「たく」というのと「煮る」という2つの言葉を関東ではしっかり区別する。「炊く」のはご飯や豆くらいだろう。でも関西では「たく」と「煮る」の区別がほとんどない。例えば「関東煮」は「かんとうだき」と読ませるし、また「野菜をたく」とは「煮る」ことなのだ。これは徳島でも同様で、「豆腐と菜っぱをたく」とは言うが「にる」とはいわない。
ということで「あらだき」は「あら煮」のことである。ボクは個人的には「煮炊き」するは分けない方が好き。「たき」の方がうまそうなら、そのときの気分によって使い分けることにする。
さて今回の主役は標準和名のアンコウ、「くつあんこう」である。ややこしい(この関西弁好きなのだ)ことに一般に鍋や「あん肝」なんかになる「鮟鱇」というのは標準和名のキアンコウのこと。
だから関東の市場でアンコウを見つけるのはなかなか難しい。静岡県沼津魚市場には毎日のように揚がっているが、それでもキアンコウと比べると少なく、なかなか手に入れられない。どうもアンコウよりも浅いところにいて、しかもやや小振りであるようだ。
キアンコウと比べると落ちるなと思うのは肝の大きさ、味わい。ほかはあまり遜色がない。でも肝心なところで差が付くので「くつあんこう」と一段も二段も下に置かれるんだろうな。
この粗と肝、胃袋、腸をたく。しかもmoonさんの投稿に豆腐というのが出ていて、ボクには目新しい。それで今回は脇役を増やしネギに焼き豆腐を加えてたいてみた。
アンコウの粗は予め湯通し、豆腐を焼く。クセのあるものは皆無なので酒、味醂、砂糖はほんの少し、濃い口醤油、水適宜を煮立たせて、そこに材料を入れる。料理屋さんでは薄口醤油と濃い口醤油を加減して煮汁の色合いを調整するが、ボクは田舎臭いのが好きだ。ちなみに色合いと塩分濃度は反比例する。そして今回は田向さんのところのを真似て煮汁を多めにしてみた。
出来上がりは、とても煮魚とは思えないもの。目新しいところで箸を伸ばしたら、驚いたことには豆腐がうまい。思ってもみなかった脇役のうまさに、汁をすするとこれもいい味わいなのだ。そしてアンコウも、ネギもよく煮汁がしみて味がくっきりと浮き上がってきている。アンコウの皮のうまいこと、そしてネギの甘味で、全体の味わいにバランスがとれている。どうもこのバランスをとる役割をネギが演じているようだ。生姜だと、明らかに動物質の旨味を引き立たせるが、風味の広がりや奥行きがなくなる。
さて、煮魚に脇役を増やすというのは予想以上に面白く、また味がいい。今回、ゴボウがなかったのが残念で仕方ない。また今出盛りの三浦大根、ニンジンを入れてもよさそうだ。
こうなると関東での煮魚のイメージではなく、「煮染め」、もしくは「汁」「鍋」とも重なり合う要素が出てくる。とすると、本来「煮魚」というものが汁、鍋とも決して独立した料理ではないのではないか? とも思えてくる。
市場魚貝類図鑑のアンコウへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/ankou/ankou.html
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アンコウいいですね。久しく食べてない気がします。
「たく」、「にる」ですが、こちらは何でも「炊く」ですかね。フナ味噌は炊く、佃煮も炊く、煮付けも炊く、ですね。「煮る」を使うのは、薄めのダシを使うときくらいかも。
以前、居酒屋で、アンコウの煮付けなるものをたべましたが、けっこう美味かったのを、思い出しました。
その昔入社してからの研修で、関西の人が「炊いた肴は食われへん」と言って、肴は刺身だと。しかしその炊いた肴の意味がその時は解らなかった。炊くと言うのは、御飯だけで、、あとは全て煮ると言っている、ここはミチノクです。鮟鱇は美味しいが七つ道具、不足で肝位なのが残念だ。港には揚がるが殆どは、関東地区に出荷されているようだ。
飯塚さんは底引き網の獲物として当たり前でしょうけど、うなたろう君も好きなんですね。また尾張でも「たく」なんですね。とすると関東の方が変なのかも。またpapaさんの東北でのアンコウの流通は多様だと思います。青森からはよく肝だけが入荷しますし、また田向さんのところのように加工品の販売もありますね。
こんど「煮る」「たく」の地域差も調べてみたい気がしますね。
ああ、それと、うなたろう君、まさか味噌でたきませんよね。
さすがに鮟鱇までは、味噌では炊きませんよ(苦笑 とは言っても、ブラックタイガーも味噌で炊いてしまう事があるご当地でございます(汗
みなさんこんばんは
鮟鱇だいぶ価格が落ち着いてきました
青森で、冷凍セミドレス(内臓だけをとったもの)冷凍ドレス(頭・内臓を取ったもの)を作るので肝のみの出荷ができます。
ドレスは茨城・福島にほとんど行くようです。
うちでは肝味噌とゆでた(たいた?)身を合えた「ともあえ」を作りますが、量販店に納入すると価格が合わないのでネットと料理屋さん向けに絞っています。