管理人: 2015年8月アーカイブ

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 京都中央市場に隣接して食料品関連の店が並ぶが、その一角にある。謂わば京都中央卸売市場内の店といった方がいいだろう。カウンターだけの小さな店で現在の店主は、先代のときに就職でこの店に来て、店を受け継いだようである。

 品書きはうどん、丼ものだけ。ラーメンなどの中華系がなく、和のだしを使うものだけなのも特徴だろう。

 お客は市場関係者と仕入れにくる業者、料理人の方達。寄るのはいつも朝方だが、未だに一般客は見ていない。


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「きぬ笠丼」は油揚げとねぎを煮て卵でとじたもの。大阪では「きつね丼」というのだと思うが、京都の「きつね丼」は「きぬ笠丼」の卵でとじていないものではないか?

 京都、大阪のうどん・そば、丼ものの呼び名は複雑で、早いところ言葉の整理をしないといけないと考えている。

 昔ながらのうどん屋「権八」のいいところは、だしがうまいこと。このだしで煮た油揚げとねぎが実にうまい。卵のとじ加減も絶妙である。ご飯が美味しいのもあっていっきにかき込んだあげくが名残惜しい思いに駆られた。この店に来たらうどんに限ると思っていたのは大間違いであった。

 今回は「ざるうどん」とセットにしたが、この満足度の大きさは他店では味わえないものだろう。


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 近年の市場に多い、屋上の店舗。この屋上に食堂を持ってくるということを考えたバカ者はだれだろう。まことに頭の悪い愚か者に違いない。このような市場知らずが新しい市場作りをするから、地方の市場が衰退するのだ。この愚か者(ほとんど犯罪者に近い)をなんとかしないと市場に未来はない。

 なんて考えながら階段を上る。山形市公設地方市場には2店舗の食堂があるが、片や日替わりの簡単な単品のみの店、片や昔ながらの食堂である。当然、後者に足が向く。

 今時の市場の食堂で、まことに造りは悪いが、なかでやっているご夫婦は実に親切で温かい感じ。初めて来たという緊張感はまったくない。食堂に来ているご常連さんたちも、気さくで親切であった。「ここはすしがいいんだ」などと自動販売機の前で迷っていたら声をかけてくれる。

 品書きは定食500円~1000円で、500、550、600、680、780、880、1000とやたらに細かく刻んでいる。そして名物だというすしは握りの「並ずし」、「特中ずし」、「特上ずし」、「大盛すし」でこれも細かい。ほかには鉄火丼に海鮮丼もある。「かつ丼」も「かつ煮」もあり、ラーメン、みそラーメンに塩ラーメン、ニラモヤシラーメンもある。

 これぞ市場の食堂。この多彩さが市場めしの醍醐味なのだ。


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 おすすめを聞くとすしであるという。朝なので気持ち的には定食にしたかったところを「並(ずし)600円でいいんだ」というのでこれに従う。少しおもしろみに欠けるので、店内にあった「麦きり」を半分にしてもらい(200円)追加した。

 この握り「並」にはメンマやつぼ漬け、みそ汁もついて実に豪華である。しかもすし飯の味がよく、種もなかなかのものを使っている。これなら山形の市場で「朝ずし」もあり、かもしれない。

 追加した「麦きり」は、要するに細めののどごしのいいうどん(たぶん乾麺)で、つゆは甘くもなく辛すぎるでもない。いい味である。ちなみに「麦きり」は庄内地方のもの。ここ山形市をはじめとする村山地方はそば文化圏なので、うどん・そうめんなどの小麦粉系はあまり食べないはず。ひょっとしたらご夫婦のどちらかが庄内出身なのかも知れない。

 次回は定食にする、と決めて店を後にする。


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 山形県酒田市酒田漁港横にあるのが「酒田水産物協同組合」という仲卸さんなどが入るこぢんまりした建物。この建物の手前の端にある。椅子はあるが、店内で食べられるのは2人か3人といった狭さで、昔はさぞ美しかったであろうオカミサンがやっている。このオカミサンが実にいい。

