関東の市場でみるかぎり、東京湾奥の食文化などすっかり消え去ったかのごとく思える。
市場に並ぶものの価値、序列は近場重視から、種の知名度重視(キチジ、クエなど)に変わりつつある。
それでもときどき江戸前を感じるものがあって、例えばシャコのつめ(ハサミ)の身とか、ハゼの真子などだ。
今回見つけたのが羽田産(東京都)マハゼの真子なのだが、激安の1トレイ600円。
実質100グラムあるかないかだろうから、キロ当たり600千円としても、思わず目を剥く安さだ。
ボクが思うプライムゾーンは1200円前後。
たぶん、ハゼを天だね(天ぷら用)に加工する副産物にしても、本江戸前なんだから、これくらいは「当たり前だ!」なんて思う。
しかるに末端近くの仲卸で、最安値だとしても安すぎて申し訳ない。
「とっている人(漁師さん)、加工する人にもごめんなさい」といって買い求めてくる。
マハゼの卵はあっさり煮つけて食べるのがいい。
他には唐墨的に作るとか、塩をして寝かせて焼くなんてあるけど、本来の食べ方ではない。
小振りのフッ素加工のフライパン(調理道具にこだわる必要はない)に酒、味醂、醤油を合わせて、水を加えて2倍にする。
沸き立たせて少し煮詰めて、水洗いしたハゼの真子を放り込む。
後は一気に煮ていく。
煮汁は常に真子を包み込むようにする。
真子はところどころはじけてしまうが気にしないでいい。
煮汁は最小限のはず、けっして煮汁のなかに卵粒が紛れることはない。
言わずもがなだが、生姜などは無用だ。
鮮度が悪いときだけ使って欲しい。
生姜を使うときは煮上がりにしぼって欲しいな。
煮上がりにはほとんど煮汁が残っていない。
そのまま皿に盛り上げて出来上がりだ。
マハゼの卵巣がなぜに江戸の昔から人に好まれてきたか。
たくさんとれて身近な魚だったからだろうけど、それ以上に淡白な味わいに甘味があるからだろう。
例えば今回は味醂や酒を使ったが、それ以上にマハゼには甘味がある。
ほっこりした食感には濃厚な旨味も感じられる。
卵巣を一箸つまみながら酒を飲むのだけど、まことに美味極まりない。
なんてゆったりしていたら、かたわらでご飯にハゼの卵という我が子がいる。
吉田健一のエッセイに「うまい魚は酒の肴ではなく、ご飯に合うのだ」というのがあったと思う。
まさにその通りだ。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マハゼ
http://www.zukan-bouz.com/haze/mahaze/mahaze.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/
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