台風一過のような市場の週明けである。場内には何もなく、とくに近海(鮮魚を箱単位で扱う)が寂しい。またかなり値が上がっているようで魚屋さんが、うろうろと仕入れるかどうか思案に暮れている。
そんな八王子魚市場で見事なアカガレイが置かれている。産地不明であるが荷が少ない状況でキロ当たり2000円は安い。アカガレイは刺身にすることはなく、ほとんどが煮つけか塩焼き用。味のいいカレイで値がつくのはいいとしても、意外に料理屋などで扱いづらいもの。だいたい最近煮つけの価値が下がって来ているのである。煮つけは料理の中でももっとも歩留まりのいい食べ方。「もったいない精神」を大切にするなら、「食育」をすすめるなら「煮つけをもっと食生活に取り入れろ!」。
時化のせいか、注文なのか「源七」に1キロを遙かに超える「白川(シロアマダイ)」が来ている。香港からの輸入ものでキロ当たり2000円。やっぱり市場に魚がなくなっても値上がりの幅は小さいのだ。
社長の吉種登さんをつかまえて船橋でのアカニシのことを聞く。
「あんなものうまかない。あれは戦後に鎌倉に出したんだ。そしたらよ組合で江ノ島にいったわけさ。そこでサザエの壺焼き食ったんだけど、『こりゃ“にし”だろ』って言ってやったんだ。そしたら『旦那声が高いよ』っていいやがる」
「あとな“にし”は船橋の草競馬(船橋には今も競馬場あるんだろうか? それにしてもあんたフォスターかい)で売ってた。これくらい(手で形を作りながら)適当に切っだろ、それを串に刺して焼いてるの」
アカニシがサザエの偽物に使われたというのは聞いたことがあるが生き証人が身近なところにいるなんて。考えてみると戦後などは魚自体が不足していた。だから1965年(昭和40)くらいまではこんなことがあったわけだ。よく似た話では銚子のヒラメがニゴイだったというのもある。考えてみれば今のように魚の味にうるさくなったのは、そんなに昔の話じゃない。
●これは決して現在の話ではない
八王子綜合卸売センター「高野水産」に荷が到着している。並べ終わるまで八王子総合卸売協同組合。「丸幸水産」にもめぼしいものはない。他に店も同様なのだ。
八王子綜合卸売センター「高野水産」に戻ってみると思ったより荷が多い。ただし養殖物が多いのは致し方ないか?
礼文島からのニシン、壱岐からカサゴ、マアジに「すけそ(スケトウダラ、市場ではあくまで“すけそうだら”)」。根室からエゾボラ属の入会がきている。クリイロエゾボラ、ウスムラサキエゾボラ、ドウナガエゾボラ。登別からはビノスガイ。
社長曰く
「明日の方が魚少ないってよ」
煮魚用の魚を探してみたがキロ2500円のカサゴを買う気にもなれず。小さな“すけそ”を一本買う。
「平成食品」でコーヒーを入れてもらい一息。最近、疲れがとれないのだ。「伸優」で信州味噌。我が家では主に麦麹味噌を使っている。でもたまには信州味噌もいいだんべ!
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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2006年1月10日(水曜)の市場便り