仲卸の区画の入り口、最初に飛び込んできたのがパック入りのアサリで、これは陸送もので産地は熊本県、となりのシイラは切り身用に違いなく、これは高知県。あとはキンメダイやキチジがあってこれも当然陸送ものである。この高知県産のシイラなどは日本海にまで送られることがあるようだ。
仲卸を回ってみて思った以上に陸送ものが少ないのに驚いた。たぶん陸送のものはすでに各地の卸売り市場に送られてしまっている、もしくは仲卸でも別のルートがあるのかも知れない。この時点で競りどころか深夜に始まる陸送ものの相対を見なかったのが大失敗だと気づく。なぜなら目的としたイルカ(突きん棒でとった岩手県産のリクゼンイルカ、イシイルカ)が見つからない。また北海道ものがどれくらいきているか、やはり四国九州ものが多いのか、和歌山産はなど、陸送ものにはその地域をしる重要な手がかりがある。それにしても後悔先に立たずである。
入り口近くにあるのが「カネシン」という店。ここには「赤げた(アカシタビラメとコウライアカシタビラメ)」があるが産地は不明。活けの「おこぜ(オニオコゼ)」が「びんぐし(セトダイ)」と一緒になっている。「おこぜ」は何と言っても活けをお造りにして食べたい。
「びんぐし(セトダイ)」と「おこぜ(オニオコゼ)」
「ままかり」は標準和名のサッパである。サッパは他の地方では見向きもされない
その隣に「ままかり(サッパ)」。これもほとんど総ての仲卸に置かれてあった。この小魚を珍重するのは岡山県と香川県の一部だけ。また瀬戸内の夏の魚、マナガツオを見つけたが、地ものではなく九州からの荷に違いない。
最初の「カネシン」だけでも発見は数知れず。その前には「難波水産」。ここには頭をつけたまま開いた小振りの「あなご(マアナゴ)」がある。岡山では「頭をつけたまま穴子を腹びらきにする」というのが市場を歩いていてわかってきた。これを焼き穴子にする。これなどそのまま食べてもうまいだろうし、きゅうり揉みに、ばらずしにと重宝しそうだ。
「きす(シロギス)」も牛窓などからたくさん入荷していた。これは6月を代表する魚であるという。
活けのクルマエビ、「おおぞう(ヨシエビ)」、「赤足(クマエビ)」、「がらえび(サルエビ)」とクルマエビ科のエビが多いのも瀬戸内海らしい。このエビはあんまり手間をかけないで刺身や天ぷら、そのまま茹でただけというのがうまいのである。
エビの箱の横に必ずあるのがシャコ。産卵を終え、そろそろ身ももとに戻りつつある時期だ。そう言えば活けシャコが多いのも瀬戸内海らしい。
やや小型の「はりいか(コウイカ)」がある、「ぎざみ(べら キュウセン)」がある。これらも瀬戸内を代表する味覚である。
「ままかり」、「ぎざみ(キュウセン)」、「赤げた(アカシタビラメ)」、メイタガレイにコチ。ウシノシタ科の魚を九州では「靴底」というのに対して岡山では「下駄」なのが面白い
瀬戸内海で「めばる」というとカサゴとメバルをともに差す言葉だ。これを厳密に分けると「黒めばる」はメバル、「赤めばる」はカサゴとなる。要するに煮てうまいし、唐揚げでもいい、大きければ刺身にもなりまっせ、という同じ使い道の魚なので「敢えて分ける必要」がないというものだ。
「花岡商店」、「ウロコ水産」と来てパック詰めのヒラを見つけて購入する。
ヒラはほとんど総ての仲卸にあり、刺身に加工するほか塩焼き、煮つけ用だろうか細かく骨切りしたものがある。岡山を代表する郷土料理「ばらずし」にはヒラを酢締めにして入れる。
これは刺身に卸してパック詰めしたもの。ほんの200円ほどだったがすこぶるつきにうまかった
市場には岡山ならではというものがそこここに見つかる。「いかなごのくぎ煮」、サワラの卵巣、「藻貝(サルボウ)」の煮つけ、「でびら(タマガンゾウビラメ)」。
「吉野商店」では「ままかり(サッパ)」を卸している。「ままかり」を選んでいるのは寿司屋さんだろうか? 魚屋さんだろうか?
今回の目的のひとつ、「べか(ベイカ)」がほとんどなくジンドウイカばかりなのがわかってくる。このジンドウイカの中に種のわからないのが1匹混じっている。このベイカのことを県水の合地さんに電話で尋ねると、年々量が減り、本来は春から初夏にとれるのが春先にとれるように変わってきているのだという。
セトダイに「たもり」と札が置かれているのを見ていると、そこのお姉さんが、「あんたら、どこからおいでになったんですか」、「東京と千葉からです」という会話があって「これ、食べてみませんか」とメバチマグロらしい切り落としにゴマ油醤油で味付けしたものを差し出してくれる。
「おいしいでしょーう。これあそこのマグロ屋のお姉さんに教えてもらったん」
このゴマ油醤油のマグロが味つけのせいもあってうまかった。
この店で「鎮台貝(兵隊貝 アゲマキ)」の茹でたものを見つける。その昔、児島湾が海と繋がっていたときには岡山の庶民の味であり、ばら寿司にも入っていたものだ。それが今では有明海にもほとんどいなくなって、ほどなく日本から消えてしまいそうだ。
瀬戸内海と言えば主役はなんといってもマダイである。見事な活けマダイがボクの方を恨めしそうに見ている。そろそろ産卵後の痩せた状態から立ち直る頃だろう。そこ魚体のなんと美しいことか。これも「食べてみたいな」。
コチも見事だ。岡山県でコチと言えば「鯒飯」というのがある。これはコチの身を茹でて、骨を除きそぼろ状にする。そしてゆで汁で野菜などを煮てご飯にぶっかけるもの。
ハモもほとんどが活けか活け締めされたもの。スズハモかハモか見ただけではわからないのだが、一匹だけ側線数を数えたらハモであった。
鮮魚を扱う店をざっとまわって予想以上に大物(マグロやカジキ)を扱う店が少ないというのに気がついた。関東の市場ではぞくに「マグロ屋」と言われる店が5割近くをしめる。それがここではマグロ専門店は1店舗しかない。これなどいかに岡山が瀬戸内の魚を大切にしているかを如実に表している。
鮮魚仲卸の奥には乾物、惣菜、お菓子などの店が続いている。仲卸探検はまだまだ続くのである。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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2007年6月16日 岡山の旅05
先日スーパーにオコゼが並んでいた。
しかし誰も買いません。
容貌??があの通りだから、
しかしこちらでは皆さん、
馴染みが余り無いのです。
3匹ほど買い、から揚げにして食べました。美味しいのにね。
アンコウにトラフグも獲れるのだが、
地元を素通りして関東に行ってしまう。
「マグロ」が極端に幅を利かせているのは東京を中心とした関東地方特有の現象なのでは?
特に大規模小売店でのマグロへの偏りは異常に見えます。
冷凍がきいて売り切ることをそんなに気にしないですむマグロは
小売店にとっては「良い」商材なのでしょうが、
マグロが他の魚種に比べて特に好きという訳でもない私にとってはつまらないと感じます。
このあおりで他の特に中小型魚種を見る機会が少ないように思える分
余計にそう感じるのかもしれません。