八王子魚市場内『源七』の前でコイツを見つけて「あったー!」と叫びたい気持ちになる。それは黄金色のマアジ。形はそれほど大きくないが、「美しい姿」の内側には「すこぶるうまーい」がつまっている。これは淡路島周辺でとれるアジ。大阪湾、明石海峡辺りでは、なぜかマアジが金色に光るのだ。
たぶん優れた寿司職人で「淡路のマアジ」を知らぬ人もおるまい、というほどに生で食べて天下一品である。
しかも彼の「関あじ」がキロ数千円もするときに、こちらは高くても2000円どまり、まさに「遠くの藤原紀香よりも隣のみよちゃん。添い遂げてみたら灯台もと暗し」を思わせるものなのだ。ボクはこの可愛らしいマアジを二本買ってくる。
まさに死にものぐるいの一週間で夕食を自宅でとるのは不可能。昼飯のおかずに致すのだ。
帰宅したら、八王子綜合卸売センター『日本堂』で買った厳選された新潟米を研ぎ置く。昼時に、釜に火をつけて吹くまで3分、そこからチョロチョロにして七分、蒸らして待つこと20分ほど。この二分の一時間の長いこと。まるで地球を七回半まわったような気がするから不思議だ。
よそおったご飯に生醤油に浸したアジの身をのっける。それこそ茶碗のご飯を覆い隠すほどに刺身をのせて、スダチを数滴落とす。後は一気にかき込む。そんなに一気呵成にご飯もろとも食っては味がわかるわけがない、なんて思う人よ、君は物事の本質がわかっていない。
実は刺身の良し悪しは、飯と合わせてこそわかるのだ。炊きたてご飯の濃厚な風味、甘味、そして質量。そんな魅力的な夢見心地のなかに平凡な刺身がきたらどうなるか? 旨味を発揮できぬまま、存在理由を表せないまま消え去るのみ。対するに淡路島のマアジはどうだろう、この強敵の中で互角以上の存在感がある。ご飯の甘味とあいまって、旨さが相乗効果を生んで口の中がパラダイスと化す。
どうしてこんな小振りのマアジにこれほどの味の実力があるのか、それこそ瀬戸内海の神さんにでも聞くほかない。
ぼうずコンニャクの勝手な思い込みかも知れないが、淡路島のマアジ、見た目の黄金色ほどに千金の値ありと思っている。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html
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