ちょっと前まで夏だと思っていたら、風立ちぬと感じる間もなく、ストンと肌寒の候となってしまった。
地上は秋もたけなわだが、海の中は一か月遅れ、夏の終わりだ。
水温が上がって本来熱帯、暖海にいる魚がわんさか相模湾や東京湾、外房などに押し寄せてきている。
黒潮の恵みともいえそうな暖海の魚たちが、海中が冬となるまでとどまり、水温の低下とともにうまくなる。
海にも豊穣の秋が確実にやってこようとしている。
黒潮の恵みといえば、メアジなどその代表的な魚だ。
本来西日本に多い魚であるが、肌寒を感じた途端に千葉県から入荷してきた。
八王子総合卸売組合『マルコウ』の店頭にあったのが内房からの入り合い。
「いりあい」というのはいろんな漢字が当てられるが、ようするに様々な魚を集めて一箱にまとめたもの。
中には高級魚もあれば、ほとんど値のつかない魚もいる。
最近、日本各地から入り合いが入荷してくる、増えているが、まことに面白い、そしてありがたい。
また多種類の魚を捨てることなく利用するには、もっともっと入り合いでの出荷を増やすべきでもある。
この入り合いの中からイトフエフキとメアジを選ぶ。
さて、メアジというのはまことにうまい。
マアジと比べられて損をしているが、これからの時期、メアジの方が味の点でも上となる。
メアジの味の特徴というのが淡泊で上品であることだろう。
あっさりを好む人はいいが、やや物足りない。
なんとなく一工夫したくなる。
だから単に刺身ではなく、なますや焼き切りにする。
そして塩焼きにしてみよう。
メアジの塩焼きはうまい、けれども、何度も繰り返すが淡泊に過ぎる。
物足りぬ味わいを解消してくれるのが酢なのだ。
塩焼きにして、たっぷり三杯酢を回しかける。
生酢でもいいし、市販のポン酢でもいいけど、どちらも味が強すぎる。
ちょっと上品でソフトリーな加減酢を作って、メアジの味わいを殺さないようにしたいものだ。
この酢を焼き魚にかけるというのは、かれこれ三十年近く前に同じクラスの北海道人に教えてもらったこと。
そういえば北海道の人はなんでも酢をかけるのだ、と聞いたけど本当だろうか。
ラーメンは当たり前、ツナ缶にも、漬け物にも酢をかけていた。
アヤツだけの仕儀なのか、それとも北海道人の性なのだろうか?
北海道に行って調べてみなければ。
さて、週末の宵に三杯酢をたっぷりかけた塩焼きで一杯。
酒は滋賀県湖南市の「御代栄」。
これで幸せな気分にならない人は皆無だろう。
テレビを消すと、外から虫の声が聞こえてくる。
アオマツムシは主役の座を降りて、カネタタキやコオロギが一生懸命に恋を語らう。
ちょっと寂しさを感じるが、心地よい秋の宵なのである。
材料
メアジ1尾(1人前1尾)、塩少々、三杯酢、大根おろし、おろししょうが適宜
三杯酢材料
酢(我が家のはすし屋専用ミツカン山吹)200㏄、カツオ節だし300㏄、みりん30㏄、砂糖30グラム、塩適宜、薄口しょうゆ30㏄
●三杯酢の甘さ、酸っぱさは好みにより加減するべき。
作り方
1 まず三杯酢を作る。酢とだしなど塩以外の材料を鍋に合わせて、温める。沸いたら、味見して塩で加減する。これは冷蔵庫などで保存しておくと便利。
2 メアジは水洗いして、よく水分を拭き取り、振り塩。30分以上置く。
3 盛りつける側を上にして焼き、こんがり焼けたら皿に盛る。
4 大根おろし、しょうがをそえ、食べる直前に三杯酢をかける。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、メアジへ
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