魚を単に切り身にするだけと書いたが、
実際に見てみないとその技のすごみはわからない。
現在の「切り身屋」が扱うものの多くが
塩漬け(塩鮭)、冷凍品であるが一般人が
この半身を見ると呆然とするはず。
適当に切ればいいと思って切ってみると、
はじめの一刀からもてあますだろう。
意外に丸のままの魚は始末が悪い。
例えば『興実水産』で秋鮭の塩物(塩鮭)を1本買ってみる。
「切り身屋」で半身は夕食用に、半身はお弁当用にとお願いする。
「切り身屋」はやにわに1本の塩鮭を取り出すや、
きれいな水にドボンとつけ、
表面の汚れや油(脂というよりも)を落として、
後は5〜6分で頭、かまをオマケに
合計34枚の切り身にしてくれる。
最近、思うのだけど、実は特売などで
「わけあり」の塩鮭を買うくらいなら1本丸ごと
「切り身屋」で買った方が安いくらいなのだ。
家庭内での食事用は1切れ85グラム前後、
お弁当用には60グラム前後で、きれいに並ぶ。
これぞ職人技というもので、年期がものをいう。
実は近年、これができる人は急激に減少している。
機械化したマクロの流通は大手スーパーに任せるとして、
零細、中小の流通の世界としては
この手業が生きる業界に目を向けて
初めて明日があると思うのだが。
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