サケの考現学15 ファミリーマート「宮城県漁連 伊達のぎん(銀鮭塩焼き)」158円

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 まずは裏の原材料から見てみる。それが「焼鮭」である。まったくこれは原材料表示としては最低である。こんな表示に出くわしたら法律的には正しくても消費者としては怒るべきだ。今、国会で醜さを露わに松岡農林水産大臣が「法律通りに詐欺行為をやっています」というのと同じだ。これまでにも書いてきているが「鮭」というのはあまりに中傷的な言葉でしかない。はっきりいって漢字での「鮭」というのは原材料を表示するときには使わない方がいい。提案したいのが本品の場合なら「焼鮭(宮城県産養殖ギンザケ」とすべきだ。わかってくれるかなファミリーマートさんとファーストフーズさん。
 今回のも含めてコンビニでの原材料表示は早急に改めて行くべきだというのがわかっていただけただろうか?

 国内で生産されている天然のサケ類は25万トン前後。対するに養殖されて輸入されるサケ類はそろそろ天然物に迫ろうとする勢いであるというのを書いてきた。また“脂好み”が進みすぎていて明らかに日本人の嗜好は「天然→養殖」という方向性できている。それに過剰に反応しているのが大手スーパーのバイヤーと呼ばれる人たちであり、コンビニなのである。
 その養殖サケの多くは輸入されたものであるのだが、我が国にも養殖サケは存在する。その主要な生産地が宮城県なのである。養殖サケが世界的に主流になるきっかけはノルウェーでのタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)養殖からである。これが1980年代に始まっている。それに対するに我が国のサケ養殖は宮城県志津川において1960年代後半には研究に着手、1970年代半ばには大手水産会社の主導でギンザケの生産を開始している。国内でサケ養殖の方が歴史的には遙かに古い(養殖サケの歴史では)のである。そして一時は宮城県を中心に産業的にも大きく成長していたのだ。
 これが大きな打撃を受けたのが、チリからの養殖ギンザケの輸入によってである。皮肉なことにチリへ養殖技術を最初に持ち込んだのは我が国の大手水産会社なのである。これが1980年にギンザケ養殖を開始、後に我が国の技術より遙かに進んでいたノルウェーでの養殖技術をチリ国内に持ち込む形で飛躍的に生産量が増え、ノルウェーを上回るサケの生産国に成長する。そして世界的に養殖サケの生産量が増えるとともに価格が大きく下落してきているのだ。
 我が国の養殖技術よりもノルウェーが作り出したものが世界的に見て明らかに優れているとされる。すなわち国産の養殖ギンザケはノルウェーのタイセイヨウサケなどと比べて市場で見ても地理的な条件を加味するとランクが下なのである。その状況を打破すべく宮城県などがすすめているのが県内での養殖ギンザケの質の向上化である。優れた肉質を作り出すための資料の開発、また養殖場の環境の整備などを行っているのだ。この宮城県の養殖ギンザケは非常に美味であることを明記しておく。

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 ネット上には「伊達のぎん」に使われている質の向上化のための飼料の成分表がある。ここには魚粉、小麦粉、穀物、油かす、その他もろもろ。またビタミンや色素成分であるアスタキサンチン、硫酸鉄にコバルトなど見ているだけでクラクラする微量成分が羅列されている。この魚粉の原料はなんなんだろう。種は産地は? これなど『NOSAN』というメーカーの秘密なのだろうか? でも国産養殖とはいえこのギンザケの身体を作り出しているタンパク質や脂質は国産ではないはずである。国内ではそんなに大量に魚粉用の小魚がとれているようには思えない。この魚粉などの原産地も明記すべきだ。なにしろ「養殖魚とは飼料を間接的に食べるもの」なのだから。
 こんなことにも思いを巡らす、また不安を感じずにはいられない人も少なくないだろう。だから原材料には「養殖」か「天然」かをしっかり表示すべきなのだ。

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 つまりファミリーマート「伊達のぎん」というのは宮城県漁連が多大な努力を払って作り出した最上級の養殖ギンザケを使っているということだ。だから1個あたり平均で130円前後のコンビニお握りにあって158円という高いものとなっている。しかもいわゆるフレークではなく、骨を抜いた大きな切り身状である。具があまりに大きいのでうまく塩飯に納まらないのか、手で持つとぱっくり2つに外れてしまう。ここでわかるのがコンビニお握りというのは生産段階でサンドイッチのように二枚の薄い塩飯を作り具を挟むのだな、ということ。決して「母さんが愛情を込めて握りました」というのではないのだ。でもギンザケの味わいもいいし、またご飯もふっくらしている。やっぱりコンビニお握りはよくできている。

 でもこれを食べると言うことが自然に、または子供たちの時代に優しいのかどうかは「わっからねー」ぞ。

ファミリーマート
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ファーストフーズ
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コメント(3)

>それに過剰に反応しているのが大手スーパーのバイヤーと呼ばれる人たちであり、

図らずもニヤリとしてしまいました
彼らの考えている消費者の嗜好なのでしょう。その反対のものもおいてみる、というバランス感覚がないんでしょうね〜

ところで〇〇アラメの情報取れましたか?
現物は早ければあさってそちらに届くはずです

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こんどはsameになったんですね。ツルアラメの情報はとることが出来ました。アイヌワカメ、チガイソなど知りたい海藻は数知れずです。
さて、バイヤーってなんでしょうね? たぶん食べ物の知識よりも算盤勘定に優れているんでしょうね。我がサイトにもバイヤーさんの参加を求む! ですね。

sameという名前も使っているんです(笑)
三重大学藻類学研究室のHPがありまして
http://soruipc2.bio.mie-u.ac.jp/index.html
ご存知かもしれませんがかなり詳しいですよ
バイヤーさんは結構見ているようですね

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このページは、管理人が2007年3月14日 08:10に書いたブログ記事です。

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