 品書きはうどんとそばのみ。ここに肉、卵、天ぷらなどが入る。いちばん高いものが全部入り420円である。

 このオカミサンが実に優しくて親切。食べに来る市場人すべての好みを知り、健康面にも気を配っているという。

 普通、お冷や(水)が出てくるものだが、ここでは水出しの漢方のキハダ(黄柏)、というのもお客の健康面に気を配っている証拠。

 小さな店ではあるが、全国にある市場のなかでも屈指の店だ。長く続けて欲しいし、後継者が出来るといいな、と思う。


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 ほどなく出てきたものは澄んだ汁に典型的な立ち食い系のゆでそば、上に、下ゆでした豚肉がのっているのが庄内らしくていい。なんといっても庄内は豚肉文化圏なのである。

 ここに香り高い春菊の天ぷらなどがのっていて420円なのに、実にゴージャスに思える。

 さて、この店のそばの特長というと、やはり汁のうまさだろう。そばと一緒にすするとオカミサンの料理の腕がわかってくる。

 そばもそこそこにいいものを使っているし、豚肉から溶け出してくるエキスもいい感じである。

 次回はぜひとも、うどんとそば1ぱいずつ食べたいものである。


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 鶴岡市でももっとも賑やかな町である本町の路地にある。サンプルを飾ったショーケースが入り口脇にある昔ながらの食堂。

 カレー、オムライス、丼物、中華そば、そば、うどん、焼きそばはもちろんのこと、ソフトクリーム、ソーダなどなんでもありなことからも典型的な「食堂」であることがわかる。

 老夫婦ふたりだけのお店で、古くから町内で人気の店であったようだ。

 近くにある居酒屋『いな舟』の女将は子供の頃、この店のオムライスが好きであったという。


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 ご主人におすすめを聞くと、すぐに帰ってきた返事が「冷やしワンタンメン」であった。忘れてしまいそうなので、あえてここで書くが、庄内地方の料理店では「麺」ではなく、「メン」と表記する。

 山形県山形市にある『栄屋本店』が発祥とされる「冷やしラーメン」は有名だが、そこには必ずワンタンメンが存在する。山形県には、昭和初期から温かい普通のラーメンがあって、戦後これにワンタンメンが加わる。山形市など村山地方の夏はすさまじく暑いので、当たり前だが温かいラーメンなどは売れない。それで『栄屋本店』では「冷やし」て出す工夫をして「冷やしラーメン(ワンタンメン)」を産み出した。

 とすると昭和27年に『栄屋本店』で「冷やしラーメン」が誕生した後に庄内地方にも伝播して、『天花食堂』など庄内地方の中華料理店の品書きにも加わった、と考えるといいのだろうか。『栄屋本店』が昔も今も「食堂」であることにも留意しておきたい。


 さて、待つこと暫し。それは、例えば都内の中華料理店で中華丼を入れるたぐいの少し深い皿で出てきた。ストレート麺とワンタンの上にメンマ、トマト、海苔を皿にしてからし、そして山形県の「冷やしラーメン」の必須の具であるキュウリがのっている。

 一見、冷やし中華のようでいて、よく見るとメンの半分くらいまでが清んだスープで満たされている。まずはとすすったスープがあまりにもうまいのに驚いた。山形市のものと同じように醸造酢の酸味を感じるが、こちらの方がおだやかである。魚介系スープの味も奥深いように思える。大振りのトマトを口に入れてもスープの味がだれないのもすごい。その上、ワンタンがとても軟らかく、するりと口に入り、舌の上でふわふわりんととろけて消える。

 この一皿を5分で一気食い。午後長けていなければ、もう一品いけたかも知れない。

 実にうまかった。山形市の名店の味の印象が、この一杯であっけなく消えてしまった。

[天花食堂 山形県鶴岡市本町]


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