甘エビ学 事始め04 「甘エビ」と呼ばれるホッコクアカエビ

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 甘エビが初めて我々の周辺に登場してきたのはそんなに古いことではない。実を言うと北海道でのエビ漁は比較的浅い場所にいるトヤマエビ(ぼたんえび)から始まっている。それが水深の深い場所にいるホッコクアカエビをカゴ漁でとるようになったのは1960年代なのだ。
 その漁獲が増えたホッコクアカエビが「甘えび」という名で一般に広まり始めたのは1970年代からだと記憶する。この時代に始まり盛んになったデパートでの物産展やアンノン族、ディスカバージャパンなどでの旅のブームで徐々に「甘えび」の名が挙がるようになる。
 そして「甘えび」というものを一般名称化させた最大の要因は北大西洋からのホンホッコクアカエビの輸入、そして回転寿司の登場だろう。1958年に大阪に誕生した回転寿司だが、1970年代後半には東京でも珍しいものではなく、ありふれた存在となっていた。そこに輸入の甘えびがあったのだ。ここで初めて生のエビを食べるという経験をした。生といえばイセエビやクルマエビの踊りなどがあるがあまりに高価すぎるし、本当に生がうまいのか疑問に感じる代物である。
 それに対して甘えびは生で食べてこそうまい。甘えび(ホッコクアカエビ)はどうして生でうまいのだろう。それは身にグリシンなどの甘味を感じさせるアミノ酸が豊富にある。また水溶性のタンパク質が大量に含まれていて身が粘液質でトロリとしている。これが相まって甘味が非常に強く感じられるのだ。すなわち甘えびの旨さはまさに「甘さ」にあるとでもいえそうだ。そのトロっとしたタンパク質の粘りが熱を通すと凝固してしまう。甘味の元であるグリシンなどはイセエビやクルマエビよりも少ないために相乗効果がなくなって旨味甘味とも半減してしまうのだ。
 この甘えびの産地は輸入ではロシアが圧倒的に多く、アラスカなどが次ぐ。国内では鳥取県から北海道の日本海側、道東、オホーツク海など。なかでもダントツに漁獲量が多いのが北海道西岸である。漁獲方法は底引き網とカゴ漁である。値段味わい共にカゴ漁でとるものがよく、底引き網漁のものは落ちる。市場で見る限り値の張る甘エビは主に北海道西岸からくるエビカゴ漁のもの。
 留萌、羽幌、増毛、江差、古平など北海道の西岸には甘えびの産地が目白押しであり、ここから来るものは遠路にもかかわらず取り扱いが丁寧であり鮮度がいい。当然高値がつく。また噴火湾のものは色が薄く、小振りのものが多いように思える。他には新潟県からのものにいいものが目立つ。
 市場で値段を見るとロシアなどからの冷凍もので1キロ1000円前後から1600円くらい。国産鮮魚で小振りのものでキロ当たり1400円くらいから、平均して2000円前後、高いときには10000円近いときもある。少ないながら活けものもあり、これは非常に高価である。
 さて、一般家庭では甘えび(ホッコクアカエビ)は冷凍物を食べているものと思われる。スーパーなどで解凍したものを発泡トレイなど移し替えて売っている。確かにこれはこれでうまいのであるが、少し贅沢をして生で流通した国内ものを食べてみてはいかがだろう。その甘さ、そして上品な旨味とプルっとした食感に驚くはずだ。我が多摩地区周辺にもデーパートのみならず魚屋でも生の甘エビ(ホッコクアカエビ)を置いてあるところは少なくない。値段が高いと言ってもあまり大量に食べるものではない。意外に値段はお手軽なものでだ。土日、ファミレスでレトルト食品を食べるよりもずーっと安くつくはずだ。たまには家族揃っての夕ご飯に甘えびなどいいと思うけどな?

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新潟県能生町にて。エビカゴ漁であがったばかりの「南蛮えび」。

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国産の生は透明感があり、プルっとした食感が楽しめる。

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このページは、管理人が2006年8月 2日 12:49に書いたブログ記事です。

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