『カレーライスの誕生』(小菅桂子 講談社選書)を読んでいたらカレーの普及は昭和の初め頃から加速度化する。そして昭和の初期には「次第に各地でそれぞれの特産品を使って、『ご当地カレー』が作られていくことになる」とある。ここに福島のほっき(ウバガイ)、釧路のホタテガイ、マイワシなどを使ったカレーが紹介されている。
マサバはこの本にはないのであるが、福島で聞いたとき、「ほっき(ウバガイ)のカレーはよく作った」というのとともにカレーには「いろんなもの入れたよ」という話を聞いている。マイワシを使うなら当然マサバを材料としないわけがないのだ。また本格インド料理には魚のカレーというのもあり、本来はカレーは材料を選ばない料理なのだから、今の日本型料理でのカレーは材料があまりに固定化しすぎているともいえる。
さて、そこで話は飛ぶが9年前の銚子への旅行である。海辺で生き物を探して、とある水産物の観光市場に入った。この観光的な市場の品揃えがまことにあきれるもので、冷凍のタラバから筋子、新巻鮭など銚子と関係ないものが目白押し。むしろ銚子の鮮魚などは隅っこに追いやられている。でもこんなところにオバチャン軍団が殴り込みをかけるがごとくなだれ込み大盛況であったのだからもっと驚いたのだ。そこに堆く積まれていたのがサバカレーである。
サバカレーは何種類かあって、どれにしようか迷っていると家人が不思議なことを言うのだ。
「父ちゃん、これが本物でしょ」
どうして本物かというと、「テレビドラマ」でやっていたからだそうだ。それを仕方なく買って帰ったをの覚えているのだが味を忘れてしまっていた。
そんなときに我が家の近くにポプラという見慣れないコンビニがあり、驚いたことに若狭の天橋立マークのオイルサーディンがある。そしてここにあったのが信田缶詰の「サバカレー」である。これが1個210円なので当然買って帰ってきた。コンビニも侮れないのだ。
このサバカレー、驚いたことにサバの切り身がゴロゴロと入っている。その切り身がよく煮込まれているのか生臭みがなく、しかも煮くずれていない。そしてカレー自体も適度に辛口でいい味わいなのだ。このサバカレー、残りご飯にのせてそのままチンしてなかなか便利なものである。またホッピーのつまみとして食べるのも悪くないな、なんて缶詰片手に立ち飲みを常習するオヤジは感心しきりなのだ。要するによくできたものであった
気になってネットでサバカレーのことを検索して初めて知ったのだが、このサバカレーというのは家人の言っていたのが正しくてドラマに触発されて作られたものらしい。そしてドラマの撮影場所となった川岸屋水産でもサバカレーが作られていて、そこもドラマの放映後からの生産らしいのだ。最近銚子で作られている水産加工品に興味を持っているのだが、こんな現代風ないきさつで生まれた水産加工品も珍しいのでは。
とここで最初の『カレーライスの誕生』にもどるが「サバカレー」は間違いなくドラマ以前にも日本のどこかで作られていたはずである。すなわち福島県「ほっきカレー」、和歌山県では「サザエカレー」なんて言うのもある。またマイワシのカレーがあるならマサバ、ゴマサバのカレーがないわけがない。このカレー材料になった水産物も調べると奥が深いだろう。
信田缶詰
http://www.fis-net.co.jp/shida/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
ホンビノスは「う、うまい」 後の記事 »
2006年シーフードショー出合った01 山口県岡田水産
主人の故郷、函館では昔、肉が高かったのでホッキガイをカレーにしたらしいです。でも子どもたちには不評だったとか。同様な話が千葉県南房総市千倉でもあってサザエカレーを道の駅・潮風大国などで売っています。地元の学校給食でサザエカレーを出したという話も。おまけに富浦では枇杷カレーなんてのもあります。
たにぐちさん、お久しぶりです。千倉のサザエカレー、値段が問題ですね。安ければ買ってみたいですね!