八王子の市場に通い始めて長い。市場で知り合ったすし職人は数知れずだが、なかでももっとも気の置けないつきあいをしているのが、『鮨忠 第三支店』さんだ。親子二代の職人がつけ場にいて、女将さんが店の切り盛りをしている。今や貴重な家庭的な雰囲気の味わえる店である。
秋川街道の荻原橋の手前、八王子駅からも西八王子駅からも遠く、市役所が近くにあるものの、どちらかというと住宅地という場所にある。八王子に『鮨忠』は少なくないので町名から「元本郷さん」と呼ばれている。
連れと夕暮れ時に行くと辺りは薄暗く、その一角に唯一の明かりがともっている。そこは、のれんの下がった昔ながらの平屋の店。入ると右手に漬け場、そしてカウンター、左手にテーブルがある。カウンターは4〜5席ほど、テーブルは3つで10人も入ると満杯という小体な店である。
カウンターは地元衆で満杯だった。奥のテーブルに着く。オヤジさんはバイクでお散歩中。若旦那と女将さんが、「よく来た、よく来た」と迎えてくれる。
まずはおつまみ。若が「明日は休みだからさ」と断りをいいながら出してくれた刺身がなかなか新鮮でうまい。赤ゆずこしょうがきいたホヤがいい。バチの赤身に味がある。隅っこにあるのが薄焼き玉子。八王子にある「鮨忠」グループの特徴は卵焼きが薄焼きだということ。
若といつもながらのバカ話に花が咲く。女将さんがカウンターとのしきりに手を置き、「後ろ」と言うので振り返るとひまわりの情熱的な絵がかかっている。どうやら女将さんの自信作のようである。
家庭的な雰囲気で、サービスに過不足はない。連れといろいろ話して、長居しても、なにも干渉されないのがこれまたいい。
空腹だったので「揚げもの」をお願いするとレンコンにイカリング、マアジ、エビのフライが出てきた。独特の衣で、なかなかいけますねー。
〆の握りは大きさがほどよく、ネタのバランスがいい。なかでも赤貝と赤身は見事な味。見た目も味も高得点の味である。休み前でなければ「新子」や「煮いか」などもあったはず。元本郷『鮨忠』さんの味を堪能できたとまでは言えそうにないが、実に満足である。
近場にあれば毎日でも来たくなる店なのだが、ボクの家からは実に遠い。これこそが唯一残念な点である。
鮨忠 第三支店 八王子市元本郷町
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