9月17日のこと

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 深夜2時過ぎに八王子インターにのる。道は空いていて、ややスピードを上げて2時間ほどで松本インターを降りる。そこから国道158号線で野麦越え。その曲がりくねった坂道の長い道のり、昔の人は歩いて超えたんだなと思うと映画『ああ野麦峠』の最後のシーンが思い出されるから不思議。
 丹生川沿いに高山の街に入ったのが6時過ぎ。とりあえず高山陣屋にクルマを止める。陣屋の広場ではすでに朝市の店開きが始まっていて、陣屋前の食堂から大きな土瓶を持ってきた白衣(飲食店用です)の女性に駐車場所を聞く。すると「この時間ならここに(陣屋前)とめて見ても大丈夫でしょう」という、またこの人の出てきた食堂がなんだか魅力的、まだ半分しか下がっていない暖簾の奥で「そば、うどん」でもすすりたくなった。「店は開いているのですか?」と聞くと「もう少しであけますから」と慌ただしく朝市の店に走り、土瓶を手渡している。後で朝市を巡ると、どの店にもこの大振りの土瓶が置かれている。
ので開店したばかりの朝市を簡単に見て回る。そのほんの数分後に家人の手には2袋の赤かぶの漬け物がぶら下がっていて、「なぜ高山に来たのか?」、その意味がわかったような気がする。

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画像は陣屋前朝市。売っているものもほとんど同じだけれど、宮川朝市よりもこっちの方がよかった

 食料品を買うときにはいつも少し冷めた目で見るのだが、家人はまったくの観光客に変身してしまっている。これは誰にも止められない。家人と子供とは離れて店を見て回る。どこまでも生活人であるので自宅の米びつが空なので天日乾燥であると言う、うるち米1.5キロ600円を買う。5キロに換算すると2000円で、生産者としては充分利潤があるだろうけど、観光地とは思えぬ良心的な値段かも? ただ食べてみなければ評価できないが。また「しまささげ」という黒い染みのような縞の入ったインゲンを見つけてこれも購入する。
 6時半過ぎにクルマを「宮川朝市」のそばの市営弥生橋駐車場に止める。市営駐車場は市内各所にあり24時間いつでも利用できる。1時間300円は値段として妥当だろう。
 宮川にそって続く朝市は思ったよりも規模が小さい。それよりも目に付くのはその反対側にある大小のお土産店である。その多彩なこと。未だに「山くらげ」を山菜として売っているというのに驚きを感じながらも、その水準の高さというか、観光客の心理を読みきった品揃えにビックリ仰天する。
 朝市の品揃えはこの日見る限りでは陣屋前朝市の方がいい。ただ、端っこに方にぽつんと「みたらし団子」の屋台があり、この団子が1本60円。そのうまそうなしょうゆの香りで食べたらいい味である。どんどん獲物を求めて歩く家族は団子の味なんかどうでもいいようで、「みたらし団子」なんてそこら中あるんだから我慢しなさいと追加したいと懇願してももどってくれない。

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宮川朝市の端っこの「みたらし団子」の屋台。ここの団子がうまかったな

