沼津魚市場に通い始めて4年になる。そして沼津の達人であり、甲殻類学者の飯塚さんに魚市場周辺を案内していただくようになってこれも3年目ではないか。その飯塚さんがもっとも愛している寿司屋が『たか嶋』なのである。だいたい沼津魚市場周辺には優れた寿司屋が多く、目移りするほどなのだが、市場の関係者と仲良くなっていちばん彼らが足繁く通っているのが『たか嶋』だとわかってくるとボクも他の店に行けなくなってきた。
この店、市場関係者のために早朝から営業している。沼津魚市場でさんざん魚を見てから、「飯塚さん疲れましたね」といつも声をかけるのが7時過ぎ。深夜3時から底引き網の水揚げをみているので、この時刻にボクの疲労がピークとなる。すると、飯塚さんが優しく「行きましょう」と『たか嶋』に誘ってくれるのだが、ここの職人さんも我々が変わった生き物を探しているのを知っているためか、魚の呼び名や旬に関していろいろ教えてもくれる。そして周り総てが市場関係者という慌ただしい朝方でもゆったりなごませてくれるのだ。
この『たか嶋』は座って、ただただお願いすると勝手に職人さんが旬のものを握ってくれる。そして一通り終わるとお勧めがあって、ときはそれが出てくる。また自家製の玉子焼きは絶品なのだが、焼き上がるとちょんちょんと切って目の前に来る。このタイミングのよさも市場の寿司屋ならではだ。
9月11日のずばりお勧めは揚がったばかりの生しらす、きめじ(キハダマグロの腹も)。たっぷり堪能して天かすをお土産に店を後にする。この店、寿司と天ぷらの店なのだが、朝方は寿司のみ。朝から天ぷらというなら金曜日に行くしかない。残念ながら、いまだ金曜日に行き当たっていないのである。
「ここのね。寿司もいいけど、天ぷらにはびっくりしますよ」
飯塚さんは金曜日に来てみなさいと言うのだ。
「それとね。本当にその日の水揚げを握って欲しかったら昼に来なくちゃ。また昼に案内しますから、ゆっくり来てください」
これを聞くと、また沼津に来たくなる。こんどは金曜日に来るかな。
●飯塚栄一さんの「飯塚さんの海の世界」へ
http://www.numazu.to/sea/
たか嶋 静岡県沼津市千本港町115-3
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
2006年9月11日(月曜)の沼津魚市場便り 後の記事 »
静岡市清水「藤七」のいわしハンバーグ