晩秋の霞ヶ浦、張り網漁

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 外に出るとかなり強い雨が降っている。高速に乗り、東に向かうほどに小雨になる。
 午前4時過ぎ、浅草でうなたろう君をひろい、迷った末に隅田川縁から首都高にあがる。この川縁の高速入り口が非常にわかりづらい。
 常磐道に入り、あとは桜土浦まではほんの1時間ほどしかかからない。この間、あたらしい生活を踏み出したうなたろう君といろいろ話し込む。

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淡水真珠養殖はイケチョウガイ(ヒレイケチョウガイ)が水中のプランクトンを濃しとって吸収してくれるので水質改善にも大きな役割を演じている。我々は淡水真珠養殖を応援すべきだ

 小野川を渡り、古渡に着き、まずは小野川を少し上る。
 今にも降り出しそうな曇り空。対岸から鳥の鳴き声、枯葉になったハスが冬近しを思わせる。
 岸から米口さんの淡水真珠の養殖場を見てもらう。米口さんのボートに残っていた貝殻を見て、母貝がヒレイケチョウガイであることが、うなたろう君にもわかってもらえたようだ。

 そこから川岸屋へ。まだ諸岡さんは目覚めていないらしい。川縁を歩きながらいろんなことを話す。ほんのつかの間の立ち話にも、うなたろう君の淡水魚、淡水生物では傑出した知識を持っていることを思い知る。ほどなく霞ヶ浦市民協会の萩原さんがやってきた。このときボクと萩原さんは初対面なのであるがなんども電話で話しているためかそんな気がしない。
 そして川岸屋の玄関を開けると、諸岡さんが居間から出てきてくれる。ここで救命胴衣などをお借りして張り網に向かう準備をする。

 時刻は7時前、救命胴衣を借りて、ボートに乗り込む。船を操るのは萩原さんで、隣で諸岡さんが笑って見ている。
 ボートは小野川から霞ヶ浦を目差す。岸辺にはたくさんのカモがいる。他にも水鳥が見られるのだけど種類がまったくわからない。ボートで走ること10分ほど。最初の張り網を上げる。

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「ウナギいるかな」
 萩原さんが呟く。
「いないね。ウナギはいちばん上にいるからね」

 最初に上がったのは大量のアメリカナマズ。ウナギはいないのかと思っていたら1匹だけ混ざっていた。これをうなたろう君が見事に掴み上げる。

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アメリカナマズはとてもうまい。霞ヶ浦周辺でも味わえるのでお試し願いたい

 この日、ウナギは大小とりまぜて5、6本は上がったように思える。ウナギは最終盤にあたるようで、そろそろ姿が見られなくなると言う。
 アメリカナマズの他に大量にテナガエビがとれる。そこにボラがいて、意外に口細(モツゴ)やタナゴ類がいない。

 黒い桶には思った以上のテナガエビが蠢いている。そのなかの2、3匹を萩原さんがつまみ上げておもむろにむしゃむしゃ食べる。

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「諸岡さんに教わったんだけど、エビは生で食べると塩気があってうまいんだよ」
 当然ボクも3つ、4つつまんで食べてみる。塩気というほどではないが確かに塩の存在が感じられ、生で食べるエビ自体もまずくはない。

「霞ヶ浦よりも川の方が種類は多いよ」
 諸岡さんが徐々に小野川に向かいながら張り網をあげていく。確かに小野川河口に来た途端にオオタナゴ、タイリクバラタナゴ、モツゴ、ニゴイ、カマツカ、ペヘレイなどが混ざる。またキンブナ、コイ、ヘラブナなどは売り物となるもので生け簀に投げ入れる。他にはワカサギが混ざってくるが量は少ない。諸岡さんが中からカマツカをつかんで逃がしてやる。
「コイツは年々少なくなるっぺ」
 小野川河口近くで大きなハクレンがとれる。
「ハクレンがとれっとほかのもんが入らないっと」
 ハクレンの腹身がうまいとなんども聞かされていたので、うなたろう君ともども「食べてみたい」とお願いすると、萩原さんがハクレンの大きな頭を棍棒でなんども殴る。ハクレンはグッグググググッグと小刻みに震えながら、その呼吸を止めた。
 おだやかそうに見える萩原さんだが、霞ヶ浦の漁師の荒技をいろいろ身につけているようだ。

 完全に小野川に入ったときに上がったのがアオウオ。これは30センチほどの小さな個体。「青魚」の“青”がネイビーブルー(藍赤)であることを知る。こんな色合いの魚は我が国固有種には存在しない。

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 またモツゴ、ワカサギなどの中からアカヒレタビラ、カネヒラを萩原さんとうなたろう君が見つけだす。これはボクにとってはまったく未知の魚である。
 ヌマチチブ、ウキゴリなどのハゼ類、タモロコ、スゴモロコ、モツゴ、フナ類は佃煮材料になる。
 だんだん目が慣れて小魚の中の種がわかるようになってきた。アメリカナマズ、オオタナゴ、タイリクバラタナゴ、ブルーギル、ブラックバス、ペヘレイという海外からの移入種。ワタカ、スゴモロコは琵琶湖から移入、タモロコは移入が疑われる。

 漁の最中に水上バイクが猛スピードで通り過ぎる。こちらはボートを止めて不安定な状況にいるのだ。最低限の知能を持っていればそこをスピードを出したまま通り過ぎたら危険なことぐらいわかりそうなもの。ボクはアウトドアスポーツと言われるものでエンジンを使ったものが大嫌いで下等だと思っている。当然スポーツとしての存在自体を認めないし、当然、水上バイクを趣味としている人間も認めない。

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「今は魚が少ない時期だんべ」
 諸岡さんには電話でなんども繰り返し聞かされていた。でも目の前に上がる魚の量はかなりの量にのぼり、淡水魚には詳しくないボクには萩原さんとうなたろう君の会話を理解するのがやっとという状況だ。

 張り網も残すところ少しというところで強い雨が落ちてきた。雨具が完全ではないうなたろう君は救命胴衣を頭にかぶり濡れるのを防ぐ。
 最後の張り網は大急ぎで上げるが、網に泥が付いているなど収穫は多くはない。

 雨から逃げるように船着き場へ。そこから川岸屋に逃げ込む。皮肉なことに陸に上がるや、雨は小降りに、そしてやむ。

霞ヶ浦市民協会
http://www.kasumigaura.com/
第3回全国タナゴサミットータナゴを通して地域の希少生物との共存を考える
http://www.kasumigaura.com/calendar/webcal.cgi?form=2&year=2007&mon=12
うなたろうの部屋
http://www.geocities.jp/morokounataro/2top


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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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このページは、管理人が2007年11月13日 18:19に書いたブログ記事です。

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