まるで新しい故郷が出来たようだ。秋田からハタハタの三五八漬けが届くとそう思う。
都会で暮らしていて何が悲しいか、というと各地の郷土料理を食べたいと思っても、本物が食べられないことだ。
都会でやっと手に入れた各地の味わい、それは郷土料理という名の既製品、もしくは工業製品でしかない。今年のもっとも印象的なニュースが食品偽装であるけれど、ようするに企業として作るものに期待しすぎるのがおかしい。安いものには安い材料しか使っていないのは当たり前だろう。まああのなかで絶対赦せないのは吉兆だけかな。後はすべて“買う側が悪い”のが半分以上だ。
だから毎年、秋田のなべ婦人から、ハタハタが来ると、秋田が故郷になったように思えたり、また年末の慌ただしい、息苦しいほどの忙しさのなかに、ほっと一息つけるようでありがたい。
「三五八漬け」と言っても関東の人間には馴染みがない。主に東北日本海側に見られる、塩と麹と蒸し米を3対5対8で合わせたもので、多くは野菜を漬け込むのに使われる。
この「三五八漬け」の味わいの特徴は、麹からくる甘味と醸し出されたアミノ酸の旨味だろう。干物というのは干し上がったときが出来上がりで、あとは食べるだけという単純な加工品でしかない。ところがハタハタの三五八漬けの面白いところは漬物の一種なので、時間が経つほどのアミノ酸発酵が進み、また麹が糖分を生み出しているのだろうか、味にまろやかさが出てくる。
なべ婦人のハタハタの三五八漬けも送ってもらい、すぐに炭火で焼いて味見してから一週間ほど、徐々に旨味が増してきており、今がいちばんうまい時期なのではないだろうか?
焼きたてを手でむしり、発酵食品の持つ香りを顔全面に受けながら、それこそハタハタの片身分を口に頬張る。その甘いような、塩辛いようななかに、ハタハタの身のほっくりした甘さがあり、ハタハタの三五八漬けの味わいはまことに優しい。ハタハタはどんどん焼いて、それこそむさぼるように食らう。
ボクはもっぱらオスを好み、家族はメスを好む。これはメスの味わいのほとんどはポリコリする卵巣にあって、未熟な卵粒の脂と成熟した食感は誰を持ってしても面白く、そしてうまいもの。ただし食べていてなんだか騒がしい。
対するにオスの身には、その白身、皮自体に味があり、この白子はゆったりと落ち着いて楽しむに足りる味の深みを感じる。すなわちメスよりもオスの方が酒を親しむに向いているのである。
ハタハタの白子をつつきながら、遠く秋田の街や蒲鉾型の市民市場を思う。来年は、それこそ20年振りに県内を巡る旅にでたいと思っている。(無理かな?)
秋田のなべ婦人、ありがとうございました。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ハタハタへ
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