨て去ってもいい。
 すると島を訪れて、また再度島に渡る旅人が増えるだろう。隠岐のものを名指しで買う人も増えるはず。当然、島の魚貝類自体の評価も上がるのではないか?
 離島という、ハンデをなんとかプラスに向ける。この島根県の取り組みは前途多難だ。

隠岐諸島
知夫村役場
http://www.chibu.jp/
西ノ島町役場
http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/
海士町役場
http://www.town.ama.shimane.jp/
隠岐の島町
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/index.php
(順番は旅の行程による)
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
隠岐の旅は本土の旅が終了後に始まる


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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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コメント(3)

先日まで帰省しウツボ、マサバ、ウルメイワシなど堪能してきました。
そこでも感じたことですが一番おいしいものは地元で食べてしまうという宿命がある以上島外まで出荷するのは難しいかもしれませんね。
消費者側でもいりあいのトロ箱を見て涎が出てくるくらいにならないと、書かれているようなバリエーションに富んだ素晴らしい魚介類を消化しきれないように思います。
かつ鮮度が重要なものに関しては消費者の口に入るときには味が2回りも3回りも落ちてしまう問題もありますし…。(それを考えさせられるほど時期をやや外れているはずなのに朝どれのマサバとうるめは旨かった。)
でも一番の問題は消費者がそんな旨さがあることを知らないことでしょうね。
そこに「行かなければ知ることが出来ない⇔知らないからそこには行かない」というどん詰まりがあります。
売れ筋で人をとにかく集めて、来てもらってから本当の地の物の旨さを知ってもらうということが必要でしょう。
…でもまずは隠岐がどこにあるか、それを知ってもらうことが一番最初かもしれません。たぶん関東の人々に「隠岐」といっても場所が分からないと思います。

書き忘れていました。
旨いもの情報にいつも感謝しきりですが、体調もお大事に。

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あ2さん、ウルメイワシはうまいでしょうね。そろそろシーズンも終わりでしょうけど。
さて、今、日本中で必要なのは、地元の「うまいもん」を素直に出すことですね。
隠岐で困ったのも、へたに洗練された盛りつけや、都会では最下級の板前料理なんです。
今回行った店はそれでも優れた面を持っていたのですけど、やはりどこかもの足りない。

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このページは、管理人が2008年3月16日 18:12に書いたブログ記事です。

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