2006年2月 5日アーカイブ

 土手の上に立って風の冷たさにおののく。身を切るような寒さだ。風に辟易して公園でてんでに散らばる人たちの中に混ざっていると菊地則雄先生が到来しました。前回のように大きな荷物を持ち、ゆったりとした歩幅で歩いてくる。この方、見たところ中国の大人(たいじん)の風格があるなとふと感じる。
 旧交をあたためるといってもほんの判月前に会ったばかり。雑談をして、持ってきていたアサクサノリの糸状体を見せてもらう。黒い綿くずのようにしか見えないが、これも実物を見ることが出来るだけでも貴重である。
 公園に集まる人が増えてきて、そのなかにテレビカメラやマイクを持つ集団がいる。テレビ朝日、NHK 、フジテレビにケーブルテレビ。「なんがか大事になってきましたね」なんて声が聞こえる。そんな中で意外に目立たなかったのが俳優の中本賢さん。娘が盛んに「あの人と写真が撮りたい」というのでお願いすると、かなり照れた様子で快く応じてくれた。
 バラバラに散っていた人たちを、きんのり丸さんが集める。探索会の前の簡単な自己紹介や、菊地先生が作成した資料を受け取り、土手を超える。土手を超えるとき工藤孝浩さんと奥さんから声をかけていただく。実を言うと少々閉鎖的な性格なのでつきあいが狭いところで工藤さんのことを知らなかった。この人、もの凄く面白い。きっと話をすると一日が短くて困ってしまいそうだ。
 この会には甲殻類のNob君や尻高鰤さん、鮟鱇さんも来ている。Nob君はご家族で来ていてお子さんが大きいのでビックリした。またチラリと見せてもらった甲殻類の自家製の本もなんだか優れものである気がする。鮟鱇さん、工藤さんと土手から南に向かって下っていく。工藤さんの手には目の細かな網。これ羨ましいな。これで干潟を駆けめぐっていっぱい生き物をすくいたい。考えてみると昨日からの腹痛はまだ続いているのに干潟を歩く内に緩和されてきている。

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報道の方達もこのぬかるみには難渋していたようだ

 土手を下りると干潟が続き、それが広く張り出したり、またほとんど岸辺まで川が迫り、底が砂地になっていたりする。その干潟から土手にかけて葦原が続く。この葦も干潟の形成、また干潟が安定しているためになくてはならぬものだろう。
 この葦の茎にアサクサノリが付いているはずだ。それは2年前の同じ2月。その日は今日と違って暖かく長閑な日であった。対岸の大田区天空橋から海老取川、多摩川に出てアサクサノリを探したのだ。菊地先生やきんのり丸さんに着いていくだけだったが、少しだけ残った葦原に菊地先生がアサクサノリを見つけたときのことは今でも思い出す。それは葦の茎に着く赤黒いビニール片にしか見えないもの。そのときはまだ、それがアマノリの一種と言うことしかわからなかったが、以後、なんどか話す内に、それがアサクサノリであることがうすうすわかってきていた。
 ちょうどその場所が対岸に見えるときに、アサクサノリを見つけたと言う声が聞こえた。そして葦原に駆けつけると、まさしくあの赤黒いビニール片のようなノリがへばりついている。周辺を見回すとそこここにその黒いノリが見える。
 菊地先生に「やっぱりちょうど対岸にありましたね」と言うと、
「いやいや、もっと下流の方が多いんです。もっと下っていきましょう」
 と、足早にぬかるむ干潟を下っていく。
 干潟を歩くのはなかなか重労働である。病み上がりのせいもあるが、なんだか疲れを感じ始めた。
 干潟はふくらみ、またえぐれて、またふくらむ。その下流のふくらみで流れていたアサクサノリを見つけた人がいる。その間に鮟鱇さんが見つけたのがシモフリシマハゼ。ちなみにこれを同定したのは工藤さん。以後、彼の類い希な同定能力に驚嘆させられる。他にはケフサイソガニ、ヨコエビの仲間が見つかるだけ。今日は体感温度は明らかに氷点下。また水温もかなり下がっているようで生き物の活性は低い。
 その干潟のふくらみには無数のアサクサノリが見つけられる。これは、出来ることならなんらかの方法で保護が必要となるだろう。ただ発見者の一人ですからと断りを入れて一口食べてみる。面白いのは市販の生スサビノリはまず、最初にノリの風味が来るのに対し、こちらは甘味が最初に来る。これがグルタミン酸や甘味成分のアミノ酸が多いのではないか?

