島根県浜田市「どんちっちあじ」で水なます

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「水なます」を初めて食べたのは、もうかれこれ25年も前のことになる。
 当時、釣りキチそのもので毎週土曜日には外房へ、相模湾へ、遠く茨城県、福島県、静岡県にまで深夜クルマを走らせていた。
 さて、時期は梅雨の最中。
 外房はイサキ釣りの最盛期を迎えていた。
 でもたどり着いた千葉県館山市布良の海は大荒れだったのだ。
 午前4時過ぎ。
 宿の前、釣り人の「今日はダメだろ」が挨拶代わりだった。
 やはりその日は船が出なかった。
 こんなとき釣り師は悩むのだ。
 不眠のためにクルマで眠っている間にも海は凪いできている。
 明日は出るに違いない。このままここに泊まってしまおう。
 時間をもてあましたので舘山の町をぶらり歩き、また布良にもどって民宿を探す。
 なかなか泊めてくれる宿がない。
 一軒だけ、船宿が一間だけあいていて、ついでに日曜日はそこから出船することになった。
 その夜に出てきたのが「水なます」だった。
 夕食なのに目玉焼きがある、イサキの塩焼き、ゆでたクルマエビ(?)、冷えたお吸い物、ナスの炒め物などにがっかりしていたら、真ん中にどかんときたのが氷がいっぱい入ったガラスのボウル。
 これが「水なます」だった。
 静岡県にも同じような料理があって、そちらは「がわ」という。
 ようするに魚のたたいた身が入った冷たいみそ汁だ。
 そこに青じそ、ネギ、ミョウガやキュウリなどがせん切りになってたっぷり放り込まれている。
 ごまが入ることもあるし、辛い青唐辛子が入っていることもある。
 ネギではなく玉ねぎのときもある。
 あまりにも簡単に出来て、夏には最高の料理なので、一度食べたら病みつきに。
 今では我が家の定番料理のひとつとなっている。

 魚はイサキ、マアジ、ソウダガツオ類などなんでもいい。
 なんでもいいが、鮮度だけはよくないと生臭くなってしまう。
 できるだけ新しく、出来れば旬のもので脂がのっていてほしい。
 さて、そこで今期初めての「水なます」作りに選んだ魚が島根県浜田市の「吉勝丸」が巻き網であげた「どんちっちあじ」だ。
 巻き網なら鮮度は望めないように思えたのだが、触ってみたらいい感じなのだ。

 大きさは1本100グラムほど。
 3本ほど買い求めてきて、三枚に卸して皮を引き、とんとんと細かく切る。
 片や青じそ、キュウリ、ミョウガを刻んでおく。
 みそをすり鉢ですり、水を入れてといていく。
 そこに氷をたっぷり。
 みその量は氷が入ることも鑑みて大目にする。
 みそ汁状のものがチンチンに冷えたら、アジの身を放り込む。
 アジの欠片がチリっと音を立てるように収縮し、表面にキラキラした脂が浮き上がってくる。
 後は薬味を放り込み、煎りごまも振り、ご飯にかけて食うだけだ。
 我が家では「水なます」だけ作ることはない。
 隣には煮込みハンバーグやポテトサラダがあるのに、太郎はぶっかけ飯で三杯目。
 一年ぶりの「水なます」は最高である。

 うっとうしい曇り空、高い湿度、身体がだるくて不快指数高し。
 そこに冷たくみそ辛い、汁がなんともいい。
 汁にはマアジの脂と、その甘味、そして旨味がほどほどに溶け込んでいる。
 やはり「水なます」用にも脂ののった魚がいいということに気づかされた。

 さて、そろそろ7月も中旬に近い。
 梅雨は明けないのであろうか? 高木ブーじゃなくてゴロゴロ様来てくだされ。

島根県浜田市「どんちっち」
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html


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このページは、管理人が2008年7月 9日 17:59に書いたブログ記事です。

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