「コバンザメってうまいですよね。本当にうまいと思うんですけど、このあたりでも誰も食べないんです。僕だけだと思うんです、食べているのは」
定置網漁師、わかしおさんは音を区切ったように、たどたどしく話す。
「どうやって食べているのかな」
「ウチでは煮たり、焼いたりですけど」
「今夜は鍋にしようと思ってるんだ」
「ああ、あー、それはいいと思いますね。合うでしょう」
今回の「若潮便」(鹿児島県南さつま市笠沙)の中身は珍魚ひしめく中にたった一匹のコバンザメが入っていた。
お礼の電話が、ついついコバンザメの話で盛り上がってしまう。
コバンザメはサメの仲間じゃない。
きっとよくよくコバンザメを見たことのある人は少ないと思うけど、頭にある小判型の吸盤を除けばいたって普通のお魚である。
ただ、ちょっとちゃっかりもので、大型の魚にくっついて、そのおこぼれや、近寄ってきた小魚などを失敬してる。
このずうずうしいやり方から人間世界にも当てはめて「コバンザメ商法」なんて言葉がある。
夕方になるとガクンと気温が落ちる今日この頃、そろそろ鍋もありだろう。
わざわざ、早生の白菜を買い、木綿豆腐を買いして、小鍋仕立てにする。
揃えました材料は、本当に少ない。
白菜、ニンジン、白ネギにシイタケ、木綿豆腐にかぼす。
そこに皮をとり中骨を取り去ったコバンザメを加える。
コバンザメの皮は硬く、とても歯が立ちそうにない。
中骨はもっと頑丈で鋸持って来いというほどだ。
骨を使わない分、カツオ節だしで補ってやる。
そこに酒と塩。
主菜ではなく、ほんの脇役的な鍋だから簡単に作る。
コバンザメの味わいはメダイに近い。
スケトウダラなどよりも上の上品な白身である。
今回のものは70センチほどの雌(めす)で大きな卵胞を抱いていた。
そのために身に脂はなく、ややもの足りぬ味わいであった。
加うるに、わかしおさん曰く、もっと大きい方がうまい、ということと。
さて、コバンザメの旬を知るために、次は寒くなってからもう一度挑戦したいと思う。
わかしおさんのお魚三昧生活
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/komendago
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、コバンザメへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki2/kobanzame/kobanzame.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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