 宮川朝市から川沿いに歩き、もう一度陣屋前にもどる。ここで家人にお願いして市場前の『細江屋』で朝食をとる。朝市の店にお茶を配達しているところから比較的観光地的な店ではないとみて入ったのが半分は正解であった。
 高山ならではの落ち着いた町屋に落ち着いた店内。決してとってつけたような民芸調ではない。品書きも、麺類が500〜700円、定食も「ほうばみそ定食」は確か1500円である以外は安くもないが許せる値段である。
 店に入ってテーブル席を避けて、小あがりに落ち着く。品書きを見てすぐに目に付いたのが「煮いか」である。きっと甘辛く煮つけたものだろうと思って聞くと、「イカをゆでたものです」という。これが軟らかくゆであがったスルメイカ(?)であり、しょうがが添えてある。
 朝定食800円、煮いか、家人は「飛騨牛の肉うどん」700円、太郎は「てんぷらうどん」700円、姫様が「ざるそば」。これで支払は3000円と少し。ただゆでただけの「煮いか」が予想を超えてうまかったのをはじめ、朝定食の煮物も、肉うどんも、そしてつゆの味わいも上々で、なかなか満足至極な朝食となった。
 2回目の陣屋前朝市でまた荷物が重くなり、駐車場にもどる。ここで30分ほど仮眠。家族はその間も街を散策。目覚めたばかりの重苦しい頭を抱えて弥生橋を渡り、本町通にいる家族と合流。家族がいたのが本町通中ほどにあったスーパー『駿河屋』。まだ9時前なのに開店しているのだ。そこで「アラ」を見つけて太郎は驚喜している。この「アラ」、西日本でよく見かける、海苔の佃煮。店内に入り、魚売り場を見ると「塩いか(丸いか)」があるのは当然としても、その脇に「煮いか」としてゆでたスルメイカ(?)が置かれている。店の方に聞くと高山でよく食べられる日常のお総菜であるという。

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高山でも古川でもスーパーや魚屋にはかならず「塩いか」が置いてあった

 もう一度、陣屋に行き、陣屋内を見学する。飛騨高山は豊臣家の武将である金森可重が築き、金森氏転封後天領となり明治開花を向かえている。すなわち、高山は幕僚である代官の治める地であったのだ。陣屋の建物はなかなか典雅なものであり、やや女性的な趣がある。これは「姫宋和」と言われた繊細な金森宋和の少なからぬ影響を次いでいるのではないか。
 陣屋から橋を渡ると、そこは人気観光スポットの上三之町である。道を行き交うのは大型観光バス、そして関西や東京のナンバープレートをつけたクルマが道に迷ってのろのろ運転をしている。
 それを避けて「久寿玉」で有名な『平瀬酒造』に行く。ここで「上撰」850円を1本。上三之町に入る。その間、地獄のような時を過ごす。ここは町並みこそ古く、そして美しいものの一歩店内に入るや、そこは原宿の竹下通りとなんら変わらない。そういえば高山市全体が観光地化している。手焼きせんべいの体験、膨大な小物を広い店舗隙間なく壁までも埋め尽くした有名店を経てやっと駐車場に向かう。

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上三之町で見つけたミノカサゴの新種?

 そこで「豊川」という酒の看板のある『田邊酒造』を見つける。ここに「冷やおろし」(720ミリリットル 1500円)があって、これを1本。また裏通りにいたって普通の食料品店があり、ここでなかなかつやのいい蒸しうどん4玉とかき揚げ6枚。これで530円。市営弥生駐車場にもどって高山を後にする。ちなみに駐車代金は1200円。観光で潤っている高山市、もっと安くていいんじゃないの。
 11時半に高山出て飛騨古川に着いたのが正午過ぎ。市役所前の有料駐車場1時間100円にクルマを止めてテレビドラマで有名になったという和蝋燭の店を目差す。『るるぶ』にのっていたコロッケの店、トンボ玉に小物を売る店、アンチークショップ、とりとめもなく町歩きをする。やはりここも明らかに町全体が観光地を目差しているのかも知れない。正午を過ぎて空腹になりできればありきたりな昼食をとりたいと飲食店を探すが、いかにも観光地的な店というのはあっても、うまそうな店は本日休業なのである。土曜日なのにどうしてだろうと思っていたら、どうやら本日運動会が開かれているからのようだ。
 名物のコロッケ、『蒲酒造店』で「白真弓」を購入して古川を後にする。
 国道41号線から松本に向かう県道に入ったのが午後2時。なんだかんだと8時間も歩きずめである。いかに買い物に夢中になってもこれが限度というもの。県道89号から見る飛騨の景色は黄金色の稲穂でなんだか明々としている。刈り取りが終わってはさ掛けされた稲もある。また国道158号沿いには「松茸」の看板。飛騨盆地にはいち早く秋が到来している。


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コメント(1)

「ミノカサゴの新種?」っていうの笑えました(^^)

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このページは、管理人が2005年9月18日 10:00に書いたブログ記事です。

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