ナガユメタチモドキ騒動記

0

 昨日4日、6時半に沼津佐政水産の青木修一さんからケータイがはいる。
「ぼうずコンニャクさん、お久しぶりです。あのー、今、目の前にタチウオが5本あるんですが、顔が丸くて体が長いんです」
 これをボクはぼんやり聞いてしまった。釣りでとれた、体が長いということで深海のタチモドキだと早合点したのだ。タチモドキは食用としては、ほとんど認知されていないが魚類額の世界では平凡である。
 ケータイを「切り」にした途端に青木さんの初っぱなの「顔が丸くて」というのが浮き立ってきた。タチモドキではない。考えられるのがヒレナガユメタチ、ユメタチモドキ、ナガユメタチモドキだ。しまったと激しく後悔。大急ぎで返信。競り場での数十秒は大きいのである。幸いに青木さんとはすぐ連絡をとれた。
 このときボクは失念していたのだ。青木さんは仲卸、荷主、水産会社に勤めているサラリーマンとはいえ、静岡県でももっとも魚に詳しい人であると言うことを。青木さんの琴線にふれたものは間違いなく「珍しい魚だ」。
 とにかく1本だけ確保してもらった。これを競り落として、急いで送ってくれる手はずをしてくれたのが菊地利雄さんである。この菊地さんが沼津における魚貝類の師とも言える人である。

 それが4日の夜に届いた。帰宅して発泡を開けてみると間違いなくナガユメタチモドキだと思われた。もちろん我がデータベースにはないものだし、魚類学的にも希少なものである。

 翌6日、すなわち今日。撮影がてら背ビレ軟条を数えたら、はっきりしない軟条を切り捨てて115本ある。これでナガユメタチモドキと確定した。これを市場に持っていく。自宅では長すぎて体長が量れないので市場で横たえ巻き尺で190センチ、計りに乗せて1700グラムであった。

NAGAYUMETATi07089.jpg
●クリックすると拡大

『高野水産』でまな板を借りてワタを出すと小さいけれど卵巣があった。そして4等分。

 これを『市場寿司 たか』で握ってもらう。これがどうにもうまくもなんともない。まあ珍魚とは決してうまいものではないという典型か。

 帰宅後、ボタンエビ、エゾイシカゲなどを撮影。
 昼食はボタンエビ、エゾイシカゲの刺身。ナガユメタチモドキの塩焼き。
 ナガユメタチモドキは塩焼きでもうまいものではなかった。

 ここまで書くと順風に事は進んできたように思われるかも知れない。それが大間違い。この6日は豪雨、落雷、そして異常な高湿度。じっとしているだけで息苦しい。しかも家庭のごたごたもあって、外出後の中央線内では熟睡、そして東京駅までの乗り越し。午後3時までで一日分以上の疲労が溜まったのだ。


このエントリーをはてなブックマークに追加

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://blog.zukan-bouz.com/mt-app/mt/mt-tb.cgi/918

月別 アーカイブ

このブログ記事について

このページは、管理人が2007年9月 5日 23:23に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「エゾイシカゲを見たら秋かな?」です。

次のブログ記事は「佐賀県、太良ガニを食べる」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。