冬になると食べたいなと思う魚のひとつが「八角」だ。
さて、「八角」と漢字で書くわけは、これが「越前がに」と同様に“ある生き物のオスのみをさす言葉”であるためだ。その名をトクビレというのだが、こちらの方はむしろ知る人ぞすくない。
大まかに説明するとカサゴの仲間となり、そのなかのトクビレ科の魚だ。トクビレ科の魚で食用とされるものは少なく、ボクが見てきた限りでは本種とサブロウくらいのものだ。また全国的に流通するものはトクビレだけだろう。
トクビレは年間をとおして少ないながら入荷してくる。しかし、本来の旬は秋から春までかも知れない。晩秋、メスオス混ざったものが入荷してくる。小振りで、脂が少なく、メスは卵を抱えている。これがトクビレの走りの時期だ。そして年末には「八角」、すなわちトクビレのオスの入荷が始まり、春の終わりにはまとまって入荷することがある。しかしこの時期すでに旬は過ぎてしまっているように感じる。
産地はほとんどが北海道。発泡に互い違いに並んだ細長い黒い棒は、一見異様な光景だ。これがオスで大きければキロ当たり2000円、3000円する。頭も尾の方も食べるには煩わしく、魚としては歩留まりが悪い。それでこの値段と言うことは、実質的には1.5倍して考えないといけないだろう。
さて、今年の「八角始め」は師走で、それ以来八王子では大振りのものを見ていない。「八角」はできるだけ大きい方がうまいのだが、なかなか新年明けて見事な「八角」に出合えない。
その師走の「八角」は素晴らしいものであった。
刺身にして室温で溶け出すのではないかと言うほどに脂で白濁しており、その脂が甘く、まったりしている。その脂の甘味の後に来るのはしっかりしたうまみである。また半身は単に塩焼きにしてみたのだが、こちらの方も中骨を外したその下にあるのは液化した脂とコラーゲン、そしてねっとりと繊維を感じる白身である。
この大量に身に混在する脂は意外なことに上品で後味がいい。食べた後にまさに口福感を感じさせるもの。来週、築地に行く予定があるのだが、なんとか1本買ってこよう。
寒い時期になってくると、不思議なことにカツオのような酸味のある味わいよりも、この甘味に惹かれる。例えば、「きんき(キチジ)」、アカムツなどもそうだろう。
最近では寒い時期には自分の欲求に忠実に、このまったりした甘味を食べるように決めてしまっている。どうやらその方が体には優しいようでもある。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、トクビレへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/tokubire/tokubire.html
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年末年始、じゃこ天で癒される
はじめまして!いつも、ブログなど読ませて頂いております。書き込みは初めてですが、八角(トクビレ)の記事だったのでコメントを載せてみたくなりますた。北海道出身の父は、八角大好きでよく「この魚は、うまいぞ〜」と、聞かされていたので凄く印象のある魚です。大人になり何度も食していますが、本当に美味しい魚ですよね♪見た目悪いし、食べるところも少ないですけどね。私も、旬は晩秋〜初春までだと思います。昔は、何でも味噌汁にして食べたと父から聞いてます。これからも、魚の事もっともっと勉強し、食べたいと思います。ちなみに、市場見学にも参加して見たいと思っています。よろしくお願い致します。では・・・
私も八角は大好きです!
まずは、刺身、そして塩焼き、さらにあの硬いとげのある皮は、から揚げと楽しみました!
ただ今季は誰も店の人が買ってこないので
まだ食べてません!
せり場でたべてぇ〜と見ているだけです!
きんき、なら富士恭に良いものがあるとおもいます!網走の釣りきんきなどなど!
良かったらどうぞ! 交渉しますよ!
ラオウさん、こんど築地を御案内します。たぶん次回の築地土曜会は3月です。
また「なんでもみそ汁にして食べる」というのはボクも大賛成です。
今年は魚貝類の汁にこだわってみたい。
また史郎さん、今週末に築地に行きますけど、富士恭できんき(キチジ)を買うことにします。
きんきも、いいですね♪甘じょぱく煮付けにしたり、塩だけで潮汁にしたり!もちろん、焼き魚にしたり!皮目が、最高ですよね♪
きんきは、北海道では鯛の代わりとして使われたりもします。今は、真鯛も流通してますが、昔はそのように使われていたようですよ。ばあちゃんが、よく言ってました。
3月は、是非参加したいです。それと、ぼうずコンニャクさん・史郎さんわざわざコメントありがとうございました。