2007年1月14日アーカイブ

くつあんこう鍋

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 昨日から多摩地区では久方ぶりに冷え込んでいる。ということでアンコウ、すなわち「くつあんこう」で鍋を仕立てる。
 アンコウは鮟鱇、キアンコウと比べて明らかに鍋にして落ちる。なぜならば肝の味わいがもう一歩足りないからだ。でも身も皮も、ヒレも、どこをとってもキアンコウに負けず劣らずにうまい。
 ということで、それじゃ鍋の話など書かないでもいいだろうと言うと、そうは問屋が卸さない。最近、旅番組を見ていると鮟鱇鍋が出てくる出てくる。でもその作り方というのが、ほとんど一様なのだ。確かに茨城県の「どぶ汁」はユニークで面白いのだが、あとは個性がまったくない。どこでも同じものだ。
 鮟鱇鍋というと神田須田町の「いせ源」だろう。ここでは注文すると野菜とキアンコウ、そして蒸した肝、そこには汁がはってある、が来る。この汁が醤油仕立てで、たぶん酒にみりんなどで調味してある。これをコンロに置き、火をつけて仲居さんは去っていくのだ。これはあっさりして食べやすいが、実を言うとすぐに野菜がくたくたになり、よほど仲の良い気心しれぬ間柄でもないかぎり、すぐに惨状をていする。
 この作り方が、ほとんどの地方で踏襲されているのだ。またときに女将さんが脇についているときもある。その場合なにをするのか、というとまず汁が沸いてきたらおもむろに野菜を入れる。そしてアンコウの生の切り身。すぐにフタをして「少しお待ち下さい」とでもいうのだろうか? これも「えいや!」と食わないと大変な状態になる。
 どうしてこのような作り方をするのか、不思議だ、理解できない。そこで我が家の作り方を。
 我が家ではアンコウの身や粗すべてを予め湯通しする。このときに内臓についた汚れもきれいに落とす。できれば白菜など野菜も湯通し。これは慌ただしいときには省く。まず汁だが、昆布だしに酒と塩で味をととのえたもの。これを沸騰したら湯通ししたアンコウを適宜入れる。そして煮えてきたら、そのつど各人好きな調味料で食べる。我が家はみなてんでんばらばらな調味料を使う。ボクは生醤油、柑橘酢、七味唐辛子。家人はもっぱらポン酢に大根おろし。子供たちは我が家のかけ醤油(カツオ節などで作ったもの)。
 そしてアンコウをある程度食べたら野菜、豆腐などを入れる。また醤油に肝を溶かして、この野菜を食べてもいい。そして野菜が減ってきたらアンコウ、野菜と各人の好みを聞きながら食べ進むのだ。だから最後の雑炊をつくるまで汁は美しく澄んでいる。
 我が家の方が鮟鱇鍋としては異端なのだろうか? テレビを見ながら毎回疑問に感じるのだ。

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撮影のために一時ガスを止めている。

市場魚貝類図鑑のアンコウへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/ankou/ankou.html
神田須田町(連雀町)「いせ源」へ
http://www.isegen.com/index.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 最近、「鮭はサケか?」というテーマで水産加工品の画像を集めている。すなわち、世に流通する「鮭」とつく商品の原料がいったい何なのかを、見ていきたくなったのだ。

 そして知り合いの仲買で見つけたのがこの「鮭」の文字。裏を返すと原料は銀鮭(ギンザケ)であった。すなわち、このあたりが難しいところで例えば「銀鮭」は鮭がつくから「鮭」でいいのか? またそれではカラフトマスを「鮭」とつけるといけないのか。サクラマスは、例えばサーモントラウトは? キングサーモン(マスノスケ)は? とだんだんわからなくなってくる。でもこの「銀鮭」が「鮭」なのはわかりやすい。

