1か月ぶりの築地である。時刻は7時半。近年、築地は一般客が早朝から押し寄せて、賑やかなことこの上ないのであるが、今日は人出が少ないようだ。いつものように波除神社、海幸橋をわたって場内に入る。場内はいつものようにターラーが凄まじい勢いで行き交い、激しくハンドルを切り、人と物の間をすり抜ける。積み上げられた発泡の山、古くさび付いた製氷所。
場内水産棟はここからちょうど扇のように奥に向かって広がっていく。その要に一番近い入り口から入っていく。入った途端に【日本丸大】でちりめんを買っておく。ちりめんはいつも徳島から取り寄せているのだが、ちょうど切らせているのだ。築地場内にあって、ちりめん、しらすの品揃えではこの店がいちばんではないか。ここで買い求めたのが産地不明ながらキロあたり2700円という手頃なもの。これを500ほど買い求める。ちなみにスーパーなどで売られるちりめんの最小単位は30グラム袋、やや大きいもので60グラムなのである。比較して500グラムという分量がわかるだろう。築地場内ではあまり小さな単位で売ってくれない。ちりめんなら最低でも300グラムくらいを買う。
場内を見て歩くに、今週の荒天を繁栄して、全般に値段が高いようであるし、まためぼしい魚がほとんどない。そんななか【丸半佃寅】に北海道江差からのイバラモエビ。当地では「鬼えび」である。これは甘エビなどのタラバエビ科ではなく珍しくモエビ科。身がしっかりしていて甘味がある。見ているとご主人らしき人が「それは昨日のだ。ダメダメ」という。さすがに築地は「いいものを売りたい」という気概がある。
そのまますすむと【飯田水産】という店でヒメコダイを見つける。この店、いいものおいているな、と感心してヒメコダイを撮影すると。「撮影はだめ」だという。どうもこの店は一般人お断りの店であるようだ。
活けのトリガイ、クロアワビ、タイラギを見かける。アカガイも豊富にある。さすがに築地だなと思うときである。
その先に【角に十の字】。ここは珍しくマカジキを扱っているのだ。ちょうどマカジキを解体していて、これが土曜日でなかったら買って帰りたいものである。マカジキは今でこそマグロの陰に隠れているが、その昔は赤身の刺身と言えばマカジキという時代があったのである。
魚がないせいなのか、今日の場内は人が少ない。そのぶんじっくり見てまわれるのである。佐島からのワカメ、秋田からの黒メバル、青森からのウスメバル。
三陸からの“かじか”ニジカジカが目につく。【小島】という店でニジカジカを見ていたら中にギスカジカを見つける。キロ/700円であるので、これを購入する。最近、ギスカジカが八王子に来ないのである。同じく【小島】で冷凍ばちの切り落とし500円も買う。本日の場内歩きのテーマが「マグロ500パックを買ってくる」というもの。
“このこ(マナマコの卵巣)”の袋詰めを【丸富】で見つける。一袋3300円は安い。ロシアからの輸入甘エビ類を解凍して売っている店で東サハリンの種名のないパンダルス属の“ぼたんえび”を見つける。あとは三陸底引き網での“ぶどうえび(ヒゴロモエビ)”。
ぼんやり歩いていると、不意に声がかかる。気がつくと【大音】さんの店の前。
「これなんでしょうね」と見せられたのが“青ひらす(ホワイトワレフー)”のスモーク。これは千葉県市川市の三洋食品の作ったもの。なかなか美味なので、【大音】さんに取り扱ってみたらとすすめる。
キンメダイ、ヒラメ、オニカサゴにカサゴ、アカムツにクロソイ。なんでも揃ってはいるが珍しいものめぼしいものが見つからない。マハタ、キジハタ、オオモンハタ、アオハタ、クエなどが多いのは冬らしいともいえそうだ。なかには20キロを超えるクエもある。またなかでもアオハタの多さは群を抜いている。
これは総てアオハタ
そろそろ疲れたなと思っていたら【高梨】の前に来ていた。その店頭にあった能登産“甘エビ(ホッコクアカエビ)”の値段がすごい、なんとキロ/27000円なりである。
「一本で500円くらいになるんじゃない。二本ならちらし寿司が食える」
確かにその通りだがこれは見るだけで満足。他には“鬼えび(イバラモエビ)”、“ぶどうえび(ヒゴロモエビ)”“ぼたんえび(トヤマエビ)”。どれも半端な値段ではない。
築地魚市場というのは鮮魚だけがいいのではない。先の【日本丸大】はちりめん干物、乾物。
【近長】には見事な昆布が何気なくおかれている。いい昆布を見ると無理しても買いたくなるのだが、今回は断念。
【丸蒲食品】には各種すり身。“ぐち(シログチ)”ハモ、“たら(スケトウダラ)”、これを買ってきて自家製の練り物を作るのもいいだろう。
そろそろ9時近い頃、マグロの【鈴与】で鮟鱇さんに出合う。その【鈴与】に珍しくコシナガがあって、なんと売れてしまっている。これは残念至極。これはもう何年も探しているもの。寿司図鑑にはどうしても欲しいマグロネタなのである。今年は幸先悪しである。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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