2005年11月23日アーカイブ

 大阪の船場は古くから商業の盛んな土地柄、今でも商社などが軒を並べる。さて、その昔の船場の大店といえば、その奥にきっと美しすぎる「こいさん」がいるのだ、というと谷崎潤一郎の『細雪』の世界が見えてくる。この大店、奥には贅を尽くすが、店では始末に始末を徹底している。すなわちワラ屑1本、粉になった炭(塩原多助の世界)すらも無駄には捨てないのだ。
 その始末は食べ物にも及ぶ。食卓に並ぶ、サバ。ここから出る中骨、粗などに一塩、これを取って置いておく。これを出しとして汁を仕立てるのが船場汁なのだ。具はもっとも安くて、その上、食ってはうまい大根である。こんなうまいものを、最低限の材料で作り出すのだから大阪は凄いのだ。
 作り方はいたって簡単である。魚はサバに限らない。今回はヒラソウダガツオを使ったが、マアジ、ゴマサバ、サワラ、はまち(関西のでのブリの幼魚)、どちらかというと回遊する背の青い魚が向いている。使うのはアラや中骨というのが本格的、絶対にいい部分は使ってはいけない。それでは偽物となってしまう。これにかなり強く塩を振っておく、ときに干すと出しに濃くがでる。この塩味の聞いたアラを水から入れて火をつける。ぐらぐら沸いてきたら灰汁をとりながら軽く湯がいた大根を入れて酒、味加減をみて塩を足す。このときアラをそのまま入れて置いてもいいし、取りだしてもいい。今回は取りだしている。これで出来上がり。きっと本来は始めから大根もアラも入れて、酒も使わないのだろうが、これでは今時寂しすぎる。
 好みでコショウを一振りすると味わいが増す。

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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 晴れ、寒い。多摩の山岳地帯では降雪をみたという。
 起きあがると、まだ外は真っ暗である。まだテレビには早く、ラジオをつける。
 朝食はサンマのみりん干し、ウインナーとカリフラワー・ニンジンのサラダ、生卵、納豆、もずく、なめこのみそ汁、ご飯。相馬市山形屋の醤油がいい。
 ブログをアップして外出する。

 八王子魚市場、ダイちゃんのところにマイワシ、マサバ、いなだ(ブリの幼魚)。

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全部銚子からの荷

 坂本君のところには見事なアラ。値段を聞きたいと思ったが担当者はどこにいたのやら。『源七』には大間から釣りマグロ(クロマグロ)。値段は聞きたくないが味見したいなと、若旦那の顔をみてやめる。
 八王子綜合卸売センター、高野水産に大分の丸昌水産から3.1キロのハマフエフキ。これがキロ/1200円しかしない。知りあいの料理屋さんにお願いして半分こ。『市場寿司 たか』に持ち込む。また福島県相馬市からアカドンコ。なかに色合いの違うのがいて、ボウズカジカではと思い購入。日本海から、赤ばい(neptuneaとして比較するにやはりエゾボラモドキとなる)。パッチがないのだけれど、呼び名から、たぶん兵庫か福井県産だと思われる。
『市場寿司 たか』でハマフエフキの握りを撮影。砂ずりと背を握ってもらったが、抜群にうまい。
 帰途、旗野農園などを回る。ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどがここでは盛り。ふと気になって浅川沿いにあるクルミを探すが実はひとつも見つけられない。今年はもう拾われてしまった後であるようだ。川風になびくススキの白い穂が美しい。

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縄文期を通して関東平野はもっとも暮らしやすい環境にあった。その食生活の基本となったのがクルミやクリ、クヌギやシイなどの木の実だ。クルミの木は多摩川流域ではもっとも普通に見られるもの

 帰宅後、やはりアカドンコであるのを確認して撮影。解体すると腹の中からワラスボ属のような魚を発見。これも撮影する。その後、たまりにたまった画像を整理。結局保存は出来ない。寿司図鑑を作成。今日からは『栄寿司』で1ページ作る。
 午後となり慌ただしく外出。

 中央線で眠りに落ちそうになったときに目の前に不気味な娘がいるのを発見。この娘、左手に単行本、右手に大きなカフェオレのカップ、スナックの箱を持っている。赤く大きなストライプのスカート、グリーンが入ったアーガイルのセーター、ベレー帽に黒いマフラー。どれひとつ変なものではないのであるが、本人自身の容姿も含めて、総てがチグハグなのだ。似合っていないのはいいとしてもスナックがポロポロと足元に落ちている。カフェオレもときどきこぼれている。そして左手の単行本は江國香織である。眠りに落ちながらどうして、これを不気味に感じるのか考えていたら、いつのまにか熟睡してしまって、目覚めたら正面に神田川の木々の紅葉が見える。

 お茶の水には7時過ぎまで。檀一雄のエッセイを読みたいので東京駅に出て始発で帰る。

 帰り着いて近所の『開花』で3合6勺の燗酒、カキの入った湯豆腐にポテトサラダ。これで2500円。

 帰宅は10時前。風呂から上がり、11時半まで画像の整理、保存。そしてダウン。


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 築地など東京では「なめた」と呼ばれているのがババガレイである。主に北海道や三陸から入荷してくるのだけれど、このカレイがくると冬到来を感じないではいられない。
 普通、カレイは菱形状であるがこのカレイは楕円形の鈍い形をしている。そして目のある表はだんだらで黒くカレイの色合い、裏側は漆喰のような白、その皮がだぶついてやや薄汚れて見えるので「婆がれい」なのだと思う。大きくなる魚で2キロ、3キロなんていうのが珍しくない。ただ、どうにも見た目では食指は動かない。
 ところがこのカレイ、東京では高級魚のひとつである。現在にあってキロあたり2000円を超えてしまうと、なかなかスーパーなどに並ぶことはなく、主に小売りではデパートや特種な魚屋に行くことになるが、このきわどいラインを当然のごとく超えて取り引きされている。また、それ以上に驚くのは岩手県や宮城県人のこの魚への熱狂振りである。今はなくなった釜石の橋上市場では、魚屋のいちばん目立つところに置かれて5000円、6000円と値がついている。それに、数人のおばちゃんがとりついて熱心に選んでいるのであるから、ここではこの魚が主役なのだ。岩手では年取り魚としても使われる。
 それでは、どのようにして食べられるかというと、煮つけなのだ。刺身でも、塩焼きでもなく煮つけというのが東北ならではだろう。表面のぬめりとウロコを取り、適当な大きさに切り分ける。真子が入っているので切るときに注意が必要である。それをやや水を多めにした煮汁で炊きあげるのだ。熱を通すとただでさえ分厚く白い身がぶわっと膨れあがるように感じられる。そして皮がしとっとしてくる。これを煮汁ごとむさぼるように食うのだ。絹のような滑らかな繊維質の身が煮汁をすくい上げる。その身と煮汁に濃厚に感じられるのは出しである。ババガレイの旨味が出しとなって煮汁にあり、そして身の方も旨味はありすぎるほどにあるのだ。たぶん、この煮つけを食べると、「煮つけ」というものの価値観が変わるはずだ。
 今年の年取り魚は「なめたがれい」にするつもりだ。

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市場魚貝類図鑑のババガレイのページへは
http://www.zukan-bouz.com/karei/karei02/babagarei.html


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