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これがアサクサノリ。干潮時はあしに張り付いていてビニール片のようにしか見えない

 公園の土手から2キロ近く下ったろうか、ここで干潟の散策は終了となる。こんどは足早に上流に向かって歩くと、公園土手よりも上流で激しく波打ち際で網を押している人影が見える。あれはどう見ても工藤夫婦だろう。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 前夜の腹痛を伴う風邪、そして子供のお多福風邪とダブル攻撃にあいながらも市場に出かけていった。そして帰宅が9時前である。メール・掲示板のチェックだけを済ませて、少しテレビを見て休む。
 外出は10時半。今回は子供2人を連れての「多摩川河口〜アマノリあるある探検隊」への参加。問題は川崎市の小島新田という場所である。小島新田駅のある京浜急行川崎大師線に乗るにはとにかく川崎まで出なければならない。東京駅まで出て品川から京浜急行川崎というのもあるし、立川駅から南武線でゆるゆるとJR川崎駅まで出るというのもあり。この南武線というのがどれくらい時間がかかるのか未知数なのだ。それでも距離を考えて南武線を利用する。

 立川駅から南部線に乗り換える。南武線に乗るのは中央線が人身事故などのために止まり、京王線に振り替えるときだけ。本来の利用でこれに乗るのは31年振りとなる。

 ホームで待つことほんの2〜3分。乗り込んだのはなんの変哲もないJRの車両。これが30年前には貨物列車のような薄汚れたレンガ色の箱形列車であって、扉付近の空間には1本の柱が立っていた。また後年、分倍河原駅、府中本町駅あたりで山手線や総武線で使われていた黄色や緑の車両を見かけたこともあった。
 西国立、山口瞳の小説に出てくる谷保駅、登戸。それから武蔵新城は下りたことがある。武蔵小杉にも下りたことがあるな、なんてウトウトしながら駅名を聞く。武蔵新城駅は高架となっているが、昔は鄙びた駅であり、田舎の近所に住んでいたお兄さんが新婚生活をここで営んでいて、その住宅を訪ねたんだったな。
 立川駅を11時6分、川崎駅には正午に着いた。南武線に急行でもあれば半分で着くだろう。
 川崎駅はやたらに天井が高く、硬質な雰囲気が冷え冷えした風を余計冷たくしている。この駅を設計施工計画したやつは明らかに人のぬくもりや情緒というものを知らない悲しい哀れな人間に違いない。そんなダメ人間に作られたダメダメな駅を利用する人のなんと悲しいことか?
 改札を出たもののJR川崎駅周辺は無味乾燥な街並みが広がっている。それを京浜急行川崎駅に向かうとやや人の暮らしというか、猥雑さが感じられてほっとする。時刻は12時20分。初めての駅なので目的地までの料金はわかったものの、所要時間、時刻表などの表示場所がどうしても見つからない。仕方なく駅員に聞くと「10分くらい」と言って時刻表を邪険に渡された。近年、駅員の接客は改善されていると思っていたが、久しぶりに不愉快な思いをさせられた。中学生の娘すら「信じられないくらい感じ悪い」と言う。京浜急行の社長さんもっと社員教育をしっかりやりな。
 駅横の東急ストアでお握りと飲み物を買って大師線に乗り込む。車両にニコニコ顔のおじいさんやお婆さんが多いのは川崎大師に向かうのだろう。このニコニコグループには「どこで下りるの」とか「お姉ちゃん、中学生」とか「お父さんと大師へ行くの」とかやたらに聞かれたが、決して嫌な気分にはならないし、娘なども「優しいお婆さんだよね」と笑っている。案の定、川崎大師駅でほとんどのお客が下りて、後は田舎のローカル列車に乗っているかのごとく長閑である。ニコニコグループの中で一人だけ残ってしまった足の悪いお婆さんは、「どこまで行くの」となんども聞いてくる。「小島新田です」となんどか答えてもまた聞いてくるのだけれど、産業道路駅で下りるときに「お気をつけてね」と言ってくれて、これがとても優しげでありがたい気分となった。
 しかしこの、「産業道路」という駅名はすごく直裁ではないだろうか。きっと川崎大師から先はそんな工業的な土地柄だったんだろうけど、車窓から見る限り今では住宅も多く見受ける。それなのに駅名「産業道路」をそのまま使う、なんだかこの辺も長閑さの現れかな?

 京浜急行小島新田駅は小さな小さな駅。下りると自転車置き場の向こうに金萬夫婦、ほか10人前後の人が手立っている。挨拶も早々に河口干潟に近い下殿町児童公園に移動する。
 ここで子供達とおむすびを食べていると、寒空に日向に出てきたばかりといった風情の猫たちがミャーと泣いている。優しいオジサンなのでシャケを少し分けてやる。

 公園から土手を上がると多摩川河口部が大きく広がり、対岸には一昨年行った海老取川が見える。


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 トイレに行きたくて起きあがったのが6時前。お腹が痛みは続いているが空腹感がある。もう一度横になり7時過ぎに市場に向かう。
 八王子魚市場、場内は人影多し。ただし活気があるというのではない。仕出し屋さんが不祝儀の焼き魚を探している。青森から、ごっこ(ホテイウオ)、長崎からいなだ(ブリの幼魚)。宮城県石巻からは見事と言うしかない大振りのニシン。幾らなんだろうと坂本ちゃんを探すが見つからない。富山県新湊から大きなスルメイカ。今時、木箱というのがいいな。新湊市「正印商店」の荷いい感じ。
 八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合に回るが、あまりじっくりと見る暇がない。慌ただしく『光陽』でもやしラーメン。ラーメンを注文する客が多いのは寒さのせいだろう。8時を超えても間違いなく零下だと思われる。
 慌ただしく『三恵包装』でお菓子、『大商ミート』で豚ロースを購入して帰宅。


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