いつ食べてもうまい。それこそどえりゃーうまい魚というのがある。
もちろんそんな魚は超少数派なのだけど、ヒゲダイはその最たるものなのである。
これほどうまい魚であるけれど知名度はすこぶる低い。
だいたい外見がよくない。和名の如くひげ面である。
まるで田舎臭いジイサンに見える。真っ黒で小汚い。
見てくれは悪いのだけどボクの世代以上には懐かしいのではないだろうか?
顔の部分をよく見て欲しい。
彼の「やめてけれ」とか「ズビズバー」で有名な左卜全そっくりなのだ。
ヒゲダイの面を見ているだけで、あのサイケデリック(これも死語だな)な時代を思い出す。
左卜全はなんと1971年にお亡くなりになっている。考えてみると40年近く前になるのだから知っている人も少なくなっただろうな。
閑話休題。
ヒゲダイはイサキ科である。この仲間にはコロダイ、コショウダイ、ヒゲソリダイなど美味な魚がいっぱいある。
その頂点にあるのがヒゲダイだと言ったら言い過ぎだろうか? いや言い足りないくらいだ。
その最上級のヒゲダイがなぜマイナーなのか? というとあまりとれないからだ。
主に定置網などに入るのだけど、だいたい一匹だけぽつんとあがっている。
そして漁港の隅っこで寂しそうにしている光景を何度も見ている。
だからこんなに美味であるのに、値段もほどほど、これもまたいいところだ。
やや硬めの鱗、皮をはぐと透明感のある見事な白身が出てくる。
特筆すべきは血合いがきれいなことだ。
この刺身にしたときの美しさはマダイより上だろう。
そして味も抜群にいい。塩焼きがいいし、煮つけもうまい。
でもいちばんうまいのはポワレである。
ポワレはフランス料理で「ポワール鍋で焼いた」という意味。
でもいつの間にかムニエルに対して、「粉を使わない」という意味合いになっているように思える。
油に皮つきのフィレを入れて弱火で香ばしく焼き上げる。
ヒゲダイのポワレは尾に近い方を使う。
頭に近い方は皮を引く。
この皮を切り離さないで、そのままにくるりとヒゲダイのフィレを巻き込むようにして塩コショウ。
我が家ではこれをオリーブオイルで焼いて、皿に盛り、エクストラバージンオイルをかけてそのまま食べる。
フライパンをデグラッセしてソースを作ってもいい。
生クリームやフュメ・ド・ポワソンを使ってもいい。
でも家庭の慌ただしい日常生活で時間がないので単純に。
これは酒の肴にはならない。あえていうとシャブリなんて合うだろうね。
でもボクの場合、自宅でワインというのは不似合いなのだ。
本来落ち着くべき家庭でアンバランスなことをしても無駄である。
ただただヒゲダイの皮目の豊かな旨味、身のジューシーな、また芳醇な味わいを楽しむ。
今回のヒゲダイは鹿児島県南さつま市笠沙 若潮便です
http://wakasio.seesaa.net/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヒゲダイへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/isaki/higedai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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