福島県相馬市原釜は日本屈指の漁港である。底引き網あり、サケの定置もある、刺し網も、ミズダコのカゴ漁もある。ここで、困るのが食事である。原釜から松川浦にかけては言うなれば観光地なのだ。当然うまそうな飲食店も多いのだが、どれもが観光客目当ての店ばかり、それで賑やかな地域をさけて飛び込んだのが「おいかわ食堂」なのである。駐車場は奥にあって、そこには大型トラックが何台か止めてある。これは間違いなく地元の客を相手にしている素朴な店に違いないだろう。
それで裏から店に入ると、店内の賑やかなこと、小上がりには長靴が並び仕事を終えたばかりの漁師さんが生ビールに豪快に飲み干している。
その脇の隅っこ4人がけのテーブルに座り、品書きを見ると中華系の定食などがあるなか「アサリカレー」というのを見つけてお願いした。そして待つほどもなくやって来たのがやや色濃い目のライスカレーである。『カレーライスの誕生』(小菅桂子 講談社メチエ)を読んでいると昭和10年には各地でカレーが普及していき「ほっきカレー(福島)」「馬肉カレー」などが登場しているとある。当然、松川浦から原釜にかけてはほっき(ウバガイ)やアサリが豊富にとれたのだから「アサリカレー」が作られていてもおかしくない。
そしていざ食うべよ、と目の前のカレーを見るに驚いた。アサリが殻付きでゴロゴロと入っている。そしてルーを味わってみるに確かにアサリらしい風味はあるものの強力なカレー風味に押されてほんの微かなものでしかない。カレー自体の味は決して悪いものではなく、そこに面倒かけますわ、と言って殻付きのアサリがあるだけなのだ。ご飯もやや大盛りでサラダ付き、まあ昼ご飯にはこんなものも面白いかも知れない。
おいかわ食堂 福島県相馬市尾浜字追川186-1
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
つぶ学事始め14 チヂミエゾボラについて 刺身つぶ06 後の記事 »
土佐の漁師秘伝マグロのワタ料理その1 酢みそ和え