春に産卵して夏には「新いか」というとコウイカを思い浮かべる。それが所謂「通」ってもんでしょう。でも、「新いか」=コウイカというのはあまりに短絡的すぎる。
春に産卵するイカはかなりの種にのぼり、この「小いか」たちがそれなりにうまい。コウイカ科は体に貝殻の痕跡である、サーフィンボードのような骨を持っている。それに対して、より貝殻の痕跡が消えてしまって、それこそ薄い板状になってしまったのがツツイカ目ヤリイカ科のイカ達。そのヤリイカ科のヤリイカの産卵期も春。当然9月、「新いか」の入荷が始まっている。
胴長(所謂頭の部分)が7、8センチ。掌に4、5バイは乗ってしまうほどの大きさである。このヤリイカの子供、各地で水揚げされ、似たもの通しのジンドウイカとともに定置網などに入る。ジンドウイカとヤリイカでは、後者の方が断然高い。それで、産地でも面倒ながら辛抱強く選別に励んでいうるのだ。
八王子綜合卸売センター『高野水産』に到来した「新いか」、産地は愛媛県八幡浜。鮮度もよく、出荷の仕方もキレイなので寿司屋などがせっせと仕入れている。そこに割り込ませてもらって二分の一キロほど購入した。「初物」なのでとにかく『市場寿司 たか』に持ち込んで握りに。素晴らしいの一語に尽きる味。皮を剥いて、ほんの一瞬湯に通しただけのものなのに、「どうしてこんなに旨味を感じるのか」。たかさんと感動を分け合って、帰宅した。
我が家で、「小槍(こやり)」を如何に料理するか? 自分自身の最有力料理は塩焼き。丸のまんま塩コショウ、もしくは塩焼きにする。これはよく「ポンポン焼き」と呼ばれるヤツだ。最近、この塩コショウをしてニンニク、オリーブオイル、バルサミコのソースをかけるというのが大好きになっている。でも夕食で「太郎がご飯に合う方がいい」というので丸のまま煮汁に搦めるようにして短時間で煮あげた。
この甘辛く短時間で煮あげたイカは我が家の子供の大好物なのである。まだ「小槍」だから柔らかい、それなりにイカの旨味もある。この煮汁をご飯にかけて、また最後には、もう一度煮汁を茶碗に入れて、洗ってしまう。だから後の洗い物も楽だ。
この「新いか」、もしくは市場での「小槍」から、成長してヤリイカらしくなるのが10月である。このヤリイカの登場は秋もたけなわを思わせる。そして「小槍」の季節、すなわち今なのだけど、ボクなど五十路男が夏バテにあえいでいる時期と重なる。「早くヤリイカに育たないかな」というのは残暑に飽き飽きしている、蒸し暑さから逃げてしまいたい、という意思表示でもあるのだ。
市場魚貝類図鑑のヤリイカへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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ぜんぜん期待していなかったマカジキだけど