くつあんこう鍋

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 昨日から多摩地区では久方ぶりに冷え込んでいる。ということでアンコウ、すなわち「くつあんこう」で鍋を仕立てる。
 アンコウは鮟鱇、キアンコウと比べて明らかに鍋にして落ちる。なぜならば肝の味わいがもう一歩足りないからだ。でも身も皮も、ヒレも、どこをとってもキアンコウに負けず劣らずにうまい。
 ということで、それじゃ鍋の話など書かないでもいいだろうと言うと、そうは問屋が卸さない。最近、旅番組を見ていると鮟鱇鍋が出てくる出てくる。でもその作り方というのが、ほとんど一様なのだ。確かに茨城県の「どぶ汁」はユニークで面白いのだが、あとは個性がまったくない。どこでも同じものだ。
 鮟鱇鍋というと神田須田町の「いせ源」だろう。ここでは注文すると野菜とキアンコウ、そして蒸した肝、そこには汁がはってある、が来る。この汁が醤油仕立てで、たぶん酒にみりんなどで調味してある。これをコンロに置き、火をつけて仲居さんは去っていくのだ。これはあっさりして食べやすいが、実を言うとすぐに野菜がくたくたになり、よほど仲の良い気心しれぬ間柄でもないかぎり、すぐに惨状をていする。
 この作り方が、ほとんどの地方で踏襲されているのだ。またときに女将さんが脇についているときもある。その場合なにをするのか、というとまず汁が沸いてきたらおもむろに野菜を入れる。そしてアンコウの生の切り身。すぐにフタをして「少しお待ち下さい」とでもいうのだろうか? これも「えいや!」と食わないと大変な状態になる。
 どうしてこのような作り方をするのか、不思議だ、理解できない。そこで我が家の作り方を。
 我が家ではアンコウの身や粗すべてを予め湯通しする。このときに内臓についた汚れもきれいに落とす。できれば白菜など野菜も湯通し。これは慌ただしいときには省く。まず汁だが、昆布だしに酒と塩で味をととのえたもの。これを沸騰したら湯通ししたアンコウを適宜入れる。そして煮えてきたら、そのつど各人好きな調味料で食べる。我が家はみなてんでんばらばらな調味料を使う。ボクは生醤油、柑橘酢、七味唐辛子。家人はもっぱらポン酢に大根おろし。子供たちは我が家のかけ醤油(カツオ節などで作ったもの)。
 そしてアンコウをある程度食べたら野菜、豆腐などを入れる。また醤油に肝を溶かして、この野菜を食べてもいい。そして野菜が減ってきたらアンコウ、野菜と各人の好みを聞きながら食べ進むのだ。だから最後の雑炊をつくるまで汁は美しく澄んでいる。
 我が家の方が鮟鱇鍋としては異端なのだろうか? テレビを見ながら毎回疑問に感じるのだ。

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撮影のために一時ガスを止めている。

市場魚貝類図鑑のアンコウへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/ankou/ankou.html
神田須田町(連雀町)「いせ源」へ
http://www.isegen.com/index.html


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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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コメント(6)

最初から具を全部入れてしまうのなら、卓上で煮る必要はなくて、厨房で煮てから持ってきても同じですよね。ただ、鮟鱇に限らず最近はこの手の鍋が主流のような気がします。店も客もその方が楽ですから・・・

「いせ源」は鍋が小さいので仲間と行った時は野菜がくたくたになる間もなく空になりました(^^; しかし、あそこはあまり気分よくない店ですね。味もそれほどではないし、何で人気があるのかわかりません。

最近人気のある鮟鱇鍋というと月島の「ほていさん」ではないでしょうか?こちらも最初から具が全部入っているスタイルですが、その上に潰した肝がドカンと載っています。これを汁に溶くので濃厚な味になります。検索すると沢山出てきますが、ここの写真がいいかな?
http://mucun.mo-blog.jp/home/2005/05/050326_f660.html

ちなみに、私はくたくたになった白菜も好きなんです。汁から吸った旨味と白菜自身の甘みが調和して旨いと思うのです。ただし、これは自宅での話し。お店だと何故かこの味が出ません。

鮟鱇さん
「ほていさん」こりゃうまいに決まってますね。(刺身の盛り合わせ、すごい!こんなに豪華なものはそうめったにお目にかかれるものではありません)
ところで、鮟鱇の七つ道具のうち、卵巣はお好きですか?
僕はあれだめなんですね。
青森では卵巣を捨ててます。

横から失礼します。
昨日は確かに寒かったです。そして・・・うちも鮟鱇鍋でした。自分の作り方はぼうずコンニャクさんに近いかもしれません。
最初に、水洗いした鮟鱇だけを煮ます。アクはちゃんと取りますが、汁は塩くらいで、他には入れてません。昆布は入れたり入れなかったり(これじゃ手抜きですかね・・・まあ、それでも充分味があるのでいつも大丈夫ですが・・・)
それから野菜を適当に入れていくだけです。付け汁はポン酢、七味、九条ねぎです。

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鮟鱇さん、共食いですね。鮟鱇鍋だけは食べないのかと思ってた。ハハハ! と冗談はさておき、このホテイは。値段からするとキアンコウは国産としても肝は輸入でしょうね。でも「いせ源」よりは本来の鮟鱇鍋の野趣を感じるな。
また田向さんの卵巣ですが未成熟なのは食べたことがあるんですが、成熟したものは食べたことがない。そう言えばボクも腸管とともに好きじゃないかな。
moonさんのところも鍋はあっさりですね。前に知り合いの仲卸からレトルトの鍋の汁をもらったんですが、やりすぎでうまいとは思えなかった。でも最近、鍋の汁の製品多いですな。もう一度トライしてみようかな?

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そうなんです。共食いなんですが・・・(^^;
ほていさんの鮟鱇鍋は身の量に対して肝が多いような気がするので、中国産か何かで増量しているのでしょうね。あと、味噌も混ぜているような気もします。何せ一度しか行ったことがなく、ワイワイガヤガヤ食べてしまったので、よく分からないのです。
それから、卵巣ですね。食べたことないかもしれません。ぶつ切りしか買ったことがないので、どれが卵巣かも分からずに食べています(^^;

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鮟鱇さん、卵巣は秋には小さくて水っぽい。たぶん田向さんの行っているのは春になってのものでしょう? ここまでくると成熟しているもので、ぼくも見ていない。見たいな田向さん。

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このページは、管理人が2007年1月14日 20:08に書いたブログ記事です。

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