相変わらずギマが多いんだな、とビックリしてしまった。
木更津での伝統漁すだての内側で手網を構えると、水面近くに何十匹ものギマは泳いでいる。
ギマとは聞き慣れない魚かもしれないが静岡県西部から伊勢湾にかけては、その昔からたくさんとれて、よく食べられているものだ。
形がまことに変わっていて、頭でっかちな宇宙船のように見えて、なんだか生き物らしくない。だいたい、銀白色なのでうまそうに見えないというのも残念な点である。そして実際に手に取ると、もっともっとやっかいな魚であるのを思い知ることになる。
頭の真後ろ、腹ビレ、背ビレの第一棘状がまるで槍のように鋭い。しかもザラザラとした細かな返し(刺さった刃物が抜けなくする突起)が着いているのだ。そしてとどめのごとき滑り(粘液)で、それこそぬらぬらと気持ち悪い。初めて手にとって食べる気になれるか、どうか疑問に感じないではいられない。
「こりゃ食べるとうまいんだが」
ギマがうまいことは数十年前から知っている。この魚をなにげに手にとって、「うまいから持って帰れ」と声をかけられたのが知多半島豊浜の魚屋でのこと。なんとカサゴを買い求めて、3本ほどオマケにもらった。
親切にも皮を剥いてもらって、持ち帰り、刺身にしたら、なかなかうまいのだ。
以後、いろんな食べ方を試してみたが、意外にうまいのが、一夜干しである。
まず、塩をして、酒で風味を加える。これを冷蔵庫でひと晩干すだけ。
後は焼くだけなので、こんなもの料理といっていいんだろうか? というほどに簡単だ。
結局、ギマをうまく食べるには、手早く卸して、滑りから隔離するのが大変なだけというのがわかる。
今回の一夜干しもやっぱり味がいい。このようにして食べるたびに思うのは、フグ目の魚は美味揃いであると言うこと。形からして変であるため、まさかフグ・カワハギの仲間と思い至らないだろうが、実際に食べてみると、そのしっかりした白身からしてフグに近いのがわかるだろう。
骨離れのいい白身を手でむしる。これが淡白で、ほんのり甘味が感じられてうまい。
困るのは、この手の干物は100パーセント酒の肴だと言うことだ。
今夜の酒は島根県安来市の「月山」なのだけど、コップ酒の減りが早いのは、魚のせいだろうか、酒がうまいからだろうか?
網元 つぼや すだて遊び
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きんのり丸の漁師生活28年
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ギマ
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2008年5月12日の改訂記