築地には年間に20回近く行くのではないか? 主にその季節、そのときどきの魚の状況や値段をこの世界一の魚貝類の市場へ見に行くのが目的なのである。その折りに決して買ってこないのが鮮魚である。これは産地からかなりの量の鮮魚が到来する我が家の特殊事情もあるし、築地がけっしてお安くないということもある。
じゃあ、なんにも買わないのか? というと必ず買ってくるのがマグロのパックである。これは当日卸したマグロの中落ちや切れっ端などを詰めたもの。だいたい1000円ほども出せば、“うまいマグロ”が手軽に味わえる。でも今までいちども手を出したことがないのが最底辺の500円パックである。
これには間違いなく本ま(クロマグロ)は入っていない。当たり前だが入っているのはほとんどが冷凍のメバチマグロ。もしくは生のメバチの中落ちである。
17日に買ったものでも「いいな」と思ったのが冷凍のメバチの2パック。あとは1000円、2000円、高いと1パック5000円なんてものもある。こうなると、高いものには大間のクロマグロが入っている可能性もあるだろう。そんなところが日本一のマグロどころ・築地のすごさなのだ。そんな築地でせこーく500円パックを2個買う。これだって築地の醍醐味のひとつだ。
ひとつは鮮魚も扱っている『小島』のぶつ。もうひとつはマグロ専門店『高英』のもの。『小島』のはまったくの赤身だけ、片や少しだけ脂のあるところが混ざる。
さて、これを食べ比べてみる。これが甲乙つけがたいものである。『高英』の脂のある部分はたしかに甘味があってうまいのである。これは1パック400グラム以上入っているだろうから、かなりの値打ちもの。じゃあ赤身だけの『小島』が落ちるかというを、これは赤身としてうまみのある上物なのだ。
マグロ専門店『高英』で買ったもの。脂の部分が混ざっている
鮮魚も扱う『小島』のもの。全部赤味だが、うまい。
築地場内を歩いていて真っ先に気づくのは鮮魚を扱う仲卸と同じくらい、いやもっとマグロだけを扱う専門店の多いことだ。なんとこの狭苦しい場内にあるのは日本一、いや世界一のマグロたちである。当然、安いものでも築地は築地、とうぜん、他にはないうまいマグロが無数に転がっている。だから比較的一般人の入りやすい土曜日や、プロたちが引けた後の9時過ぎなんかの場内でマグロパックを探すのは賢い庶民のあり方なのである。
明日は休日という土曜日など、お父さんの酒の肴、夕ご飯のお供に築地のマグロパックは安くてうまくて、満足度大。ちょっと贅沢して3パック買ってもなんと千の五百円でしかない。買い方のコツは全部違う店で買うこと、同じ店で買った方が安くなる可能性もありお得だが、食べ比べる楽しさがない。
「これは中落ちよ、こっちはブツ。こっちはマグロ専門店のだから、こっちは?」なんて、まさに誰にでも出来る食の冒険である。これぞ築地食育の最たるもの。楽しいぞ!
さて、500円と限っても築地場内には買い迷うほど並んでいるのだ。そこに600円とか700円とか微妙な値段のもある。それから今回は“ぶつ”とか“切り落とし”を選んだのであるが、中落ち(三枚に卸した中骨についた肉)だけで比べるというのも面白そう。それなら冷凍ではなく“生”である可能性もあるし、安い本ま(クロマグロ)の可能性も秘めている。
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