広島県産三倍体マガキ「かき小町」について

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大粒で、身がふっくらして、上品な味わいでいながら、旨味は充分に感じられる

 養殖の世界ではやるもの、それは三倍体である。本来倍数であるはずの生き物の染色体を奇数である3個に人為的にしたもので、特徴は成熟しないということ。成熟しないということは、お肌も体も若いまま、次世代への投資をしないもので、長くおいしい状態で海に存在すると考えてもいいようだ。
 魚類の世界ではニジマスに活用されて、今やなにげなく食べているコンビニお握りの鮭(サケ科という意味。愚かにもコンビニ業界ではこの材料名をしばしば見かける。三倍体で多いのはニジマスから作られたサーモントラウト)の多くが三倍体である。

 これをいろんな水産物にまで応用すべく、日本中で研究が行われている。そして最近出てきたのが広島県の「かき小町」だ。
 ここにある「小町」というのは三倍体で、すべてメスと言うことからくるのだろう。
 貝殻も立派なら値段も1個卸値で300円弱、なかなかお高い。例えば、養殖の殻付きマガキが同じ日に100円を割っていることからしても市場での評価が得られているということになる。
 しかし、近年、マガキをめぐる売る側の工夫というか、試行錯誤は多種多様。「海域」、「天然」、「落ちガキ」に有名養殖場の名をしっかり明記するだけでも、値段は乱高下している。ここに人口的に作り出した三倍体のマガキの価格は高いままでいられるのだろうか?

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この表示からは「三倍体」というのがわからない

 買い求めたのは、たったの二個、まあ味見程度なので充分だろう。貝殻に厚みがあり、剥いた身の方もぷっくりと脹れて強い弾力を感じる。剥き身は見事だが、味の方はいかがなものか? というとこちらもかなりうまいね。

 ここで予め書いて置くが、マガキの三倍体を作り出す必要性はあるのだろうか? 食べる側からしたら疑問符がいっぱい湧いてくる。マガキは寒い時期に食べるからいいのであって、年がら年中食べられるようになると、食文化という意味では破壊行為に等しい。
 暑い夏が去り、残暑も終わり、秋本番の10月になって、街角で「カキフライ始めました」の貼り紙を見る。ボクはこの一瞬が好きで好きでならない。これが「そういえば8月も、9月も、カキフライ食べたよな」となるのは迷惑極まりない。
 もっと三倍体に関する考察を深めていくと、例えば病気に強いのだろうか? 冬の旬に時期にも、ただのマガキよりも味がいいのかも知れない? などいろいろある。
 でもやはり個人的にはマガキは現在あるものでも充分にうまいし、秋から春までの限定的な食材であって欲しい。まただからマガキの価値があるとも思われる。

 この「うまい」という表現をもっと詳しく書き上げると、決して出色の「うまさ」というほどの「うまさ」ではない。例えばサロマ湖や厚岸湖の天然マガキと比べるとどうだろう。並べて食べてみないとわからないが、大きな違いが出るとは思えない。ひょっとしたら、ただの養殖マガキと比べても「誰でも感じるほどの違い」が見いだせるだろうか?
 マガキの三倍体というのも後数年でありふれたものになるのではないだろうか? このときはっきりした結論が出そうだ。

 五十路になって食べ物に対して、味以上に「出来るだけ、自然のものであること」、「何か時間の流れを感じるもの」、端的に言って「季節性」を重んじるようになってきている。とすると、人口的に作り出す水産物を積極的に食べたいものか、というと否だな。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マガキへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/kaki/magaki.html


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このページは、管理人が2008年3月23日 10:48に書いたブログ記事です。

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