北千住駅を出ると、前回なぜか目に入らなかった大判焼きらしきものを売る魅力的な店を見つける。屋号は『あちこちや』。この店、なんだか風情というか異彩を放っている。お土産はここで買って帰ろうと決めてマルイ方向に歩く。
右にマルイがあって、隣が高層ビル。まさかマンションかな? と今時マンションに住む人の気持ちと、高所恐怖症のせいだろうか、思わず小走りになる。どうして高いところに住んでいて悪夢を見ないのか、佃島などのマンション群を見ていると、想像するだけで●シッコちびりそうだ。その上、今日の国会の化け物たちの存在。
一見、21世紀の街そのものの北千住。違っているのは歩く人の雰囲気。メチャクチャに怖ろしげな女子高生、道の脇の公園で静かに座っている男性、そして後先になりチョチョと草履の音を立てて歩く老人。そして元気いっぱいのおばちゃんが多いのも北千住の特徴か? またやたらに路地が多くて、ちばてつやの石松や、ちばあきおのキャプテンがグローブを持って走ってきそうな雰囲気がある。
広い通りに出たので左折、路地を見つけてまた左折。この辺りは古い仕舞た屋が多く、なんだか東京だとは思えない。民家ばかりの路地からやっと商店街に出た。そこで見つけたのが『増英かまぼこ店』。店の横でおでんを売っているのが惹かれる。
残念ながら定休日だった、だんご屋、タイムスリップしたような洋品店
これを右折。朝ご飯から何も食べていないのでペコペコ。そんなところに不思議な店を発見。『美富士』という店で白地暖簾に赤い字で「中華 洋食」とある。そして「カレーライス」の旗。オヤジはこんなわけのわからん昔ながらの食堂に惹かれてしまうのだ。
がらりと開けると、いたって普通の食堂。考えてみると食堂らしい食堂は少なくなってしまって、これも貴重なのだ。あまりに多いメニューとやや値段が高めなのでカレーライスを注文する。そして出てきたのが粉っぽい家庭風のカレー。これにソースをかけて懐かしくいただきました。この商店街は先には何もなさそうなので駅前の通りにもどり。大通りを渡って佃煮屋の『鮒秋』で贈答用の佃煮の詰め合わせを購入。『トウフショップ むさしや』で木綿豆腐2丁。電車に乗るのでというとしっかり袋を2重にしてくれた。「ありがとう、おかみさん」。
4時を過ぎて、オヤジがかねがね行ってみたいと思っていた秘密の居酒屋を目差す。店名は伏せるが川本三郎ファンなら知らぬ人はいないというところ。はやる気持ちを抑えて店の前に立つと暖簾が出ていない。しかも新築したのか店が新しいのだ。悲しい気持ちをいっぱいにして北千住駅にもどるのだ。
このまま帰るなんてオヤジ魂が赦してくれようか? 串カツの『天七』でレバーと若鶏、酎ハイ1と酒1で潔く地下鉄に下りる。と、忘れ物。『あちこちや』までもどり、自慢焼き5つをお土産に買う。この店、焼きそばやアイスクリームもあるよう。
しかし北千住には惹かれるところ多し。ここはオヤジのアルカディア、桃源郷ではないだろうか? 現世にはもどりたくない。そんな気持ちを抑えつつ、味気ない我が家に帰ってしまうのだった。
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鮟鱇はアンコウではない