5月3日、原釜ではナガウバガイを探していた。選別する女性達に聞くと、
「そりゃ、“ひらっけい”じゃないか」
この“ひらっけい”がわからない。なにしろ浜の人はすこぶる早口なのだ。
なんども聞き直すと「ひらがい」と言っているのがわかる。
「ほっきよりひらったいずらよ、それで“ひらっけい”だ。わかんねーけ」
なにを聞くんだろうな、このオヤジは、というような顔つきで教えてくれる。
浜の女達が「平貝」にそっけないのは、値段が安いせいだ。底引きに、ときにまとまって入るが、あまり知られていないせいで浜値は「安いねー」と言う。
ナガウバガイはバカガイ(青柳)に近い種である。剥いてみたら、それがよくわかる。身の色合いも貝の前後にある貝柱もバカガイと寸分違わない。違いは渋み、貝臭さのあるなしでしかない。
寿司職人の渡辺隆之さん曰く、
「青柳が寿司ネタとしていいのは渋みというか適度な味の個性があるため」
だとしたら渋みも風味もほとんどないナガウバガイは存在感がないということになる。だから関東に来ても人気が出ないのだ。
でも、それをいい方にとらえると、クセのない上品な味わいで万人向きとも言える。
これは開いてさっと茹でたもの。作り方は青柳(バカガイ)と変わらない
さて、原釜で2個だけあがったナガウバガイ、お願いしていただいてきた。これを剥き、青柳のように開く。たった2個なのでさっと塩水にくぐらせて、寿司ネタにする。その顛末はまた後に語るとして、やっぱり上品、かつうまいな。
原釜に隣接する松川浦あたりにはお土産屋、飲食店、漁協運営の魚屋などがある。ときどきそこで売られているようだから、相馬に来た折にでも食べてみて欲しいものである。
市場魚貝類図鑑のナガウバガイ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/bakagai/nagaubagai.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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