 製造者の岡田水産と言えばシシャモで有名な会社である。また多様な水産加工品を展開しているのであろうことはシーフードショーでも見せてもらった。また過去に食べた加工品の味わいは総てうまいものばかりであった。とうぜん、期待して焼き上げる。
 これが予想以上にうまい。仲卸で分けてもらったので定価がわからないが、一般に流通するものでこれだけの味わいとなれば日本橋などの高級な店は驚異に感じるだろう。チリ銀の身にはたっぷり脂がのっている。そこに酒粕の香りが来て、身の旨さに甘味が加わる。塩分濃度もほどよい。
 家族には明らかにこれは「鮭の粕漬け」と疑問すら湧かない代物。「鮭」とは「サーモンピンクの身の魚」総てであるようだ。

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岡田水産 山口県長門市油谷伊上1755-1

市場魚貝類図鑑のギンザケへ
http://www.zukan-bouz.com/sake/ginzake.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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「たく」というのと「煮る」という2つの言葉を関東ではしっかり区別する。「炊く」のはご飯や豆くらいだろう。でも関西では「たく」と「煮る」の区別がほとんどない。例えば「関東煮」は「かんとうだき」と読ませるし、また「野菜をたく」とは「煮る」ことなのだ。これは徳島でも同様で、「豆腐と菜っぱをたく」とは言うが「にる」とはいわない。
 ということで「あらだき」は「あら煮」のことである。ボクは個人的には「煮炊き」するは分けない方が好き。「たき」の方がうまそうなら、そのときの気分によって使い分けることにする。

 さて今回の主役は標準和名のアンコウ、「くつあんこう」である。ややこしい(この関西弁好きなのだ)ことに一般に鍋や「あん肝」なんかになる「鮟鱇」というのは標準和名のキアンコウのこと。
 だから関東の市場でアンコウを見つけるのはなかなか難しい。静岡県沼津魚市場には毎日のように揚がっているが、それでもキアンコウと比べると少なく、なかなか手に入れられない。どうもアンコウよりも浅いところにいて、しかもやや小振りであるようだ。
 キアンコウと比べると落ちるなと思うのは肝の大きさ、味わい。ほかはあまり遜色がない。でも肝心なところで差が付くので「くつあんこう」と一段も二段も下に置かれるんだろうな。
 この粗と肝、胃袋、腸をたく。しかもmoonさんの投稿に豆腐というのが出ていて、ボクには目新しい。それで今回は脇役を増やしネギに焼き豆腐を加えてたいてみた。

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 アンコウの粗は予め湯通し、豆腐を焼く。クセのあるものは皆無なので酒、味醂、砂糖はほんの少し、濃い口醤油、水適宜を煮立たせて、そこに材料を入れる。料理屋さんでは薄口醤油と濃い口醤油を加減して煮汁の色合いを調整するが、ボクは田舎臭いのが好きだ。ちなみに色合いと塩分濃度は反比例する。そして今回は田向さんのところのを真似て煮汁を多めにしてみた。

 出来上がりは、とても煮魚とは思えないもの。目新しいところで箸を伸ばしたら、驚いたことには豆腐がうまい。思ってもみなかった脇役のうまさに、汁をすするとこれもいい味わいなのだ。そしてアンコウも、ネギもよく煮汁がしみて味がくっきりと浮き上がってきている。アンコウの皮のうまいこと、そしてネギの甘味で、全体の味わいにバランスがとれている。どうもこのバランスをとる役割をネギが演じているようだ。生姜だと、明らかに動物質の旨味を引き立たせるが、風味の広がりや奥行きがなくなる。

 さて、煮魚に脇役を増やすというのは予想以上に面白く、また味がいい。今回、ゴボウがなかったのが残念で仕方ない。また今出盛りの三浦大根、ニンジンを入れてもよさそうだ。
 こうなると関東での煮魚のイメージではなく、「煮染め」、もしくは「汁」「鍋」とも重なり合う要素が出てくる。とすると、本来「煮魚」というものが汁、鍋とも決して独立した料理ではないのではないか? とも思えてくる。

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市場魚貝類図鑑のアンコウへ
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