近年の市場に多い、屋上の店舗。この屋上に食堂を持ってくるということを考えたバカ者はだれだろう。まことに頭の悪い愚か者に違いない。このような市場知らずが新しい市場作りをするから、地方の市場が衰退するのだ。この愚か者(ほとんど犯罪者に近い)をなんとかしないと市場に未来はない。
なんて考えながら階段を上る。山形市公設地方市場には2店舗の食堂があるが、片や日替わりの簡単な単品のみの店、片や昔ながらの食堂である。当然、後者に足が向く。
今時の市場の食堂で、まことに造りは悪いが、なかでやっているご夫婦は実に親切で温かい感じ。初めて来たという緊張感はまったくない。食堂に来ているご常連さんたちも、気さくで親切であった。「ここはすしがいいんだ」などと自動販売機の前で迷っていたら声をかけてくれる。
品書きは定食500円~1000円で、500、550、600、680、780、880、1000とやたらに細かく刻んでいる。そして名物だというすしは握りの「並ずし」、「特中ずし」、「特上ずし」、「大盛すし」でこれも細かい。ほかには鉄火丼に海鮮丼もある。「かつ丼」も「かつ煮」もあり、ラーメン、みそラーメンに塩ラーメン、ニラモヤシラーメンもある。
これぞ市場の食堂。この多彩さが市場めしの醍醐味なのだ。
おすすめを聞くとすしであるという。朝なので気持ち的には定食にしたかったところを「並(ずし)600円でいいんだ」というのでこれに従う。少しおもしろみに欠けるので、店内にあった「麦きり」を半分にしてもらい(200円)追加した。
この握り「並」にはメンマやつぼ漬け、みそ汁もついて実に豪華である。しかもすし飯の味がよく、種もなかなかのものを使っている。これなら山形の市場で「朝ずし」もあり、かもしれない。
追加した「麦きり」は、要するに細めののどごしのいいうどん(たぶん乾麺)で、つゆは甘くもなく辛すぎるでもない。いい味である。ちなみに「麦きり」は庄内地方のもの。ここ山形市をはじめとする村山地方はそば文化圏なので、うどん・そうめんなどの小麦粉系はあまり食べないはず。ひょっとしたらご夫婦のどちらかが庄内出身なのかも知れない。
次回は定食にする、と決めて店を後にする。
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京都中央市場『権八』のきぬ笠丼