つぶ学事始め 09 灯台つぶ番外編 スルガバイ

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 ヒモマキバイやオオカラフトバイ、シライトマキバイなど北海道から千葉県銚子まで徐々に南下してきて、太平洋側、相模湾、駿河湾から土佐湾までの深海に棲息するのがスルガバイである。北の3種がまとまった漁獲量を維持して市場を賑わしているのに対して、このスルガバイは相模湾でのカゴ漁、駿河湾以南の底引き網などで細々ととられているものの流通するほどにはまとまらない。
「灯台つぶ」というのは北海道でのヒモマキバイ、オオカラフトバイ、クビレバイの呼び名。これが太平洋側を下ると産地では「灯台つぶ」という呼び方はしないのだが、築地などでは経験上、いつのまにか三陸、福島、茨城などのシライトマキバイを混同して「灯台つぶ」として扱っている。だから「三陸産灯台つぶ」というシライトマキバイの名称を値付けに書くのである。そしてもっと南下してスルガバイに対して「灯台つぶ」という呼び名は当たり前だがまったく使われない。
 スルガバイは駿河湾では珍しい貝でもなく、かといって出荷できるほどにはまとまらない、まあ言うなれば漁師さんの「おかず」的な巻き貝として特別な呼び名すらなくなってしまう。また、分類学的に見るとシライトマキバイが福島県沖、茨城県沖までくると「スルガバイ形」としか言いようのないものが混ざり、南に行くほど膨らんだ形態になる。門外漢ではあるが、銚子に揚がった「スルガバイ型シライトマキバイ」をスルガバイと比べても区別がつきかねる場合がある。
 この地域による変化というものを把握することが巻き貝では重要となる。例えばオオカラフトバイは根室から来る荷に多く、厚岸、森町とヒモマキバイが多いように思える。また典型的な「オオカラフトバイ型」は根室産からしか見つからない。それに比べると「ヒモマキバイ型」は不安定ではないか。シライトマキバイは道東から見られるがここでは典型的な「シライトマキバイ型」である。これが福島県沖まで南下すると多少ふくらみをもった「スルガバイ型」が混ざる。そして銚子に揚がるものなど半分以上が「スルガバイ型」になるのである。
 さて、スルガバイはときどきまとまって揚がる。当然、まとまってもわずかだが、産地の沼津や三河湾では市場などで目にする機会が少なくない。また値段も安い物なので、見つけたら買ってみるといい。刺身、煮る、焼くとまことに美味である。
●「灯台つぶ」というのは北海道に置いての「ヒモマキバイグループ」の呼び名。これに関してはスルガバイが最後となる。日本海、また道東でのヒモマキバイ、オオカラフトバイなどもっと、典型的なものから中間的なものまで個体を集めて比較する必要性がある。これをまた「市場魚貝類図鑑」に反映していきたい。

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このページは、管理人が2006年7月 3日 08:28に書いたブログ記事です。

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