ボクの知る限り、アメフラシを食べるのは千葉県大原と島根県隠岐郡隠岐の島町くらいだろう。その隠岐島後(どうご)隠岐の島町津戸というところでアメフラシを食った。それこそたんとたんと、丼いっぱいくらい食べたのだから、ぼうずコンニャクとしてはアメフラシの味わいに関して語る権利を得たというべきだ。
その前に、アメフラシとは何か? というと軟体類だからタコとか貝の仲間で、手短に言ってしまえばウミウシの親分のような生き物。磯で遊んでいると、それこそ両手一杯くらいの大きさの黒いヤツが、動いているのか止まっているのか、わからないくらいに水中をたゆたっている。春にはいつも大小2匹でなかよくランデブー(これは古くはデートという意味)している。オスとメスというか夫婦仲良くうらやましい。面白いのは木の枝なんかでチョチョイとつつくと紫色の液体を吐き出す。これがフワリと水面近くで雲のように見えるから、「雨降」と呼ばれている。
アメフラシのことを隠岐の島町では「べこ」という。「べこ」とは広辞苑でひくと東北地方での牛のことで、「形が牛のようである」ための呼び名かもしれない。
今回の「べこ料理」を作ってくれたのは、隠岐の島町津戸の浜田厚子さん。漁師を生業にする浜田家でのアメフラシの料理法をお教え願う。
アメフラシの旬は春らしい。旬の意味には「うまい時期」というのと「たくさんとれる時期」というのがあって、どうやら後者の意味だと考える。
磯に出て、のんびり波に揺れているアメフラシを拾い、持って帰ったら内臓を取り去る。
これをゆでる。ゆでるとかなり縮み、煮汁が黒く濁るという。この煮汁のまま一昼夜鍋止め。
翌日、「べこ」の表面についている黒いものをたわしなどで落とす。きれいになったら適当な大きさに刻んで、甘酢味噌で和えたり、甘辛く煮たりする。
当日食べたのは酢みそ和えと、煮つけ。アメフラシの身はビローンとブヨブヨして、なかなか噛み切れない。噛んでいると、微かに苦みがあって、これがアメフラシの味だというほどの個性は感じられない。
この弾力を楽しむのだなとは思うが、酢みそ和えではやや直接的だ。少し食べる分には面白いけど、アメフラシをじっくり味わっているのか、ブヨブヨした歯触りを楽しんでいるのかわからなくなる。
対するに、煮物はいい味わいなのだ。ゆでて、油で炒めて、そしてまた醤油砂糖などで煮たせいで噛み切り易くなっている。だから弾力よりも味が楽しめる。また油を使ったためか、酢みそで感じられた苦みがほとんどない。
酢みそ和え、煮物ともに味付けが絶妙で浜田厚子さんの料理の実力のほどがうかがえた。きっと浜田家のご飯はうまかろうね。「べこ料理」を食べながら、「隠岐のうまいものは外食にはなく、家庭にあり」というのを思い知る。素晴らしい食材に恵まれた土地を旅するたびに思うことだが、いちばんうまいものは地元の方のみのもの。旅人は絶対に食べられない。浜田厚子さんの手料理が食べたいな。
閑話休題。
アメフラシを食べるというと、下手物のたぐいだろう、と思っていた。それがどうだろう、食卓にのると、いたって平凡な酢みそ和えであって、煮物である。酢みそ和えはまさしく酒のアテだけど、煮物などご飯にも合いそう。これは自分でも料理してみなくてはならない。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アメフラシへ
http://www.zukan-bouz.com/nanntai/kousairui/amefurasi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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明日から島根県です
はっきり覚えてはいないんですが、私が初めて知ったのは千葉でも讃岐でもなかったと思います。NHKでも見た覚えがありますが、それも地域忘れてしまいました。
一昼夜鍋止めするんですか。すぐ食べたから余計に旨味なかったんですかね・・・いまいち価値感じなかったです。
今度正しく試してみようと思います。
アメフラシといえば卵のうみそうめんも、あのただ薄塩味のブツブツ切れるだけの物体にあまり旨味を感じられませんが、なにか美味しく食べるコツとかあるのでしょうか?
こんばんは
ぼうずコンニャク様 せつな様
アメフラシで思い出し、書込もうと思い せつな様のコメント見たら海そうめんの話題
一時期当店でも販売しておりましたが、高くて売れませんでした!!
アメフラシの卵をアルカリ処理し
緑色の海そうめんと言う名(幻の海藻)で製造されています
塩漬けでの販売
塩抜きし 流し物・酢の物等で使用されております。
三杯酢で食べても、そうめんの様な歯ごたえで美味しいですよ!!
舵さん、せつなさん、アメフラシを食べる地域は調べるともっとたくさんありそうです。
韓国でも食べているようですし。
また卵巣を食べるというのも、もっと調べなくては舵さんのところに今度行こうかな?