つぶ学18 ナガバイ、ヒメナガバイの話

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 一般に「つぶ」とされている巻き貝は、複雑でごちゃごちゃしている。水産物の初心者がもっとも心悩ませる、得体の知れない貝だろうね。
 整理すると「つぶ」のほとんど総てはエゾバイ科の巻き貝であり、大きく分けると2属になる。【大型で刺身などになるのをエゾボラ属】、【日本海などで“白ばい”と呼ばれるエチュウバイ、北海道の“いそつぶ”であるエゾバイなどのエゾバイ属】。「つぶ」と呼ばれる巻き貝の多くは、この2属に含まれるのだ。

 そこに例外があって、これまた少なくはない。そのひとつがナガバイとヒメナガバイのナガバイ属。これが底引き網の漁期であるために福島県原釜などからの入荷が続いている。そして“真つぶ(エゾボラ)”がキロ当たり2000円前後もするときに、キロ当たり1000円前後で買えるのである。
 ナガバイ属2種を見分けるのは難しく、やっとページ上に検索の項目をもうけることができた。ただし問題なのは2種を分けても、結局のところ味は変わらないと言うことだ。産地である福島県原釜などでもまったく両種を区別しない。ともに「巻きばい」とされている。

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巻き貝の刺身で、特にエゾバイ科のとき、貝殻を悪なんて愚かなことは止めた方がいい。出すのは簡単である

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足の筋肉の根元にある唾液腺にはテトラミンはなく、そのまま食べてもいい。(注/テトラミンは皆無というワケじゃない)

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これが下ごしらえを終わったところ。ワタの部分はゆでて氷水で。身の部分は塩もしくは、なにも使わずに、とにかくとくもんで滑りをとる

 このところの“真つぶ”の高騰から、久しぶりにヒメナガバイを刺身にして酒の肴とした。
 これが予想外にうまい。ヒメナガバイとはこんなにうまかったんだろうか、と改めて感動する。
 高価な“真つぶ(エゾボラ)”と比べてどこが違うか? というと、やや柔らかいのだ。それでも甘味も旨味も存分にある。
“真つぶ(エゾボラ)”の値段が高いのはコリコリした独特の食感のせいだろう。でも硬くコリコリした食感が好きという人と、柔らかいのが好きという人に、貝の刺身の好みというのは分かれるだろう。とすると「程良いコリコリ感があるヒメナガバイ、ナガバイのファンだわ」と言う人も多いはずだ。

 これを「奥播磨」の本醸造で流し込んでも、「いい肴であるな」としみじみ感じるのだ。酒を飲み込んだあとに貝の甘味と、酒の甘さが渾然と混ざり合い、直ぐに消えていく。

 さて、福島県での底引き網の巻き貝は想像以上に安い。味わいからすると安すぎる。
 このうまい貝を、もっと高く売れるように努力すべきではないのだろうか? 水産に関わる人よ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヒメナガバイ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/beringius/himenagabai.html
ナガバイ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/beringius/nagabai.html


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このページは、管理人が2008年1月29日 11:51に書いたブログ記事です。

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